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ヨグ=ソトースを起こす方法

前回のあらすじ

救世主様ってなんぞ。


キリがいいのここまで

 のそりと起き上がったタコのような生物であるクトゥルフは目を開いてから、ニャルラトホテプさんのほう見た。

「……………………なんだ。(にえ)か? いや、その雰囲気からして違うな。貴様。男か女か?」

 かなり低くく少し掠れたような声でクトゥルフは、俺に視線を捉えながら話しかけた。

「男です」

 男か女かという質問には、何度かされたことがある。いや、異世界に召喚されてからは滅多にないのだが、入学式とか入学式とか入学式とか。とにかく小学校、中学校、高校に入学するたびに言われ慣れているので、先ほどの問いに俺は反射的に返した。多分即答だったと思う。

「そうか。それでニャルラトホテプ。何の用だ」

 クトゥルフは、興味を無くしたのかつまらなさそうにそう言った後ニャルラトホテプさんの方に視線を向けた。

「ここの洞窟内で時間が遡っているみたいなのよ。ヨグ=ソトースがその原因だと思うから今、貴方の巨体がここの通路を通れなくしているから退いて欲しいのよ」

 ニャルラトホテプさんは顔を上げながらそう言えば、クトゥルフは再び俺を見た後

「なるほど。そう言うことか」

 何に納得したんだ?

 そんな考えをしていることに気づくはずもない、ニャルラトホテプさんとクトゥルフは話を進めている。

「いつから時間逆行があるんだ?」

「知らないわよ。天族もその辺管理していなくて、魔族側の調査団がそれを調べるためにこの地下空洞に入ったらしいのだけれど、それが2ヶ月前なのに記録では5ヶ月前になっているって話なのよ。そこで彼が空洞内で時間が逆行しているんじゃないかって話よ」

 ニャルラトホテプさんは呆れながら地面に座る前に

「首が痛いから仮の姿になってくれない? 流石に辛くなってきたわ」

 と言えば、クトゥルフの身体が突然発光して思わず左腕で目を覆い隠すように庇うこと数十秒。光が徐々に消えてあのタコのような巨大な生物から魔族になっていた。しかも服装はいつの間にか着用していた。

「え、どうなってんだ? これ?」

 小さくなったのは光ったから知っているとしてどうして服を着ているのか不明だ。本来の姿である身体は服を着ていなかったはずだ。

「何に驚いている? ちゃんとした服装を着用していることに対しての不満か?」

「あ、いや…………その。どうやって服を着たんだろうなって…………」

「秘密だ」

 秘密だという言葉には重みがあり、YESしか答えを求めていない答えで、俺は思わず

「あ、はい」

 と答えるしかなかった。多分それ以外の選択肢は存在しないはずだ…………。


 魔族の姿であるクトゥルフさんは、ヘルモーズより身長が2個分高く大人びた青年と言った方が当てはまるほどの容姿をしていた。アラルさんと容姿が似ているような気がしたが多分気のせいだろう。

「これで、大分(だいぶ)楽になったわ。それで、話を続けるのだけれど」

 俺たちは地面に座りながら作戦会議という名の話し合いをすることになった。

「情報を一から説明するわね。あたしがここに来た時には既に調査団はクトゥルフの本来の姿を見て発狂した後だったわ。他の3人は逃げて2人は、目の前で手に持っていたナイフで心臓を一刺しで死んだわ。天族も3ヶ月前に行方不明の1人は発狂してこの空洞に繋がっている外の何処かに逃げていったわね。他の冒険者はここを通っていないけれど、疲労で倒れているかよね。ここは結構広いから、あたしたちの隠れ家として使っていたぐらいだから」

 ニャルラトホテプさんはそう言いながらクトゥルフさんに

「貴方はここで仮眠をとっていた間に何か起きたりしたかしら?」

 と尋ねれば、クトゥルフさんは腕を組みながら

「冒険者が3名ほどいたが、ニャルラトホテプが言ったように発狂したり精神がおかしくなったりしたものだけだったり、自殺したりと様々だ。狂って壊れるか死ぬかのどれかしか天族も魔族の残されてはいない。しかし貴様は、そのどれかにも当てはまらない。我々が求めていた救世主そのものだ」

 だから救世主ってなんだよ。と訊きたいところだが今はその時じゃない。それらをぐっと我慢してから

「その、ヨグ=ソトースさんは、何時からこの空洞にいるか分かるか?」

 俺は表情に出ないようにしながら2人尋ねれば、クトゥルフさんは

「23年前ぐらいだろう。奴は20年に1回だけ長期間の睡眠をとる。といっても5年だけだ。今は、その睡眠期間内だから後2年経たなければ、起きないだろうが」

 そこでクトゥルフさんは俺を見た後、

「貴様ならその短縮が可能かもしれぬ」

「はぁ!?」

 クトゥルフさんの言葉に思わず大きな声を上げた。

「俺ならそれが可能ってどういうことだよ? 流石に意味が分からないまま起こすってのは苦手な部類だぞ」

 呆れながら俺はクトゥルフさんに向けてそう言えば、ニャルラトホテプさんは

「キオリは、あたしたちの事を恐怖したりすることはないでしょう? 警戒はするけど恐怖は抱かない。これはあたしたちにとっては、とっても素晴らしいことなの」

「す、素晴らしい?」

 俺の間抜けな声にニャルラトホテプさんは瞳をキラキラさせながら

「そう! その体質というよりも性質に近い感じは、あたしたちから発せられる波長というものにちょうど重なって………そうね、気分がいい時に音楽を聴くととても気持ちがいいでしょう? その感覚と同じであたしたちも心地よい感じを味わえるのよ」

「味わえるって…………。まるで食べるような表現だな?」

 興奮気味で説明するニャルラトホテプさんに俺は、呆れながらそう言えば

「例えよ。例え。そこを理解してくれるかしら? つまり、ヨグ=ソトースの眠りの波長とキオリから無意識的に流れる性質で彼を起こすことが可能なのよ。クトゥルフはそう言いたかったのよ」

 ニャルラトホテプさんの言葉に俺は、ようやく納得が出来た。

 ニャルラトホテプさん達から発せられるという波長を俺が無意識的流れているらしい性質を合わせることでヨグ=ソトースの眠りを早めることが出来るということだ。

「疑問は解決したようね。では早速行きましょう」

 ニャルラトホテプさんは立ち上がってから握りこぶし作るようにそう高らかに宣言した。


【波長】

ニャルラトホテプさんを含めた人物たちが発している目に見えないバリアみたいなもの。それが一定間隔で発せられることから波長と名付けられた。

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