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救える者

前回のあらすじ

ティアマトは掌の上で躍らせれているらしい。

 救える者

 遠い昔。何百年か何千年か何億年か。正確な日付は不明だが、過去にこの世界に強制的に移動させられた魔王が無事に帰還した時にその魔王が言っていた言葉。それが救える者である。

 救える者は、魔力を持たない人間であり、この世界とは別の異世界から来訪してきた人物で、お使いのついでと言わんばかりに、引き受けて魔王を帰還させた。

 しかし、何せ遠い過去の話なので、この世界は何故か文字が勝手に浮かび上って記載してくれる謎の本しかなく、それを所持しているのは片手で数えられる程度しかいない。しかも、伝言ゲームのようにすればいずれどこかですれ違いも起きるし語り継がれるということもある程度の解釈の違いが起これば最初よりも大分(だいぶ)、脚色された話になっていた。

 一方の魔界では、それら事態を起こさせずに、代々年長者が若輩者に伝えていたので、現在2000年に1回発生している強制送還も、救える者がいればと魔界の者たちは思っているのである。

 

 エリゴスは、救える者の記憶を見てティアマトが完全に掌の上で踊らされていると明かしたのだ。

「どういうこと? この計画はわたしが最初に考えて立案して実行に移しているのよ? それを彼の掌の上で転がされているって……ありえないわ」

「いや、あり得るから言っているんだ」

 ティアマトの言葉に、エリゴスは即答した。

「あり得るから言ってるんだ。ティアマト。あんたは、この記憶の欠片を読んでみたか?」

「いいえ。見ていません」

 エリゴスの言葉に今度はティアマトが即答で返した。

 エリゴスはその返事に呆れた顔をしながら右手に持っている記憶の欠片をティアマトに差し出した。

「ティアマトちゃんの前にぃ、あたしが見てもいい?」

 と傍観の姿勢を見せていたアスモデウスがそう言えば、エリゴスは証言者が増えるのは問題ないだろうという考えに至り、頷いてからエリゴスは右手をアスモデウスのところに移動させ、アスモデウスはそれを慎重に両手で受け取りそれをじっくりと見始める前に

「ティアマトちゃん。この世界の人間が憎いのは分かるけどぉ、救える者である彼には気を許したほうがいいんじゃないかなぁ?」

 とティアマトに向かってほほ笑んだ後、記憶の欠片を見始めた。

「納得出来ないって顔だな。ティアマト。だが、俺も記憶の欠片を読んだ時点で正しいとは思えない。一応本人と比較対象もしてみたいからな。その時に記憶の欠片は戻ることにはなっているだろうが…………。気が向いたらでいい。ティアマト、その時だけはヘルモーズの洗脳を解いてくれ」

 記憶の欠片には時折、睡眠時に見る夢の内容も入っている場合がある。エリゴスは、救える者と一度だけでも会話をしその記憶の欠片と本人の意思に相違がないかを確認したいのだ。

「…………はぁ、分かったわ。記憶の欠片を見て洗脳を解くか解かないかは、わたしが判断します」

 とティアマトは不機嫌そうな顔で腕を組んでそっぽを向いた。

 数十分後、救える者の記憶の欠片を読み終えたアスモデウスは、困ったような、嬉しいような、戸惑ったような、といった表情をコロコロと変えながら放った感想は

「ティアマトちゃん。踊らされているねぇ~~」

 これである。

「アスモデウス様まで!?」

 最高上位幹部と言われるエリゴスとアスモデウスの似たような言葉に流石に拗ねるところではなくなった、ティアマトはアスモデウスから記憶の欠片を受け取るとそれをじっくりと観察するようにそれを見た。


数十分後、ティアマトは机の上で腕枕を作り顔を覆いながら項垂れていた。

「読まれていたわ…………。わたしが洗脳することも分かっていて黙って操り人形のようになっていたなんて…………。別の異世界でトールが人間になった際に救える者に自分の魔力を譲渡した理由まで分かってしまったわ…………。最悪だわ…………」

 ティアマトがこれまでに考えた計画がすべて読まれた上にその対策までされていた。そうなった場合の対処法まで事細かく明確になっていた。最高上位幹部の2人が掌の上で踊らされているという言葉に納得せざるおえない。

 ティアマトは、それからさらに数分も唸りに唸ってから約束通りヘルモーズの洗脳を解くことにした。でも、計画は実行したいので、今後もヘルモーズとして活動して欲しいなっていう願望が少し見え隠れしつつヘルモーズに与えられた部屋に赴いてから、笑顔で招き入れたヘルモーズに椅子に座ってほしいとお願いすれば普通に座ってそのまま指パッチンで洗脳を解いた。洗脳をするのに時間は有するのが洗脳を解くのは一瞬なのである。

 指パッチンの音で気を失ったヘルモーズに記憶の欠片をキオリに返してからティアマト達は、それを繋ぎ合わせてるようにすると同時にキオリは目を覚ました。

「…………? 記憶が戻っている? どういうことだ?」

 とティアマト達がいるのにも関わらず腕を組んでからぶつぶつと呟きつつ、そして我に返ってからキオリは、知っている人物と知らない人物が2人いた。

「え? あ、いや。ちょっと待ってくれ。考える時間をくれ」

 そう言って再び考える人のようなポーズを取りつつキオリは記憶の整理がつくまでに時間を有することになった。

 数分ぐらいして記憶の整理がついたのか、咳払いを1回してから

「知らない人が2人増えているような気がするが、まずは挨拶が先だな。初めまして俺はキオリだ。よろしくな」

 記憶を整理しても知らない2人と面識がないと判断したらしいキオリは、椅子から立ち上がって右手を出して握手を求めた。

 アスモデウスとエリゴスは挨拶を交わす。

「それで、俺はどうなっているんだ? ティアマトさんが俺に洗脳するように熱心になっていたのは知っているが、どういう切っ掛けでそれを解いたんだ? しかも、前はあやふやだった過去が鮮明に思い出せるほどだ。これも一体…………」

 と次々に疑問を繰り出すキオリにアスモデウスは分かりやすく説明をした。

「記憶の欠片を読んだ結果。俺が過去に起きた魔王を帰還させた救える者と判断した? SSPでタルタロスが俺が救える者だって伝言を残したのは訊いたが…………。今にして思い出してみれば、アラルさんに似ていたな…………」

 キオリは頷いてからそう言えば、

「だが、仮に俺がその救える者だったとして、俺が元の世界に戻ってもこの世界と、魔界が再びブラックホールで繋がって呼び出される危険性もあるんだぞ。繰り返しになったらどうするんだ?」

 キオリの言葉にエリゴスは

「確かに、そうだな。その話も大分過去の話だ。また魔王が殺される未来が待っているかもしれない。それは魔界側も避けたい事実だ。しかもいつ救える者が現れるかは分からない。なるほど…………そう言う考えもあるのか」

 と腕を組んで頷いてからそう言った。納得したと言わんばかりの顔である。

「でも、君達平和組はこの世界に飛ばされた魔族たちを元に戻せると算段が付いているわけでもないでしょう?」

「ああ。そうだな」

 ティアマトの問いにキオリは即答してから頷いた。

「この世界は、魔界からきた魔族に対して厳しい面がある。この世界と魔界が共存していないからこそ起きうる事態だ。魔界だと人間側と魔族側では協定が結ばれているんだろう? それと同じことをこの世界と魔界でしたいと俺は考えているんだ」

 その言葉にティアマト達は驚愕した。

「共存!? なんでまた、共存なんかにぃ!?」

 アスモデウスは驚愕のままキオリに尋ねると

「この世界側は、魔族が来るとモンスターが活発したり何かしらの現象がこの世界で魔族がくる100年前に起きたりしているらしいんだ。地震だったりモンスターが街に襲ったりと人的被害から災害まで多種多様に起きている。その兆候は既に対策はされているらしいんだが、魔族が来てから1年間はモンスターが異常なぐらい活発化するんだ。魔族側にやってもらいたいのは、そのモンスターの鎮圧化だ」

【救える者】

初出は【来訪者の到来】

魔界側が若い魔族に教えている救える者は4400万年前に魔界の魔王がこの異世界に到来した際に元に戻した人物のこと。

詳しいことは【戦を知らない者】にて

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