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異世界で闇落ちした俺は大好きだった彼女の宿敵(ラスボス)となりました。  作者: ドットオー
第2章 詠凛学園2年B組とはじまりの国

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第20話「右条晴人と異世界の冒険」

馴染みの武器屋に仕立ててもらった装備は、さながらゲームに出てくる冒険者のような仕上がりで

姿見に写る自分の姿に興奮がおさえられない。

この異世界で学校の制服じゃ悪目立ちしてたからこれで嫌な視線ともおさらばだ。

「おう、似合うじゃねぇか」

さっそく武器屋の親父が見に来た。

「あの奇妙な格好からは見違えるようだな」

やはりそんな目で見られていたのか⋯⋯

「気に入ったぜ。サンキュー」

「ハハハッ。それはよかった。ところであんちゃん、ついでに剣も買っていかないか?

いいのが手に入ったんだよ」

上機嫌な親父は、そう言って俺を無理矢理、店の隅の方へと案内した。

「どうだ? あんちゃん」と、勧められた剣は、まるでゲームの主人公や勇者が持っていそうな

エクスカリバーとか名付けたくなるようなカッコイイデザインをしている。

「おおおッ!」

俺はすごく興味を惹かれた。

しかし、値札に書かれている金額もご立派だ。

ゲームだったら高レベルアイテムなんだろうけど、ここは異世界であってリアルな世界でもある。

武器や防具といったものにレベルは存在しない。

装備したからといって攻撃力やチート能力が強化されるわけでも特別な技が使えるようになるわけじゃない。

しいていえば斬れ味がいい。刃こぼれしにくい。折れにくいと言ったところだ。

結局はファッションやブランド品感覚に近いんだろう。

「どうだあんちゃん、欲しくなったか?」

俺は自分の剣を見つめながら悩んだ。

たしかに俺の剣は刃こぼれがだいぶ酷くなってきている。異世界に来たばかりのときはしゃいで酷使しまくったもんなぁ。

そもそもこいつを手に入れたときにはすでに使い古されていたからな。

俺はふと、こいつを手に入れたときのことを思い返した。


***

それは異世界にやってきた直後のことだ。

バスの中で東堂とはしゃいでいる月野木をなんとなく眺めていたら

突然、眩しい光がバスを飲み込んだ。

目を開けると俺は森の中に仰向けに倒れていた。

そのとき空を飛ぶ翼竜が視界に入った。その瞬間、俺はここが異世界だと察した。

「みんなはどこへ行った?」

飛び起きて周囲を見渡す。

しかしクラスの奴らの姿は見えない。

もしかして俺1人だけが異世界に飛ばされたのか?

なぜか月野木の顔が頭をよぎる。

“もう会えないのか?“と焦りを感じたとき、「おい! そっちに何かあったか?」「いや、これといった異変はない」と、木々の奥の方から人の声が聞こえてくる。

「みんなそこにいるのか?」

声がした方に駆けて行くと黒い甲冑を来た男たちが集まっていた。

男たちの手には剣や斧が握られている。

“まずい”と思った俺は、木の陰に身を潜めようとした。

だが、つま先にあたった小石が“カラッ”“カラッ”と音を立てて男たちの方へ転がって行く。

転がってきた石ころに気づいた男が「何者だ!」と叫んだ。

“殺される”

そう直感した俺はその場から逃げ出した。

「何かいたぞ!」

男たちが俺を追いかけてくる。

俺は無我夢中で木々の間を走り抜ける。

”俺ってこんなにはやく走れたか?”

体に起きた異変に思わず立ち止まった。

運動は苦手だと自負していたはずなんだが⋯⋯

気づけば男たちに取り囲まれていた。

「マジかよ⋯⋯」

男たちは“へへへッ”と悪役丸出しで俺にジリジリと近寄ってくる。

男のひとりがさっそく剣で斬り掛かってきた。

“ヤバイ”

俺は咄嗟に身構えた。

ーーアレ?

鎧のせいか男の動きが遅い。

俺でも簡単にかわせてしまう。

手で軽く押すと、男はものすごい音を立てて地面に倒れた。

「うあああ」

男は骨が折れたと訴えながら呻き声を上げる。

“俺ってこんなに力あったか?“

戸惑っていると背後の男が剣を振り下ろしてきた。

今度こそ死んだと直感した。

ーーん?

スローモーション? と感じてしまうほど男はゆっくりと剣をおろしてくる。

⋯⋯ふざけてるのか?

だったら⋯⋯


“真剣白刃取りをやってみた”


ーーできてしまった。

男はめっちゃ驚いている。

バカにしているのか?

白刃取りした剣をちょっと横に寝かしたら男は簡単に倒れてしまった。

俺を取り囲んでいる男たちが後退りをはじめている。

ならばと白刃取りした剣を手に男たちに立ち向かった。

こうして俺は、特殊な力に目覚めたことを知った。

そして右手の甲にできた紋章にもーー


***

こうして手に入れたのが今の俺の剣だ。

奪ったというのが正確か。

「どうだい、あんちゃん?」

親父が覗き込んでくる。

“うーん”と唸り声をあげながら悩んだ末に

「よし! 今回は奮発しよう」

と結局、思いきってしまった。


***

ここはダルウェイル国ハクドアル領の街。

ゲームさながら北欧のような雰囲気の街並みが目を楽しませてくれる。

俺は武器屋を出て、そのまま冒険者ギルドにやってきた。

ここもゲームさながらというかまんまの場所。

冒険者がたくさんやってきては、受付でクエスト登録や成果に応じた報酬を受け取っている。

酒場も併設されていて、いろんな冒険者から情報を仕入れる機会があるので来るだけで楽しい。

今日もさっそく冒険者たちが依頼書(クエスト)が貼り出された掲示板に群がっている。

「またエルムの森にいるモンスターの討伐があるな」

「なんでも依頼主はウェルス王国って噂だぜ」

「そうまでしてエルムの森を攻略したいのか」

「そりゃあそうだろ」

「だけど、こんなクエスト受ける奴は相当な命知らずか、金に困っている奴しかいないだろう」

「あと伝説の勇者様とかな」

そんな冒険者たちの会話を横目に受付に進んでクラスの奴らが倒したモンスターの換金を試みる。

「先日クリアしたクエストの査定終わってますか?」

俺は美人のお姉さんがいる窓口を選んで尋ねた。

「はい。ワイバーン5匹の討伐を確認しました。報酬額はこちらになりますがよろしいでしょうか?」

差し出された紙に記入された金額に目を通す。提示された額は日本円で100万くらいの数字。

「納得していただけましたらサインをお願いします」

さっそくサインをして陽宝院の指示であるトゥワリス国への送金をお姉さんに依頼して手続きは完了した。


***

「ハルト!」

待ち合わせていたルーリオがテーブル席の方から手を振っている。

「ずいぶんと似合っているじゃないか。前のは奇抜だったからね」

お前もそう思っていたか。

こいつはルーリオ。この冒険者ギルドで出会って、歳も同じってこともあって俺たちはすぐ意気投合した。

この異世界に来てはじめて親しくなった異世界人である。

最近はルーリオとクエストをこなすことが多くなってきている。

最近じゃ互いに相棒だと思っている。

「なあハルト。ここへくる途中、役人たちが村の入口を封鎖しているのを見かけた」

「何があったんだ?」

「おそらく村で人喰いモンスターが暴れたんだと思う。あの様子だと村の人たちはもう⋯⋯」

「モンスターが人の住むところまで来て、襲うなんてことよくあることなのか?」

「うーん。おそらくだけどエルムの森から追われるようなことがあって里の方に降りてきたんだと思う」

うっ! なんとなく責任の一端を感じて俺とルーリオは人喰いモンスターの討伐に行くことにした。


***

役人の目を盗んで村への侵入に成功した。

見渡すと確かに巨大なものが暴れた痕跡がある。

田畑のところどころがえぐれていて、潰れた家屋もある。

あちらこちらにおびただしいほどの血痕がまだ残っている。

「まだ近くにいるのか⋯⋯」

俺たちは周囲を確認しながら慎重に前へ進む。

山の縁が死角となっていて先が見えないカーブを超えると

体長は10メートルを優に越えている黒く巨大なモンスターの姿がそこにあった。

意表を突かれた俺たちはドキッとして立ち止まった。

大きな牙と角が特徴で皮膚は岩のようにゴツゴツして闘牛にも似たフォルムをしている。

村人の家畜だったであろう馬の死体に貪り付いている。

モンスターがこちらの気配を察してか俺たちの方を向いた。

「ぐおおおおお!」

モンスターは雄叫びをあげて俺たちに敵意をむき出しにしてくる。

躊躇なんてしていられない。

「ルーリオ行くぞ!」

俺たちは抜刀してモンスターへ向かっていく。

「ベヒモスの死角に周るんだ!」

「ベヒモス? ハルトこのモンスターを知っているのか?」

「いいや、見た目からそれっぽい名前をつけただけだ」

「相変わらずハルトはおもしろいな。いつも通り行くよ!」

俺はチート能力を使ってベヒモスの周囲に複数の魔法陣を展開する。

魔法陣が発する稲妻がベヒモスの動きを封じる。

続いてルーリオがベヒモスの尻尾を伝って背中まで駆け上り高くジャンプする。

ルーリオは剣にエネルギーを注入して斬撃を繰り出す。

三日月状の斬撃が背中に直撃して体勢を崩したベヒモスはその場に腹ばいになって倒れこむ。

ルーリオは俺のように紋章はないが龍神族という種族の血をひいているらしくて魔力が使えるとのこと。

俺も剣に紋章からのエネルギーを込める。

新しい剣は刀身が長くなった分、いつも以上にエネルギーが込められる。

「いくぜ」

身動きの取れなくなったベヒモスめがけて、発光する剣を勢いよく振り下ろす。

ーーピタッとおとなしくなるベヒモス。

すると巨大な頭部が轟音と土煙をあげてゆっくりと地面にすべり落ちる。

いい買い物をした。

岩石のように硬い皮膚を斬ったのに刃こぼれしてないし、たった一太刀でスパッと斬れた。


***

「「カンパーイ」」

ひと仕事終えて冒険者ギルドに戻った俺たちは

木製のジョッキをぶつけ合って互いの労をねぎらった。

「お疲れ、ハルト」

「ルーリオもお疲れ」

「そうだ、ハルト。今度僕の師匠と仲間のパーティーが戻ってくるんだ。僕は師匠たちに合流するつもりだ。ハルトも一緒に来ないか?」

パーティーと聞いて、月野木、東堂、東坂の顔が頭を過ぎった。

「そうかパーティーか!」

パーティーがいればもっと活動の幅が広がる。

「俺もパーティーを作るよ!」

「え? ハルトがパーティーを?」

「もちろんそのときはルーリオも一緒だからな」

とまどうルーリオをよそに俺は久しぶりにエルムの森に戻ることを決めた。


つづく






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