表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
92/177

最初の救出者

前回のあらすじ

いよいよ地下空洞に乗り込む時がやってきた。

 地下空洞は、とても暗く入り組んでいるので、メル・マグの商店街で必要最低限の必需品を買うことになった。

 頑丈な紐はもちろん、安全用のヘルメット。ピッケル、スコップ、ランタン、食料品などだ。特に食料品は多く買うことになった。メル・マグ管理図書の地下空洞に何人いるのかをミカエルさんに調べてもらったら少なくとも10人以上だろうということだった。ただし、それは酷く曖昧なもので記録を付けたのが許可申請書を出す1ヵ月ほど前だということをミカエルさんは申し訳なさそうに落ち込みながらそう教えてくれた。漫画的に表現するなら黒いモヤモヤが掛かった感じぐらいの落ち込み用だったようだったなと今更ながら思っていた。

 この世界より魔法やら魔術やらが発展しているらしく、この世界では禁止魔術の部類に当ったエレベーターのような物体事移動するということは魔界では禁止魔術に部類しなかった。共通認識として死に至らしめる魔術関連は禁止魔術として登録されていたのをメル・マグ管理事務所近くに設置してあったボードに大文字でデカデカと注意事項と書かれてあったをチラリと見ただけなので、あとで詳しく見れば禁止魔術の多さとその理由についてが事細かく書いてあったことに若干ながら感心するとどうじにどうでもいいような理由で禁止魔術になったことに呆れもしたのだが。

 さて、何故その禁止魔術について話したのかというと、管理図書の地下空洞は行きが紐で降りて帰りは、この世界で禁止魔術に入っていたエレベーターで帰るからだ。行きも出来やしないかと思ったが、高度な上に構造上難しいと判断されて帰りだけということになっていた。

 

 翌日の7時。

 俺とティアマトさん、アキベエルさんと一緒に管理図書の地下空洞へと向かうことになった。先に管理図書の地下空洞に詳しいアキベエルさんが先行で降りてからティアマトさん、俺の順番で地下空洞に向かう。

 大体20mから40mぐらい地下に慎重に降りつつ降下していく。気温も大分変って下に行くたびに熱が冷めていくのが分かるぐらいだ。念のために防寒着も買っておいて正解だったぜ。

「よっと…………。うわ、暗い上に寒いな。息が真っ白だ」

 地面の降りてから俺はそんな独り言を呟く。喋るたびに白い息が上空へ舞い上がっている。

「おやおや、おかしいですね。この場所は下へ行くほど、暖かくなる傾向にあるのだが…………ここまで異常事態だったとは。やはり、キオリが言った通り原因を調べた方がよさそうだ」

 アキベエルさんはそう言いながら光が漏れている場所で明かりをつけてつつそう言って

「幸いにもこの空洞には休憩所が何ヶ所かあるから、その都度休憩をして探索をしよう」

 という提案に俺とティアマトさんは頷いた。


 しばらく道なりに真っすぐ進んでいく事20分弱。地面にうつ伏せで倒れている男性を発見した。俺は思わず駆け寄って左手で背中を軽く叩きながら

「大丈夫ですか?」

 と声を掛ければ、男性の右手人差し指がピクリと動いて、もぞもぞと身体を仰向けの状態になってから

「…………飲み物を…………できれば温かいものを」

 と少し声が掠れた状態でそう言った。

 持ってきたリュックサックの中から水筒を取り出して蓋を開けてその蓋をコップ代わりに水筒の中に入っていたオニオンスープを注いで男性に持たせるように渡した。

 男性は震える両手でそれを受け取り少し覚ますように息を吹きかけてから口元に近づけて、そのままグイっと飲んだ。

「はぁ…………生き返る。どうも、ありがとうございます」

 彼はそう言って俺たちにお辞儀をした。

「僕はタツオっていいます。確か4ヶ月前にこの空洞で探索をしていて、その帰る途中に気絶してしまって………。ご迷惑をおかけしました」

「ああ、転生冒険者のタツオ。覚えているとも。君がここに入ったのは、2年ほど前なんだが…………」

 タツオと名乗った俺と多分同じ世界から来た人物はそう言って頭を下げたのを見てアキベエルさんはそう言った。というか転生冒険者ってなんだ?

「2年前!? どういうことですか?」

 タツオの言葉にアキベエルさんは、懇切丁寧に説明すればタツオさんは信じられないと言わんばかりの表情をしつつ何かを思い出したのかコップを俺に返した後、両腕を組んでから

「そういえば、この空洞というより迷宮ですけど、そこに入るとき変な音がしましたね。ぐわんぐわんって感じの。そこから時間の感覚が無くなったのではと僕は思いますけど」

「ぐわんぐわん?」

 アキベエルさんは、タツオさんの声に首を傾げた。

「そうですね。イメージとしてはそんな感じです」

 イメージなのかよと心の中でツッコミを入れるが口には出さないほうがよさそうだ。多分怒られると思う。

「ところで、アキベエルさんは知っていますが、そちらの2人は? もしかして魔族と呼ばれる方々ですかね?」

 タツオさんはそう言って俺とティアマトさんを見たので、ティアマトさんは俺を含めて自己紹介をすれば、俺を紹介した当たりかあら首を傾げ始めた。ああ、はい分かります。分かりますから、その、こいつと絶対に話すぞ! みたいな勢いになっている目をやめてくれ。分かっているから。

「…………。すみません。ティアマトさん。この人と少し話してきていいですか?」

「そういえば、同じ世界から来ているものね。いいわよ。わたしたちは端の方にいるから」

 俺がそう言えばティアマトさんは納得してアキベエルさんの背中を押して端の方へと移動した。

「理解が早くて助かるよ」

「いや、あの目で訴えてましたからね」

 タツオさんの言葉に俺がそう言えばそうか? と首を傾げた。

「まぁ、何でもいいさ。キオリくんだったかな? どうして女装なんかを? しかも歩きなれている」

 あ、そこからなのか。と俺は思いつつ、俺が女装になれていることと今現在着れる服がそれしかないことを説明した上で

「魔界とは別世界のこの世界って名前の異世界で勇者候補として他の異世界の人物と一緒に召喚されたんだ。それが今から14000万年後になる」

「は?」

「俺だけ精神だけが、14000万年前。つまりこの今に召喚されているんだ」

「やだ、この子若いわ」

「いきなりどうした?」

 あまりにも驚いているのか口調が女っぽくなったぞ。この人。

「おっと失礼。あまりにも驚きすぎて口調が女々しくなった。えーっと、精神だけが過去に戻っているのか?」

 タツオさんは恥ずかしそうに顔を赤らめながら咳払いをしてからそう尋ねたので頷けば

「何かの因果関係で呼ばれたのか?」

「どうだろうな? 俺もそこのところよく分からないんだ。ただ俺がここに来たのには理由があるはずなんだ」

 ケルベロスには黙っててくれと言われて黙っているが、この場合はどうなんだろうか。

 しかし、タツオさんは何かを考えたのち

「なるほど。事情は察したよ。僕やアキベエルさんたちには言えない何かの事情を知っているようだしそれを解決したとしても1400万年後をここで過ごさなくちゃならないってことだろう?」

 理解力が高いことに俺は驚きつつ頷けば

「分かった。アキベエルさんとティアマトさんには内緒にしておくよ。僕と同じ転生冒険者は何人かいるから彼らにはその事情を話すけどいいかい? ぜひ、この世界とやらを知りたいからね」

「あ、あぁ…………。でも、いいのか? 俺が嘘を言っているっていう可能性もあるんだぞ?」

 タツオさんの言葉に俺がそう言えば

「転生者として、奇妙な体験を今しているわけだし。この空洞の謎を解くのも君になるだろう。幾つかの試練を乗り越えてそれを乗り越える。勇者候補らしいやり方なんじゃないかな?」

 そう言って笑顔でほほ笑んで右手で俺の頭を撫でてから

「1つだけ。これに関連しているかどうか不明だけど。君に教えてあげるよ。僕がこの地下空洞に入る前の7ヶ月前に、不審な人物を見かけたらしいという噂があったんだ。その人の話によると外見は魔族そのもので、幽霊のような存在だったらしい。遠目で見て何もないところで消滅するように消えていったのを目撃しているからね。気を付けるんだよ」

【魔界の禁止魔術】

死に関するものは全て禁止されておりそれを破ると200年間牢獄での生活を余儀なくされる。


【転生冒険者】

死んで魔界で生まれ変わる時に前世の記憶。つまり、前の異世界での記憶がある場合と希望者のみ冒険者として魔界全体では決められる。その冒険者になるために、魔界での常識を約2年学び、実践訓練を含んだ戦術を3ヶ月間学んでからようやく転生冒険者として申請される。


【タツオ】

管理図書の地下空洞の探索に約4ヶ月前に冒険しにいった人物。地下空洞に入る際に変な音を聞いたと証言した。

キオリと同じ世界の転生者で前世では44歳の会社員で、仕事の帰りの途中に前日に降っていた雨が凍ってそれにスリップして電柱に激突して死んでいる。

魔界での年齢は23歳前後。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ