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異世界で闇落ちした俺は大好きだった彼女の宿敵(ラスボス)となりました。  作者: ドットオー
第3章 ハズレ領主月野木天音と異世界の民

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第28話「攻める盾」

「あの村のことからは手を引け」

唐突に告げられた稲葉の言葉に「は?」と、クロム・ハンク子爵は目を丸くする。

「東坂君が手を回したのよ」

声がする方へ振り向くと紡木美桜が2人のいる応接間へと入って来る。

ハンク子爵は”誰だ?“という表情で紡木美桜の顔を見やる。

「ジェネラル鷲御門からよ。リグリット村にかけられた不当伐採の容疑は嫌疑不十分で訴追不要よ」

「だそうだ」

気のない相槌をうつ稲葉に「しかしそれでは!」と、ハンク子爵は食い下がる。

だが、それにも紡木美桜が答える。

「イモークは正当に伐採の手続きを行なっていた。しかし役人がその手続きを見落としていて今回の騒ぎになってしまった⋯⋯そういうことにしておきなさい」

「そんな⋯⋯」

下された裁きにハンク子爵は悔しさを堪えるように唇を噛み締めて握った拳を震わせる。


***

「東坂君が機転を効かせくれたのよ」

私は兵を連れて再びやってきた田宮さんに鷲御門君が下した裁定を告げる。

ハンク領とリグリット村の境界付近の丘で私たちウィギレス、そして村の男の人たち総出で田宮さんたちと対峙した。

「フっ」と、口もとを緩めた田宮さんは私に背を向ける。

「戦えない月野木さんがどうやって戦うつもりかと思ってたけど、戦わずに勝つなんて」

「これが私にできる戦い方よ。田宮さん」

「私はもっと強くなるわ。私に守れないものは無くす」

その言葉に私はハッとする。

田宮さんは、ネルムの森でウェルス王国側の反撃にあったときに、能力を発動できずにクラスみんなをケガさせてしまったことを今も悔やんでいるんだと。

変わり果てた彼女の姿はその表れなのだろうか⋯⋯

「退いてくれるのね」

「紡木さんから”ライン“が入ったの。リザードマンが暴れてるからなんとかしてって」

そう言って田宮さんはスマホの画面を見せて答える。


***

「稲葉君、リザードマンとかいうのがネルムの城を攻撃しているそうよ」

画面に目を落とす紡木美桜がスマホに指を走らせながら話す。

「リザードマンが⁉︎」

驚くハンク子爵。

”あの村さえ手に入れていれば、亜人供を従わせることができたのに⋯⋯“

2人に気取られたくない思惑がハンク子爵の頭を過ぎる。

「もう田宮さんを行かせたわ。なんとかなるでしょ」

「とにかく今はアルマン征伐が先だ。もっと力を貸してくれれば褒美にアルマンの領地を分けてやる」

「は⋯⋯はあ⋯⋯」

「うれしくないのか?」

「い、いえ。ありがたき幸せ」

ハンク子爵は、憤りを堪える顔を隠すようにして、頭を下げて稲葉にかしずく。


***

去ってゆく田宮さんたちの後ろ姿を見送りながら村の人たちと両手をあげて喜んだ。

ひとまず村に迫った脅威は無くなった。

さぁ、これから領主として私が村の人たちのためにできることはないだろうか⋯⋯

治水⋯⋯防衛⋯⋯道路拡張⋯⋯やれることはいっぱいありそうだけどどれもしっくり来ない。

今、私たちにできて求められていること⋯⋯帰りの道中、そんなことを頭の中でグルグルさせながら考えていると

「さっきからどうしたんだ。領主様?」と、レルク君が声を掛けて来る。

ふと彼の顔を見やるとずいぶんと柔らかい表情をしていることに気づかされる。

出会った頃は眉間にシワを寄せて強張った表情をしていたのに。

ミザードさんや他の村の人たちも、緊張から解き放たれて憑き物が取れたかのように

みんな笑顔が溢れている。

ここにやってきて村の人たち笑顔を見るのははじめてな気がする。

そうだ。レルク君の言う通り難しいことは置いておこう。

まずは⋯⋯

「ホームパーティーをやろう!」

私の突然の宣言にみんなキョトンとする。

だけどあかねがすぐに「いいね、天音」と、賛同してくれた。

「なんだそれ?」

「みんなで楽しく盛り上がるの」

「ねぇ、天音。村の女の子たち集めて今夜パジャマパーティーもやろう」

「いいね。やろう」

「村の男子たちで誰がモテるか聞いちゃう?」

「レルク君のこと気になっている娘いるのかな?」

「ムフフッ⋯⋯」と、笑いながら私とあかねがレルク君をかまうと

「なんだよそれ!」と、顔を赤くする。

「気になる娘いるの?」

「いないよ!」


***

「脆い盾⋯⋯」

田宮理香は、リザードマンたちが城の城壁をよじ登って来る光景を胸壁の間から見下ろす。

ネルムの城はハンク軍とフェンリファルト皇国軍が攻め落とし占拠した城。

フェンリファルト皇国軍の兵士たちは弓矢や投石で決死に攻防を続けている。

「あのトカゲの化け物たちがリザードマンね?」

「はい! 亜人どもはしぶといです。あと1日持つかどうか」

「そのようね」

そう言って田宮理香は地上から胸壁まで20メートルはある高さから飛び降りる。

そして攻勢を強めるリザードマンたちの目の前に着地する。

蜘蛛の巣状に伸びた地割れが着地の衝撃を伝える。

「女!」

突然、上空から降ってきた正体に驚くリザードマンたち。

「私の盾にもう守れないものは無いの」

「こいつは只の人間じゃないぞ。同時に攻撃しろ」

リザードマンたちは二手に分かれて左右から一斉に田宮理香に襲いかかかっていく。

「そんなに激しくぶつかったらと死ぬわよ」

突進してきたリザードマンは、田宮理香の周囲に展開されている透明のシールドに激しく衝突する。

その衝撃でぶつかったリザードマンの首の骨を砕かれて絶命する。

「愚かね」

「何をした⁉︎ 女」

「防御よ。 そんな体当たりで私のシールドを壊せると思ったの? 単細胞なのね」

「おのれ!誇り高きリザードマンの愚弄は許さん!」

指揮するリザードマンを中心に腰にぶら下げていた革袋の蓋を開けて入っていた液体を飲み込む。

漂うアルコール臭が酒だと分からせる。

「灰になれ女!」

リザードマンは口から一斉に炎を吐く。

そして田宮理香は一瞬にして炎に包み込まれた。

「フフフ⋯⋯」

田宮理香は炎の中から声に出して嘲笑う。

「リザードマンの殺し方が決まったわ」

「反動」と、田宮理香が口にした瞬間、巨大な炎の渦がリザードマンたちに襲いかかる。

リザードマンの悲鳴が聞こえたのはほんの一瞬。

彼女の目の前に残ったのは黒い塊だけ⋯⋯

「焼きトカゲの完成」

その光景を見つめて薄ら笑いを浮かべていると、突然飛んできた

飛翔体が田宮理香の顔面を直撃して爆発する。

しかし、シールドを展開する田宮理香の顔には傷ひとつつかない。

「田宮相手じゃロケランは通じないか」

煙が晴れるとそこにロケットランチャーを肩に担いで不敵な笑みを見せるクライム・ディオールが立っている。


つづく



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