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女装男子キオリ

前回のあらすじ

冥界の番犬であるケルベロスと会いました。

 時を動くと同時に消えていたと思っていた青の炎の柱は、未だに続いていた状態になっており、大きな空洞を埋めるかのように広がっていたのだが、熱風が感じられることはなかった。冥界の番人と名乗ったケルベロスは、あの炎の中にいたのだろうと、青の炎の柱を見ながら俺はそう思っていた。

「毎回、不謹慎だとは思うけど、この炎の柱を見るたびに綺麗だなってそう思うわ。キオリは初めてみるのだったわね。あれは冥界の番犬であるケルベロスが、ご遺体を回収したときに現れる炎よ。触れても熱くはないから大丈夫だけれど…………キオリは危険かもしれないわ。身体が1200万年後のこの世界にあって。精神がこちらにあるから。焼かれる可能性は十分に高いわね。ええ。触らない方がいいわ」

 ティアマトさんが俺に近づいてからそう言って話してくれた。

「熱風が来ないのは、熱くないからってことか?」

 俺がそう聞けばティアマトさんは頷いた。

「ええ。炎とは言っても魔法や魔術で造られた炎とは別の何かで構成されているわね。詳しく調べようとした魔族もいたけれど、摂取できない、計測できないとかで結局そのままよ」

 魔界の七不思議は、魔界では特別視されている生物の問題について触れることが多いなと俺は感じながらもその青い炎の柱をティアマトさんと一緒に消えるまで眺め続けた。


 自室に戻ってからティアマトさんに用意された新たな服装に着替えるように言われて差し出されたのはロリータ系の服から軍服に似たゴスロリファッションになった。暗い色を中心に迷彩柄とかをふんだんにあしらっている。フリルも黒で統一されたのだが基本的にスカートのみだ。ズボンはないのかと思ったのだが、ティアマトさんに逆らうと洗脳はしないかもしれないが、何かと罰は下りそうだと思い至り黙ることになった。

 中学の文化祭や高校の文化祭などで、毎回女装されている俺として着替えるのは手慣れたものだ。特に高校1年の文化祭の際に、他校の男子生徒に告白されたりもしたが、性別が男であることを告げれば彼は雷に打たれたようなショック顔を見せたものの友達としてならと連絡交換させられた。その彼には姉がいるらしくその姉がファッション雑誌のカメラマンをしており、文化祭の写真で彼の姉に目を付けられて女装男子特集として俺が他の女装男子より軍を抜いていたのでその雑誌の関係者らしき人物に名刺をもらうぐらいにはしていた。将来の就職先として考えたりもしたがその数か月後に名刺をくれた人物が務めていた会社が倒産したというのをニュースで見て以来、就職の視野には入れなくなったのだが、文化祭の際に告白してきた彼の誘いにより別の会社へ就職先が決定された。1年で就職先が決まるのってなかなかないと思う。あれ以来、女装男子の特集があるたびに俺が呼ばれて同じ女装男子と休みの日に遊びに行くぐらいには仲良くなったりしている。

 さて、過去回想に浸ってしまったが、女装男子としてファッションモデルを何度もやりくりしているので女装に対する抵抗が一切ないのである。悲しいことに。

「抵抗があると思ってこれを選んだけど、すんなり着るのね」

 様子を見に来たらしいティアマトさんは、俺が難なく軍服ゴスロリを着ていることに呆れながらもそう答えた。

「もう慣れたよ。生まれつき女顔だったから女装されることは多々あったしさ」

 ただし中学校に入学してからだけどな。小学校までは自分で選んだ私服とはいえ、少し女々しさもあってから小学生男子が好む黒とか青とか暗めの色で決めていたような気もするが………。中学になると指定制服なので、その時は学ランだったのだが何せ女顔が目立つようになる。声変わりは中学2年の2学期あたりだったような思い出がある。

 などと思考を巡らせながらそう言えば、ティアマトさんは何故か目を輝かせながら

「なら、アクセサリーも付け加えていいかしら? カチューシャだから大丈夫よ。未だに髪を切っていないみたいだからカチューシャとか髪を結いましょう? ツインテールがいいわね。大丈夫よ。キオリ。あなたなら完璧な女装男子に仕立ててあげるわ!」

 あ、変なスイッチを押してしまった。

 その後、俺はティアマトさんの手によって好き勝手にされる羽目になった。着せ替え人形の人形の気持ちを今理解したぜ。


 ティアマトさんよって好き勝手に着せ替え人形ようにさせられた俺は結局、軍服ゴスロリの服装にメイドのカチューシャとコサージュ、アクセサリーの類を軍服ゴスロリに合うように着せ替えられた。だが、気持ちも落ち着いてきたのは、昨日までは食欲がなくて喉も通らなかった食事がすんなりと通ったこともあり、ティアマトさんなりの励ましだったのではないかと推測したのだが、あくまで俺の想像でしかないので、口には出さなかった。

 食堂で食事をしていた為、俺が普通に食事をしていることに安堵した表情を浮かべたのはいいが、その後に何とも言えない絶妙な顔をしていたのは、多分、今着ている服装に関しての事なんだろうなとは思う。

 実際に、魔族は服装に関して訊ねられたのだが、俺のいる元の世界で着慣れているといえば、それで納得したようで、納得するものととそれでも嫌々だったのではないかという尋ねてくる人物と半数に分かれたので、その人物には詳しく話せば、納得はしてくれた。それに買い物も決まりもあるので、魔族たちはティアマトさんが趣味で集めている服の多さに関心しつつも、まぁ、頑張れと遠回しに可哀そうな子として扱われた。

 食事が終わった後にティアマトさんから呼び出しがあり、ここ最近、魔界周辺で起きている不審なことがあるとして調査を任されることになった。

「元々、魔族もそうだけど人間側も行方不明になることが多いのよ。その原因を探りに今から出かけることになるわ」

「それで、この服装なのかよ…………」

 俺が今着ている軍服ゴスロリのスカートの裾を軽く摘み上げながらそういえば

「いいえ、全く関係のないわ。わたしの趣味よ」

「趣味かよ!?」

「ええ。趣味よ」

 ティアマトさんは開き直りながら話を戻す。

「それで、既に調査団が何人か向かっているのだけれど、ある場所に入ってから連絡が途絶えているの。もしかしたら、地方都市と同じように何かしらの作用が働いているのではないかと魔王が判断したらしく前回も解決したわたしたち2人でその調査に向かうことになったの。アスモデウスとエリゴスは留守番なのだけれどね」

 最高上位幹部は無暗に外出は出来ないという決まりがあったのを俺は思いだしながら頷いた。


 ティル・ナ・ノーグという大陸に存在するマグ・メルという国家都市に着いた。

 ティル・ナ・ノーグというのは、魔族とは正反対に位置する天族が住む場所で、ティル・ナ・ノーグの大地に足を踏み入れれば視界は天空に一気に近づいたのではないかと目の錯覚をするほど空が澄み渡っており、空気も他の大陸と比べれば息がしやすいのが特徴的である。人口芝生のように少しだけ固い地面を抜ければ花畑がそこら中にあった。

 ここに訪れたのはマグ・メルという国家都市内にある地下空洞に訪れたからだ。

「おやおや。これはこれは魔族のティアマトにえーっと、そちらは精神が不一致でありますね?」

「こんにちは、アキベエル。彼は1200万年後のこの世界からこちらに来た救える者と呼ばれているキオリよ」

 アキベエルと呼ばれた男性の背中には白くて大きな翼と頭上に天使のわっかのようなものがあった。これが天族の特徴である。

「キオリ…………ああ。確かに登録されていますね。失礼しました。初めまして、私はアキベエル。このメル・マグで管理をしております」

【キオリ】

中学校と高校の文化祭の際に必ずメイド喫茶になりその時に女装されることが多くあったため、女装には抵抗がなく。女性らしい歩き方は他校の生徒でキオリに告白した男子生徒の姉の指導によるもので将来はファッション関係に関わればと思っているし就職先もファッション関連だったので抵抗がない。女装するときは描写はないものの歩き方に気を使っている。

ちなみにキオリが女装男子として出ていた雑誌の名前は【ジョダン】という女装男子専門雑誌。購入者は10代女子から40代男性まで幅広い世代で読まれている。


【ティル・ナ・ノーグ】

魔界にある大陸のうちの1つ。魔界とは対照的な存在となっており、神様を信仰している。


【メル・マグ】

ティル・ナ・ノーグにある国家都市の1つで、果物や野菜といったものを栽培している。基本的に下町で売られている服を作っているのはメル・マグの人達。


【アキベエル】

男性。天使のようなわっか。大きな翼と白い服を着ている。メル・マグの管理者を担っている。基本的に真面目だが、ティアマトに対してはからかうような姿勢を見せる。ティアマトとは顔見知りだと言っているが周辺の住民は友人ぐらいだろうと思われていることに気づいていない。

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