プロローグ
真っ暗な世界からすっとまぶたを開けると眼前に広がるのは敵の大群。
武器を手に敵意丸出しで俺に迫って来る。
戦場のど真ん中に立つ俺が手のひらを翳せば半径100メートルにいる奴らは一瞬で消し飛ぶ。
この世界に来て何年経ったのだろうか⋯⋯。
修学旅行だったあの日、乗っていたバスは突如現れた魔法陣に飲み込まれた。
俺がこの手で葬ってきたクラスメイトたちと一緒に飛ばされてきたこの異世界で俺は魔王となった。
身に纏うは漆黒のレリーフをあしらった黄金の鎧。背中の真紅のマントが翻る。
俺は伝えなければならない。あの日伝えるはずだったあの言葉をだから戦ってきた。
俺は遠く高台にそびえる純白の城を見つめる。
月野木天音、俺のこの想いをーー
純白の城=ディフェクタリーキャッスルでは、神官たちが螺旋階段を降りて来る純白のドレス姿の女性を前に“神よ⋯⋯”とかしずく。
私がこの世界にやってきて何年経ったのであろうか⋯⋯。
父と母にさえ会うことが叶わなくなったこの異世界で私は神となった。
額に紋様が現れるや腰までのびた髪は黄金色に染まり、私の瞳は翡翠に輝いた。
私に立ちはだかるは魔王 クライム・ディオール。
それはともにこの異世界へやってきたクラスメイト右条晴人。親友、この世界で出会ったかけがえのない人々を手にかけた悪魔。
友たちと一緒に過ごした穏やかな日々を思い返すたびに涙が頬を伝う。
「ーー伝えたいことがあるんだ
伝えたいことがあるんだーー」
「俺はお前のことが」
「私はお前を」
「ーー好きだ
殺すーー」
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