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異世界で闇落ちした俺は大好きだった彼女の宿敵(ラスボス)となりました。  作者: ドットオー
第4章 来たる魔王軍とはみだしモノたちのパーティー

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第43話「支配された街」

冒険者探しから戻った私たちは東坂君たちと合流してガーゴイルに支配されてしまったという街へやってきた。

市街地を見渡せる崖の上から眺めると市街地上空を旋回するガーゴイルたちの姿が確認できる。

そして地上にも闊歩しているガーゴイルの姿が⋯⋯

まさにガーゴイルに支配された街というわけだ。

しかし、街にはいまだ取り残された人たちがいるという。

だけど肝心の魔王討伐にやってきた貴族たちは早々に撤退してしまい、この街の現状が放置されてしまっている。


***

私はあかねとディルクさんを連れて、森の中に陣を敷くトルトン男爵のところを訪ねた。

「リグリット村領主 月野木天音。司祭です。男爵、お願いがあります。今すぐ引き返して一緒にガーゴイルに囚われている人たちを救出してください」

「ダメだダメだ。我らはここで兵を休めたら知事屋敷に向かうのだ」

「あの街に暮らす人たちを見捨てるおつもりですか?」

「我らが到着したときにはもうあの街は手遅れだった」

「ですが、目の前で困っている人たちを救うのが、領民の命を預かる貴族の使命ではないのですか?」

「ウェルス王国民全体の命を守ると考えれば街ひとつの犠牲などやむおえないのだ。あの惨状を見ただろ。

今の我らでは亜人に敵うまい。早急に知事屋敷に戻り、討伐軍を立て直す必要がある」

「でしたら、なぜ知事屋敷とは異なる方角へ進んでいらっしゃるのですか?」

「う…⋯」

やはりトルトン男爵は逃げようとしている。

戦略的撤退を窺がわせてはいるが戦うつもりなんてないはずだ。

彼だけじゃない。魔王討伐軍に加わっていた貴族たちは亜人たちに恐れをなして、続々と戦線を離れている。

今の貴族たちは領民の命よりも自分たちの身を守ることしか考えていない⋯⋯

「黙れ! 司祭ならば、亜人どもをおとなしくしてみせたらどうだ。フェンリファルトにアルマン⋯⋯そして亜人ときて

こっちは長く続く戦いでクタクタなんだ」

本音を知れただけでも成果かーー

魔王討伐軍の士気は完全に下がっている。


***

トルトン男爵はあてにならないと判断して引き返すことにした。

「何よ。あのおっさん。ビビっているだけじゃん」

「あの様子じゃ他の貴族もあてにならないな」

「次の手を考えましょ。あかね、ディルクさん」

はやく困っている人たちを救出しなきゃーー

「ほらまーた女子高生のする顔じゃなくなってるよ。天音」

「⁉︎ ごめん⋯⋯」


***

私たちは再び市街地が見渡せる崖に戻り、待っていた東坂君たちに報告した。

「結局、俺たちだけか」

「葉賀雲君、街の様子はどう?」

私たちがトルトン男爵のところを訪れている間、葉賀雲君には街内部に潜入してもらい偵察をお願いしていた。

「ガーゴイルたちが広場に人間の遺体を山積みにしているところを目撃した」

ゾッとした表情のあかねは身震いしながら尋ねる。

「え〜何をしているの?」

「わからない。儀式か何かなのか」

木に寄りかかってツンとしていたミレネラさんも推察した考えを述べる。

「きっと保存しといて食べるつもりなんじゃない」

ミレネラさんの推察にあかねは身をよじらせる。

「ええ〜いやだぁ〜」

「生き残った人たちは中心部の教会に集められているのを確認した。乗り込むならそこ」

葉賀雲君が指を指した先に教会とおぼしき建物が見える。

「わかった。とにかくそこへ行きましょう」

「ただ気になる情報を掴んだ⋯⋯」

葉賀雲君は、道端に倒れていた息絶える寸前の兵士から情報を聞き出していた。

『毒だ⋯⋯毒を吐く化け物がいる⋯⋯気をつけろ⋯⋯』

その兵士はそう言い残して息をひきとったそうだ。

「毒をばら撒く亜人がいるかもしれない。気をつけた方がいい」


***

椿君と眠り続けている紡木さんの護衛のために葉賀雲君とレルク君を残して、

ディルクさん、東坂君、あかね、ミレネラさん、ミザードさんの私たち6人で街に潜入した。

あかねが懸念を口にする。

「ねぇ、毒系のモンスターが出るって言ってただけど私たちに耐性ある?」

「難しいな。ヒーラーの椿を連れてくるわけにもいかなかったし⋯⋯」

「ならば毒に刺されないように警戒しながら戦うしかない」

「ディルクさんは強いからいいけど。私たちには難しいわよ。それに霧状だったらどうするの?」

「それもそうだな」

私はアイテムを詰めたバックから小瓶を取り出した。

「ルメリアさんから貰ったポーションがまだ残っているけどこれでなんとかならないかしら?」

「急場しのぎにはなるかもしれんな。そのポーションを布に湿らせて口と鼻を覆えば短時間の間だけでも毒を抑えられる」

「無いよりマシだな」

「それで行きましょう」

街に入ってからは、できるだけ建物と建物の間にできた狭い通路を通って目的の教会を目指した。

息を潜め、ときおり見上げては教会屋根のてっぺんにある十字架が近くなって来ていることを確認して次へ進むルートを選択する。

しかし、先へ進みたくても市中を警戒して周るガーゴイルたちがウロウロしていてなかなか進めない。

やはりというべきか、簡単には教会へは近づけさせてくれない。

すると東坂君は「考えがある」と、飛び出してゆき、1匹のガーゴイルに背後から忍び寄って電撃を与えて気絶させる。

物音に反応したガーゴイルたちは一斉に音がした方向に注意を向けた。


”今だ!“


と、私たちは走る。陽動が上手くいった。

ガーゴイルたちの目を掻い潜り、なんとか私たちは目的の教会に辿り着いた。

そして入口の柵を乗り越えて庭までの潜入に成功するとすぐさま藪の中に身を隠した。

まずは囚われた人たちがどこにいるかだ。

「ミザードさん、裏口の方を見てきていただけますか?」

「わかりました」

「ムリしないで」

「はい」

ミザードさんが藪の中をすり抜けて無事に教会の裏側に回れたことを確認すると、私たちは正面から突入する。

ディルクさんが教会の扉を蹴破り、一斉に入っていくと中には人ひとりおらず静まり返っている。

私たちは警戒心を強めて、5人で背中を預け合いながら祭壇に向かって伸びる通路を慎重に進む。

剣を握る手には汗が滲む。

「あ〜こんな風にしてバージンロード歩きたくなかったなぁ」

「私もだけど。天音なんて剣まで握りしめちゃって」

「言わないでよぉ」

「さっきから妙な言い方しないでくれよ」

「何? 東坂、私とバージンロード歩いているの意識しちゃってる?」

「違う! 歩きづらくなるだろ」

「フッこの男は私に意識してんだよ」

「はぁ⁉︎ なんでそこでツンデレ令嬢が出てくるのよ!」

「いいじゃない! 私だってもっと普通にバージンロード歩きたかったわ!」


”!“


突然、ディルクさんの空気が変わった。

「待て、来るぞ!」

ディルクさんがそういって見上げた途端、天井のステンドグラスが割れて、飛び散るガラスと一緒にガーゴイルたちが入ってくる。

「3匹⋯⋯」

ミレネラさんがレイピアを構えて私の前に立つ。

「ここは私がやるわ」

「ご令嬢、自分だけいい格好しないでよ」

「お前たちなぁ。張り合ってるときじゃないだろ。俺たち3人で相手するぞ」

「東坂が言うなら」

「私もかまわないわ」

「月野木とディルクさんは後ろで控えててくれ。おそらくこいつらだけじゃないはずだ」

「私も同感だ。少年」

「シンジでいいですよ」

「ああ任せたぞ。シンジ」

東坂君はやる気をみなぎらせて全身に稲妻を纏い、あかねは宙に氷塊を出現させる。

そして攻撃を繰り出そうとした瞬間、突然地面が大きく揺れる。

「な、何⁉︎」

徐々に床の大理石がせり上がっていき、盛り上がってきた床下から一気に飛び出してきたのは、私たちよりもひとまわり大きいゴーレム。

敵の数はこんなもんじゃないと予想はしていたけど、まさかここで別種族出てくるなんて思いもしていなかった。

よりにもよって岩でできた身体を持つ亜人。

さっきから東坂君とあかねの繰り出している攻撃がまるで効いていない。

ミレネラさんも空中を自在に飛び回るガーゴイルに苦戦している様子。


「よけるんだ!」


ディルクさんの叫び声が聞こえた瞬間、何かが私の頬をかすめた。

見やると弓矢が床に突き刺さっている。

「上だ!」

ディルクさんの声に反応して見上げるとゴーレムの遥か頭上で宙返りをする人間の姿が。

体型からして女性。

顔は布で目許から下を隠しているが、きれいな金色の髪に尖った特徴的な耳。

そして緑が印象的な衣装。

あれは紛れもなくエルフ。

ゲームに出てくるそのまんまの姿だ。

「気をつけろ」と、ディルクさんは私の目の前に立つ。

「私の後ろに隠れていなさい。まだ君の剣の腕では彼女と渡り合えない」

悔しいけど否定はできない⋯⋯

すると祭壇側の壁を突き破って人が飛んで来る。そしてそのまま会衆席へと叩きつけられた。

「ミザードさん⁉︎」

壊れたベンチの上で叩きつけられたミザードさんは頭から血を流してぐったりとしている。

”誰がこんなことを“と思うまでもなく。

壁を破壊しながらその主が現れた。

それは身長の高いディルクさんですら見上げるほどの大きさ。

鋼色の刺々しい鱗に覆われ、鋭い眼光を放つ。

”ズシン“と強い地鳴りをあげながらゆっくりと進み出てくる。

口を大きく開けびっしりと生え揃った鋭利な牙を見せつけながら咆哮をあげる。

そのいでたちはまさしくドラゴン。

翼を大きく広げた姿を見て“ファンタルスフレイム“で戦ったボスモンスターを思い出した。

「⋯⋯ワイバーン」

もしかしてこのワイバーンが毒を吐く化け物⁉︎

だけどディルクさんは怯むことなく、愛刀のトライトエールを握って構える。

「このディルク・ライザーの相手に申し分ない。このトライトエールでその首斬り落としてやる」

ワイバーンはその鋭い爪で襲いかかる。

ディルクさんはそれをトライトエールで受け止める。

ワイバーンと互角? いや、ディルクさんの方が押されている。

見渡せば東坂君にあかね、ミレネラさんも亜人を一体も倒せていない。

エルフの女性も弓を構えて次の矢を放とうとしている。

このままではマズイ⋯⋯

なんとか隙を作ってみんなを撤退させないと⋯⋯

そのときだった。一陣の風がすっと私の横を駆け抜けた。

と同時にワイバーンの肩から血が噴き出る。

何が起こったかわからないまま怯んだワイバーンは2、3歩後ろに退がる。

気がつけば祭壇の上には抜き身の日本刀を手にした如月那由他君が立っていた。

「那由他君⁉︎」

「ナユタ少年!」

ディルクさんが彼を知っていたのは驚きだが、それよりもなによりも那由他君が突然現れて、しかもウィギレスの制服まで着ていることに頭が追いつかない。

「知らなかったのかい?」

その声に振り返ると陽宝院君が立っていた。

「如月那由他君はウィギレス5番目の男だよ」


つづく

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