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成功確率20%未満

前回のあらすじ

ヨグ=ソトースを起こして時間が戻るのを解除してもらうぞ。おー!

 ヨグ=ソトースの所に向かう前に、ヨグ=ソトースと面識があるというクトゥルフさんと一緒について行くことになった。ここで忘れないうちにティンダロスを呼べば、未だに怯えたままであるティンダロスとそれに驚愕するニャルラトホテプさんとクトゥルフさんは、ティンダロスを見ながら

「ティンダロス!? 貴方もここにいたの!?」

「おぉ…………。ティンダロス。数十年ぶりだな。我々がどれだけ探したかと」

 ニャルラトホテプさんは、ティンダロスに近寄りながら眉間に皺を寄せてからそう言って、逆にクトゥルフさんは冷静沈着で落ち着いた声音でそう話しかけた。

 そのことに俺は、目を白黒させる。

「え!? あの…………? 知り合いなのか?」

 俺の言葉に反応したティンダロスは

「申し訳ない。その、なんというか…………先輩、後輩にあたるんだ。僕はその後輩でね。先輩たちに可愛がられていたんだ。その、ここに来たのは君達2人を尊敬してやまない信者どもからの罵詈雑言から逃げるためだよ。僕は雑音が入るのが苦手てでね。そこで、ラー湖からここに来たのだよ。ラー湖の反対側に洞窟があってそこに潜り込んだのさ。そこでしばらく眠っていたところに君と出会ったのさ。名前なんて適当につけてもよかったのだが、本名を当てられるとは…………」

「本名だったのか…………。いや、それより本名名乗る気なかったのかよ…………」

 俺は呆れながらティンダロスにそう言えば

「僕個人の見解で君に本名を名乗るのは後でいいだろうという判断をしたんだ。その、後っていうのが空洞を出てからにしようと思っていたんだ」

 過去形なのは、俺が名付けるさいに本名を言い当てたから意味が無くなったということか……。それに納得しつつ、さっきは無視していた単語について尋ねてみることにした。

「それで、その、先輩後輩ってのは?」

 俺がそう尋ねれば、ニャルラトホテプさんは

「私たちでは、魔族や天族でもある地位が存在するの。ある程度の実力者で地位が決まるのが魔族。貢献度が高ければ高いほどの地位で決まるのが天族。それに対して私たちは年齢で決まるのよ。より長生きしているのが先輩という感じにね」

 とぐるぐる周りながら嬉しいそうな顔で解説してくれた。


 ティンダロスの背中に跨ってから俺たちは、クトゥルフさんによって塞がれた道の奥の方へ向かった。

「あの、ニャルラトホテプさん。寒くはないのか? ここの地下空洞は寒いしからさ」

 俺は軽快なステップで歩くニャルラトホテプさんに尋ねると

「あら、心配してくれるのね? でも、大丈夫よ。見た目は寒く感じるみたいだけれど、そんなに寒くないのよ。ああ、でも。キオリは上着を着ないと寒いままよ。心配してくれてありがとう。キオリ。あなたはとっても優しいのね」

 ニャルラトホテプさんは、嬉しそうに頬を少し赤く染めてからそう言った。

 当たり前のことなのだが、クトゥルフさんといいティンダロスといい、当たり前なのが今まで無かったのだろう。罵られて当たり前だと言わんばかりだ。

 それに“救世主”という言葉。ニャルラトホテプさんがクトゥルフさん達を含んだ生物たちがそう言う謎の単語。その“救世主”がどういう意味なのかは、俺にはさっぱり分からない。だが、魔族と天族とクトゥルフさん達を含んだ生物が和睦とまでにはいかないが、お互いが良好の関係が築けなければいけないっていうのは、ただのお節介だろうか。

 俺がそんな思考をしているうちにヨグ=ソトースがいる場所へ辿り着いたようだ。そして、俺がそこで目にした光景は、ティアマトさんとアキベエルさんが白目を向いたまま何処かの方を見てぶつぶつと呟いていおり、その中心には黄色いローブを纏った男性がうずくまる様に(いびき)をかきながら寝ているということだった。

 俺は直ぐにでもティアマトさん達のところへ近づこうとしていたのだが

「駄目よ。仲間を助けたい気持ちは分かるけど、ヨグ=ソトースの睡眠を邪魔した者は、容赦なく襲ってくるわ。あの2人もそれにあったから正気を失っているのよ。あのまま放っておけば命が危ないわ」

「じゃあ、どうすればいいんだよ!?」

 ニャルラトホテプさんに右手首を掴まれしまい、俺は焦る気持ちでそう言えば

「ここから、帰還魔術は掛けられるかしら? それならヨグ=ソトースの睡眠を妨害せずに行けると思うわ」

 ニャルラトホテプさんは、あくまで冷静に、俺を落ち着かせるようにそう言った。

 俺は視線をニャルラトホテプさんからティアマトさん達に向ける。ティアマトさんとアキベエルさんは目測で、大体20cm近くぐらい離れており、俺からいる場所は目測でも1mに行くか行かないぐらいの距離だ。

「出来るには、出来るが…………失敗する可能性は高いぞ」

 帰還魔術に関しては、ヘルモーズの時に3回ほど行ったことがあるのだが、1回だけ成功して残り2回は失敗に終わっている。特に対象者より距離が遠ければ遠いほど、失敗率が上がっているぐらいだ。でだ、1mに行くか行かないの距離での帰還魔術の成功率は約20%未満だ。目測で逢っていた場合とそうでない場合で俺に戻った際に、個人で練習した際にバラツキがハッキリと見え切っていた。

 俺は深呼吸を2回ほど繰り返す。緊張すると成功率はさらに1周り下回っているのを知っているからだ。落ち着いて冷静にすれば…………。

 そのときクトゥルフさんは俺の右手を支えた。

「手が震えているぞ。それだと手元が狂うだろう。安心しろ。我が補おう」

 そう言うと同時に膨大な魔力のようなものが体内から湧き上がってくるのを感じた。

「っ!?」

「大丈夫だ。キオリなら制御できる。我の指示に従ってキオリの仲間をメル・マグ管理図書入り口に帰還するように設定するのだ。脳内でメル・マグ管理図書の入り口を思い出せ。そこの場所に2人を帰還することだけに集中しろ」

 クトゥルフさんに言われて、俺はメル・マグ管理図書の入り口を思い出しながらティアマトさんとアキベエルさんを帰還させることだけを集中するように意識を向けた。

 すると、ティアマトさんとアキベエルさんがいる場所に術式展開が現れて2人を光で包み込むように広がっていた。

「これって、大丈夫なんですか!?」

 この光景に驚いた俺はそう尋ねれば、クトゥルフさんは

「何、安心するといい。ヨグ=ソトースはこんな光で起きない訓練をしている」

 訓練ってなんの訓練だよ!?

 って、今は、そんな余裕がない。ティアマトさんとアキベエルさんの方に意識を集中すると2人が光に包まれて消えかかっているのが見えた。

「そのままだ。そのまま集中しろ。そして落ち着いて深呼吸を繰り返せ」

 クトゥルフさんにそう言われて集中したま深呼吸を数回ほど繰り返しをすれば、光に包まれて消えかかっていた光がそのまま上に上るように消滅していった。これは帰還出来たことを知らせる合図でもあったが、まだ油断は出来ない。俺は視線をそらさないままティアマトさんとアキベエルさんが居た方向を見ると二人は消えていたを確認出来て俺は、ようやく息を吐いた。

「お疲れ。帰還魔術に関しては微調整が必要だが、いずれは1人でも出来るだろう」

 クトゥルフさんは俺から離れてから笑顔でそう答えた。

「あ、その。クトゥルフさん。ありがとうございます」

 お礼を言えば、クトゥルフさんは驚愕しながらも

「どういたしまして」

 と爽やかな笑みでそう答えた。


 もぞりと何かが動く音が俺の視界に入りその方向を見れば黄色のローブを羽織った男性が起き上がっていて俺を見ていた。

【ラー湖】

美しい湖と評される天族がもっとも好む場所でニャルラトホテプなどを含む生物の信者が儀式を行う場所でもあり、冒険者が必ず立ち寄る場所でもある。

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