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異世界で闇落ちした俺は大好きだった彼女の宿敵(ラスボス)となりました。  作者: ドットオー
第4章 来たる魔王軍とはみだしモノたちのパーティー

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第36話「スカウト」

魔王軍討伐を目指す私たちは”即戦力“を求めている。

気だるそうにしていたあの受付のお姉さんからギルドにおける冒険者の制度を教わった。

冒険者の等級は上から白金(プラチナ)(ゴールド)(シルバー)(ブロンズ)(アイアン)となっているそうで

身分証となるプレートは等級に応じた素材でできているとのことだ。

あかね、ミザードさんの3人で隅っこのテーブル席を陣取り、行き交う冒険者たちが身につけているプレートに目を凝らす。

「! あの人、銀だ」

さっそくあかねが席を立って声をかけにいく。

私とミザードさんが声を掛けるよりもあかねの方が冒険者の食いつきがいい。

みんな漏れなくあかねの胸元に目線を落として鼻の下を伸ばしながら話を聞いてくれる。

ゲームだったら魔王討伐なんてイベント、聞いただけで冒険者たちが飛びついてくる。

きっとこの異世界の冒険者だって同じ。興味を示してくれるはずだ。


1人目⋯⋯

「魔王を倒す? そんなことにかまっている暇はないんだ。他所をあたってくれ」


2人目⋯⋯

「ハンク領内の反乱だろ。興味ないよ」


ーー首を縦に振ってくれる冒険者はなかなか現れない。


3人目⋯⋯

「魔王? お嬢ちゃん、おじさんじゃちょっと倒せないかな。ママに読んでもらった絵本の勇者に頼むといいさ」


しまいには⋯⋯


4人目

「それより俺とダンジョンいかない?」


”バシンッ!“


あかねがナンパする冒険者の頬を引っ叩き快音を鳴り響かせた。

”叩いた!“

と、私は心の中で叫んで頭を抱えた。

ミザードさんにいたっては「男の話に興味ねーよ」と吐き捨てられる始末。



***

5日目になってくるとテーブル席にうつ伏したまま、顔をあげる気力すらなくなっていた。

断られてもめげずに声をかけ続けてきたけどさすがに限界だ。

ゲームのセオリーをなぞれば簡単にこなせると考えていたけど浅はかだった。

きっとハルト君はあの頃からとっくにそのことに気づいていたんだ。

しかも冒険者たちの間では怪しい奴らが声をかけてくると噂が広がって警戒心が強まっている。

考えてみれば素性の知れない人からの勧誘なんて不気味なものだ。

いろいろと気づくのが遅かったと深いため息が漏れた。


「はー」


私のため息を聞いてあかねが顔をテーブルに押しつけたまま注意してくる。

「天音、女子高生が吐くため息じゃないよ」

「わかってるよ」

私もテーブルに顔を押しつけたまま返した。

このままだと進展がないまま時間だけが過ぎてしまう。

その間にも魔王軍の侵略がどんどん進んでしまう。

何か手はないか⋯⋯実は3日目あたりから頭に浮かんでいる手段がある。


「ここにおわすお方をどなたと心得る」と、あかねがしゃべって、私が「カッカッカ」と高笑い。

あのご老公様よろしく”司祭様“の力を振りかざすのだ。

そして冒険者たちが「はは〜」と平伏すーー

このやりとりが頭の中を何度もぐるぐるとリピート再生している。

さすがにこれはやっちゃいけないだろなぁと心に誓いつつ

天使と悪魔が頭の中で喧嘩をして私を悩ませてくれている。


”おいおい、せっかくエラくなったんだから、その力使っちまえよケッケケ“

”ダメよ。それじゃあハンク子爵と同じになってしまう“


喧嘩が止まらない。

「あ〜もうダメ!」と、魔が差しかけたとき、あの気だるそうな受付のお姉さんが声をかけてきた。

「あー、冒険者たちは同胞意識が強いから同じ冒険者だったら心を開いてくれるものよ」

窓口からずっと私たちの様子を見ていた受付のお姉さんは、断られ続ける私たちを見兼ねて冒険者登録を勧めてくれた。

このお姉さんが相当であろう重い腰をあげてしまうくらいなんだから、私たちはそうとう哀れに思われているんだと、心の中で滝のような涙が流れた。


***

受付のお姉さんはさっそく私たちのために登録の手続きを行ってくれた。

初期登録者つまり駆け出し冒険者には鉱石(オーレ)という等級が与えられる。

依頼をある程度こなせばすぐに(アイアン)に上がれるそうだ。

鉱石(オーレ)のプレートはちょっとした初心者マークといったところか。


***

テーブル席に戻ろうと掲示板の前を通りかかると冒険者の女性が佇んでいた。

「美人な人⋯⋯」

思わずその言葉がこぼれてしまった。

羨ましくなるほどの色白の肌に、ロングストレートの黒髪。

まつ毛の長いぱっちりとした目は凛とした眼差しで貼り付けられたたくさんの依頼書へ向けられている。

そんな彼女の横顔に女の私が頬を紅く染めて見惚れてしまった。

それでいて身につけている銀色の甲冑が頼もしさを感じさせる。腰にはレベルの高そうな剣まで装備されている。

そして首から下げた金のネームプレートがキラッと光る。

(ゴールド)だ!」

思わず声に出して叫んでしまった。

「?」

冒険者の女性がこっちを向いた。

私は恥ずかしさのあまり顔を真っ赤にした。

「あー⋯⋯」

動揺のあまり慌てふためきながら話しかけた。

「あ、あのお姉さんはソロなんですか?」

「ソロ?」

「あ、いや、ごめんなさい」

「私はルメリア。よろしくね」

「あ、はい。月野木天音といいます。さっそくですけど私たちのパーティーに入っていただけませんか?」

「え?」


***

唐突過ぎだった⋯⋯

私はルメリアさんを連れてテーブル席に戻り事情を説明した。

「そうだったのね。だとしたらこのギルドで仲間を募るのは難しいわ」

「どうしてですか⁉︎」

「冒険者たちは等級をあげることに血眼になっているの。ここのギルドはね白金(プラチナ)になると勇者待遇でエイドリッヒ公爵に仕官できるの。

断られるのはギルドを通さない依頼が等級に反映されないからよ。それでいて天音さんたちの依頼はけっこう難易度高いよね?」

「は、はい⋯⋯」

「それで等級に反映されないんじゃ割に合わなくてみんな断ってしまうわ。私もよ」

「お金の用意ならあります。大きな声じゃ言えませんが資金は皇国から⋯⋯」

「お金の問題じゃないの。冒険者が求めるのは人からの評価よ。だから私たちはどんな危険にも挑めるの」

「すみません⋯⋯冒険者さんのことを理解していませんでした。ついゲームだったらと⋯⋯」

「ゲーム?」

「あ、いえ!」

「いいのよ。こうなることがわかっていたからノーラさんも勧誘を許したのよ。どうやら粘り強いあなたに折れたみたいだけどね」

ルメリアさんはチラッと横目で気だるい受付のお姉さんがいる窓口を見やる。

「だけどここの冒険者たちは名声にこだわりすぎ。等級をあげることばかりに必死になっている。

どんだけ勇者って讃えられたいんだか。まぁ⋯⋯私が所属していたパーティーもそうだったけどね⋯⋯」

「お仲間がいらっしゃるんですか⁉︎」

「昔ね。追放されちゃったの私」

「え⁉︎」

私は驚きすぎて椅子を倒して立ち上がった。

「ルメリアさんがですか!」


***

パーティーが白金(プラチナ)に昇格することに必死になっていたのがリーダーのオルタ・ヴォルグだった。

あとからできたパーティーに次々に追い抜かれていってイライラしてたのね。

「雑魚モンスター相手にしくじりやがって!」

私の目の前で蹴たぐられた(アイアン)の男の子が床に倒れ込んだ。

追い討ちをかけるようにリーダーが罵声を浴びせる。

このころのパーティーの空気は最悪だった。

「うちに(アイアン)は必要ないんだ! お前みたいなやつを置いているからうちは白金(プラチナ)に上がれないんだ」

駆け出しでパーティーつくったばかりの頃は、夢中でクエストをこなして、どんなに危険でもみんなで笑って楽しくやってたんだけど。

次第に等級があがっていって、メンバーも増えて大所帯になったあたりから周りの期待とプレッシャーが大きくなって楽しくやっていく雰囲気じゃなくなったの。

ついには戦闘がおぼつかなくて等級が低い子を蔑んで暴力を振るう始末⋯⋯

嫌気が差した私は自分からやめると切り出したの。そしたら⋯⋯

「やめる? ふざけるな!」

「オルタ、ごめん。このパーティーは変わってしまった。あの頃のワクワクしていた私たちはどこへ行ってしまったの?」

「あーもういい! やめたければやめろルメリア」

両隣に立っていた仲間たちが慌てて憤慨するリーダーを取り押えたわ。

「おい、リーダー何考えているんだ」

「よせって。ルメリアにいなくなられたらヤバイって」

初期メンバーの離脱がよほど響いたのかリーダーの怒りは収まらなかった。

「お前はクビだ! 」

その発言に私はじめ周囲が驚いたわ。

「いいかルメリア。お前がこのパーティーをやめるんじゃない。お前がこにパーティーから追放されたんだ!」


***

「それで、腹いせに奉公構(ほうこうかまい)まで出されちゃって、どこのパーティーにも所属できなくなっちゃった。だから今はこうしてひとりで活動するしかないの」

「そんな⋯⋯」

「そうだ、天音さんまだ鉱石(オーレ)なんでしょ?」

「は、はい。今さっき登録したばかりなので」

「だったら私がレベル上げ手伝ってあげる」


***

剣を手にしてルメリアさんは太陽を背にして高く飛んだ。

空中で体をひねり一回転して、その勢いを利用して

襲いかかってきたキリングウサギを胴体から真っ二つに斬り裂いた。

その跳躍力もさることながらこの世界の人たちの身体能力は私のいた世界の人間よりも遥かに優れている。

ルメリアさんに誘われ、あかね、ミザードさんを含めた4人でキリングウサギの駆除のために牧場近くの草原にやってきた。

キリングウサギは群れで行動して家畜などを捕食する害獣だ。ときには人間までも襲う危険な獣で体長も私が知るウサギよりも5倍くらい大きい。

繁殖期は頻繁に依頼が来るそうで、初心者にはうってつけのクエストとのことだ。

「天音さん、もっと脇を締めて剣を構えて」

「こうですか?」

「そう! キリングウサギが飛びかかってきたところを振り下ろして!」

「えい!」と、ルメリアさんに指図されるがまま剣を振り下ろすとキリングウサギが目の前で血しぶきをあげる。

覚悟していたとはいえこれはショッキングだ。

「筋がいいじゃないか」

「やるじゃん天音!」

「まだまだいっぱいいるから気を抜くな!」

もう1匹で限界なんですけど⋯⋯


「!」


ふと気づくと先日ギルドで出くわした気力のない冒険者さんの姿あった。

背中に水平に挿した大きな剣が目をひく。

私たちと同じようにキリングウサギを駆除しているようだ

「太刀筋からしてもあの人の実力はかなりのものよ」

「お知り合いなんですか?ルメリアさん」

「いいえ。最近ちょくちょく見かけるんだけど不気味なのよね。すでに(ゴールド)でもおかしくないのにああやって簡単な依頼をこなしてばかりで(アイアン)に止まったまま」

気力のない冒険者さんは私たちに目もくれずそのまま行ってしまった。



***

馬にまたがる5人の男たちが天音たちの様子を離れたところから眺めている。

「おい! リーダー、アレってルメリアじゃないか?」

「一緒にいる奴らは何者だ? パーティーには所属できないはずだぞ」

「もしかして自分でパーティーを作ったんじゃ?」

「まさか」

男たちがリーダーと呼ぶその男は静かにわなわなと身体を震わせ、口端を歪ませながら血走った目でルメリアを見つめる。


つづく

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