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異世界で闇落ちした俺は大好きだった彼女の宿敵(ラスボス)となりました。  作者: ドットオー
第2章 詠凛学園2年B組とはじまりの国
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第14話「狩りに出かける」

ニュアル、ギール、陽宝院、鷲御門、佐倉芽衣の5人が謁見の間を後にすると

国王の傍に立っている側近の公爵が口を開く。

「別の世界から来た⋯⋯にわかには信じられませんな」

「まぁよい。あの森には、魔物が多く生息している。長くは生きていけぬ。放って置け」


***

エルムの森というらしいこの森はモンスターがたくさん出てくる。

紋章の力は経験値を積めばステータス値も上昇することがわかってきた。

“レベルアップ”にちょうどいいとみんなモンスター狩りにいそしんでいた。

蜘蛛に似た30cm台のモンスターがよく出てくる。

最初は、気味悪がってなかなか倒せなかった女子たちだけど今ではすっかり慣れっこだ。

みんなで協力しあって住む小屋も完成した。

能力を活用して木を切り倒し、手で運んで、次に生産職系能力の子たちが角材に加工する。

そうやって男子棟、女子棟、中央にミーティング棟が連なる3棟を建設できた。

これで野宿もしなくてもいいし急な雨に困ることもない。


***

この世界にやってきてハルト君は生き生きとしている。

今日も東坂君やアカネたちを誘って体長が3、4mはある翼竜を狩りに出かけている。

「東坂! そっちへ行った。動きを止めてくれ」

「OK」

東坂君が手のひらに発生させた雷を翼竜の顔にぶつけると今度はアカネが

怯んだ翼竜の頭上にたくさんの氷柱(つらら)を出現させて背中目掛けて落とす。

直撃した翼竜は地面に激しく叩きつけられる。

ハルト君の的確な指示で連携技が見事に決まった。

しかし翼竜も反撃に出る。

口を大きく開けてハルト君たち目掛けて炎を吐き出す。

「田宮!」

防御能力に長けた田宮理香(たみや りか)さんがシールドを展開して炎からみんなを守る。

そして高くジャンプした紫芝(ししば)さやかさんがシールドを飛び越えると両手に握った鞭を振るって翼竜の首を一気に切断する。

「よっしゃー!」と、両手を挙げて喜ぶハルト君。

「これで、今日のみんなの食料も確保できたな」と、東坂君は翼竜の頭部を触りながら達成感に浸る。

「紫芝よくやったな。すげぇぜ」

「さやか、すごいじゃん」

「すごいですよ。紫芝さん」

東坂君、アカネ、田宮さんがさやかちゃんを囲む。

褒められることに慣れていないさやかちゃんは顔を赤くして照れ臭そうにドギマギしている。

ヒーラー担当の椿翔馬(つばき しょうま)君がヒーリング能力でさやかの肩にできた火傷やみんなの体力を回復させてくれる。

「うそ⁉︎ 本当に火傷が治った」

「疲れが一気に取れるぜ。ありがとう椿」

「人をエナジードリンクみたいに扱うなよ。東坂」

この異世界にやってきたばかりの頃はみんなどうしたらいいのかわからなくて落ち込んでいたけど、今はこうして楽しく笑っている。

ハルト君がモンスター狩りに誘う理由は、ハルト君曰くみんながこの世界に生き残るためにゲームで培ったノウハウを叩き込んでいるんだとか。

学校をサボるほどやり込んでいたMMORPGの世界では上位ランカーだったハルト君。

リアルのハルト君は教室では周りとほとんどコミュニケーションを取らずに退屈そうにしながら机に俯していてクラスで浮いていたけど、

こうして積極的に人を誘ってワイワイとしている姿に正直驚いた。


***

日が沈んできて空が赤く染まってきた。

結局今日も私は見ているだけだった⋯⋯

みんな夕食の支度でバタバタしている。

4日目ともなるとみんなの心に余裕ができてきたのかキャンプみたいで楽しいねと口にするようになっていた。

私も見ているだけなのはもどかしい。

「運ぶの手伝おうか?」と、食器を運ぶ紡木さんたちに声をかける。

だけど決まって「月野木さんは大丈夫だよ。私たちがやるから」と返ってくる。

「ありがとう⋯⋯」

また気を使われてしまった。


***

「今日も変化は現れないか⋯⋯」

鷲御門はクラス全員のステータス値がまとめられたノートに目を通している。

「月野木天音君だけが普通の人間のままだということなのか⋯⋯」

鷲御門と陽宝院は誰もいないミーティング棟で今後の方針を練っている。

「だけど紋章はある。HPと回復力に数値が入っているんだ。俺たちと同じく異能の力が備わっていることは確かだ」

「だとしても、月野木君を皆と同じように扱っていたら彼女がこの世界で真っ先に犠牲になってしまう。

僕は全員が生きて元の世界に帰れるようにしたい。そのためにも僕たちの命が保証される安全圏に保護してもらうことが必要だ」

「この世界に俺たちを守ってくれるような場所が果たして存在するのか」

「あるはずだ」


***

5日目の朝がやってきた。

エルムの森の監視のためウェルス王国側の入り口付近には、ウェルス王国の部隊が野営をしている。

「報告申し上げます。エルムの森に生息するモンスターの数が減って来ております」

大隊長のジャン・リコルスの元に兵士が報告を入れる。

「なんと⁉︎ 我らを阻むモンスターがいなければ、ダルウェイル国への侵攻は容易いぞ。にしてもなぜだ?」

「おそらく、先日から森の中をウロチョロしている若者たちの仕業ではないかと」

「では手はじめにその者たちを脅かしてみるかの。出撃の準備じゃ」

「ですが大隊長、レオン様の下知を待たなくてよろしいのでしょうか?」と、別の兵士が確認する。

「よい。なぜ私がハインストン家の若造の指示に従わなければならぬ。 狩りに出ていたと申しておけばいい」

「はッ!」

「若者たちの中には女子(おなご)も複数おりました」

「では、今夜は宴じゃのう」

ジャンは口元を緩ませ不敵な笑みを見せる。


つづく



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