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管理図書の地下空洞

前回のあらすじ

女装の姿で外出したキオリはティアマトと一緒にティル・ナ・ノーグに向かった。

「それで、ご用件は?」

 アキベエルさんは爽やかな笑みを浮かべながらそう言った。俺に対しての興味はないようで、視線をティアマトさんに向けている。

「ティル・ナ・ノーグにある地下空洞で調査団と連絡が取れなくなっていて、それをわたしたち2人で調べることになったのよアキベエルは何か知っている?」

「調査団? ああ、ヘルヘイムの調査団の事だね。確かに2ヶ月ほど前に調査団が、ここの地下空洞に潜って以来出てきていないね」

 今、思い出したと言わんばかりの解答をアキベエルさんは寄越す

「2ヶ月ほど前? その地下空洞に入るのを連絡をくれたのは5ヶ月以上前だって訊いているのだけれど?」

 アキベエルさんの言葉に不審に思ったらしいティアマトさんはアキベエルさんにそう尋ねればアキベエルさんは驚愕した。

「まさか、こっちの記録では2ヶ月前だと記録されているし入国履歴も、ほら2ヶ月前だろう?」

 そう言って出入国履歴の書類をティアマトさんに差し出しながらアキベエルさんはそう言った。

 その出入国履歴の中には確かにアキベエルさんの言う通り2ヶ月前にヘルヘイム調査団がメル・マグに入国した手書きの文字が日付と共に残されていた。


 ティル・ナ・ノーグにあるメグ・マルは基本的に淡い色で構成された建物が非常に多く感じた。ただし建物それぞれに色分けでもしているのか住宅街は淡い水色なのに対して商業に関するものは淡い黄色といった具合に色分けをしていた。その中でもどれにも属さない淡い赤紫で構成された建物をアキベエルさんは俺とティアマトさんを招き入れた。部屋の中も淡い色なのだろうと思いながら。

 部屋の中も淡い色で構成されていると思ってしまった数分前の俺をぶん殴りたい気分になってしまった。

 部屋の中は淡い色は全く存在していなかった。外見はいい人だけど中身は少しひん曲がった性格でかなりひねくれている人物のようなギャップがここにはあった。アキベエルさんはその中でも、どこからどう見ても高級ソファーに羽を畳むようにしつつ座ってから

「どうだ? 驚いただろう? そうだろうそうだろう。ティル・ナ・ノーグによる国の決まりでね。外壁やらは淡い色で統一するようというのがあってだね。中身も外見のように淡い色で統一する動きは逢ったけど、地域住民の反対により取り消しになって以来、中身だけは変えていないんだ」

 と一切、相槌やら返事をしたわけでもないのに、彼は勝手に納得するような癖でもあるのか首を縦に動かしつつアキベエルさんは、笑いながら俺たちに椅子に座るように促した。


 どうやらこの家は、アキベエルさんが管理する管理図書と呼ばれるところであった。過去の出入国履歴から、ティル・ナ・ノーグの歴史に関するものまで中心にある。

「ヘルヘイム調査団の皆さんが調べたのは、この管理図書の地下に存在する、天族には悪影響を与える悪臭の調査の依頼をしたのが切っ掛けで調べに来たんだったね。彼らは直ぐにこの地下空洞に通じる道を尋ねた後、予備として何かあった際に無線機を置いたぐらいかな」

 そう言ってからアキベエルさんは高級そうなソファーの横に置いてある鞄の中から無線機を取り出した。今更高級そうなソファーの両隣に鞄が置いてあることに気が付いた。外見と内面のギャップの激しさで視界から抜けていたのだろう。インパクトってすごいなと改めて確認しつつ。俺はその無線機を見た。

 想像していた無線機より少し細長く、色は黒で構成されている。消しゴムを縦に長くしてみたようなイメージがあると考えていい。それの色が黒だ。上の部分に複数の小さな穴があり音声はここで聞き取れるようだということが分かる。

「魔界の無線機は初めてかしら? この無線機は映像も記録できるようになっている魔界で最先端の技術をフル活用して造り出された無線機よ。記録も残っているようになっているから、少し調べてみるわね」

 ティアマトさんがそう言って無線機についていた真ん中のボタンを押せば

『テスト。テスト。テスト』

 テストとして音声入力していたのか男性の声が入った。

『ここは、どこだ? ここはどこなんだ? いまはいつなんだ!?』

 その後に続いた音声にアキベエルさんは驚愕した。

「待て! それは、調査団が来る1ヶ月前に行方不明になったケエルという男性だぞ!? 何故その音声に彼の声が入る!? 予備の無線機を受け取ってから取り出すまでずっと鞄の中に仕舞ってて音声入力の仕方も教えてもらったのだが、それらを一切触れずにどうやって行方不明になっているケエルの声が聞こえる!?」

 アキベエルさんティアマトさんの服の襟をつかみながらそう言った。

「調査団が持っている無線機で音声入力を入れて入るようなっているわ。多分だけれど、調査団の1人が音声入力のボタンを押したんじゃないかしら?」

 ティアマトさんはあくまで冷静にそう言えば、アキベエルさんはそれによって冷静を取り戻し、そうか…………と呟いたのだが、次のティアマトさんの言葉にアキベエルさんと俺は驚愕するはめになった。

「でも、おかしいわね。古い順に音声が入力されるように設定してあるのに、最後にテストの言葉が出ないとおかしいのになんで1ヶ月前の音声は入るようになっているのかしら?」


 魔界の最先端技術によって造られた無線機。通称トーバーは、新しい順に音声が入力するように仕組まれており、本来ならテストという音声は必ず最後に来なければならないのを何故か一番最初に来てヘルヘイム調査団が来る1ヶ月前に行方不明になったケエルさんの音声はが後に来た。ヘルヘイム調査団は頼まれてケエルを探すように頼まれていたのだが、これにさらに矛盾が生じるのである。

 ティアマトさんは何かに気づいたのか、ポケットの中から色違いのトーバーを取り出し黒色のトーバーに何かをした後ボタンを押した。

『テスト。テスト。テスト』

『ここは、どこだ? ここはどこなんだ? いまはいつなんだ!?』

 そこまでは黒のトーバーで訊いたものだが

『今から、管理図書の地下空洞の調査に行う』

 5ヶ月前に連絡が来たという音声が一番最後に来た。

「これは、どういうことなんだ? 地下空洞の時間が巻き戻っているということなのかい?」

 アキベエルさんはあり得ない結論を出したのだが、確かにあり得ないのだ。2ヶ月前にメル・マグにきたヘルヘイム調査団が管理図書の地下空洞を調査したのが5ヶ月前。時間が巻き戻っているとしか考えられないのだ。

「連絡を忘れてケエルを拾ってから報告したってことになるわね」

「それが5ヶ月前だと? 魔王城を出発したのは何日前になるんだい? 少なくとも2ヶ月前だろう? ティル・ナ・ノーグと魔王城があるヘルヘイムの距離は30分ぐらいだろう?」

 アキベエルさんの言葉にティアマトさんは苦虫を嚙み潰したような顔で頷いた。今までその可能性に考え付かなかったようだ。

「さて、置いてけぼりだろうが、話に入ってもらうために、少し話題を振ろうか。キオリは管理図書の地下空洞は時間を巻き戻っている可能性を考えるなら、どう対処する? 魔界にも天族にも時間を巻き戻しを解除する固有能力を持っている人物はいないと仮定して考えてほしい」

 アキベエルさんはそう言って俺を見ながら尋ねた。

 俺はある程度、思考回路を巡らせながら

「俺だったら、この事情は放ってはおけないので、突入して調べます。そして時間が巻き戻ってしまう原因を探し出してそれを壊します。それがもし魔族か天族の仕業だったら話し合いをします。俺は今までそうしてきました。そして、どうしてそんなことになってしまったかのかを話し合います」

 そう言えば、アキベエルさんは少し驚愕したのち、ティアマトさんを見た。ティアマトさんは、最近は人間に対しての考えを改めるようになったが、それでもこの世界は気にくわないという具合に落ち着いたそんなティアマトさんは、まるで我が子のように少し誇らしげな顔でアキベエルさんを見た。

 確かに保護者をしてもらっているが我が子はヘルモーズだろうと思っているとアキベエルさんそれで納得したらしく

「流石。救える者だ」

 と慈愛の目を向けてそう言った。


【メル・マグ】

住宅街は淡い水色。

商業は淡い黄色。

外見は淡い色で統一されているのは、そういう決まりがある為。内装はそうではない。


【ヘルヘイム調査団】

メル・マグの管理図書の地下空洞を調べるために赴いた調査団の事で男女6人で構成されている。

主に索敵を得意とする。


【管理図書】

外見は淡い赤紫色で構成されている図書館のようなもの。ティル・ナ・ノーグの成り立ちからメル・マグの発展まで様々な本がある。地下に空洞がある。


【ヘルヘイム】

魔王城がある場所。

周辺住民の要望により木は枯れて地面も枯れて溶岩があるように構成されている。本来は草原のままなのだが周辺住民のイメージにより変更させられた。

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