第7話
「行ってらっしゃいね、ミリレア。」
「行って来ますわ、お母様。」
わたくしは健気スマイルでお母様と会話。
すでにわたくしの息がかかった従者が自然な感じで
「美しい。」
と、声をこぼす。
「ミリレアなら大丈夫ですわ。こんなに可愛いんですもの。
親馬鹿かもしれませんけど。」
「お母様、今のお言葉で自信100倍ですわ‼」
「そ~う、。」
そんな会話を交わし、馬車に乗り込む。
お母様に健気スマイルで手を振って。。。。。
公爵家が見えなくなって・・・・・。
シャッ・。
カーテンをさっと閉めます。
そして馬車を引いている従者に声をかける。
「さっきの言葉、凄くよかったですわ。自然で。」
「ありがとうございます。結構あの言葉は自然に言えたなとおもいまして。」
「指示されている言葉を、さも自然な感じで言う才能が光り輝いていますわ。」
「嬉しい限りです。」
従者が周りをチョコッと見て言う。
「そろそろイイですか?敬語、崩しても。」
「ええ。」
・・・
途端に従者が大笑いし出す。
「あははははははっっっっっっ‼
ホントにおもしろいっすね、ミリレア様って。」
「そう?それは、褒め言葉なのかしら、?」
「勿論っすよ、オレ、天涯孤独の身なんで、いろーんな方に尽くしてきたんですけど、
こーんなに仕事中に笑いをこらえた方、初めてっすよぉ。
あの、なんでしたっけ。
奥様の、親馬鹿かも、とかいう発言。
ミリエア様、絶対、『親馬鹿ではありませんよ、お母様。わたくし、本当に可愛いので』
とか、思ってたっしょ。」
「正解。
むしろ、わたくしを可愛いって思わない人がいるのかしらって、思うわ・。
まあ、欲を言えば、。
可愛い、にプラスして。
『妖精のようね。』
と、言ってほしかったですわ。」
「あはははっっっっっっっっっっっ。」
「そうだ、忘れないうちに。これ。
公爵家の地図、ね。
迷子になったら、この地図を見て、帰って来ること。
わたくし、思ったの。
次、来たときよく分かるように、目印をきっちり地図に書き込んでくれてあると、貴方も、わたくしも、助かるわって。」
「了解しました。
つきましたよ、公爵家に。
オレは、これから迷子になるんで、早く降りて下さい。」
「そう、地図を、しっかり、持っていくのよ。」
「勿論です。」
「「じゃあ。」」
*
『迷子になったふりをして、公爵家の地図にどんな感じか、どんな使用人が外にいるのか書き込め。』
実に優秀な従者(天涯孤独のため、影として働いた経験あり)は
ミリレアの考えをしっかり理解していた。
「さあ、迷子になるか。」
優秀な従者は、迷子になるのだった。