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アスモデウス

前回のあらすじ

この世界で召喚された魔王は禁忌魔術の1つである異世界アトランダム強制召喚によって召喚されていたことが分かった。

 魔界にある地方都市に訪れたティアマトとヘルモーズは、その地方都市にある問題を解決するために、訪れていた。

 魔界にも冒険者は存在しており、本来ならその依頼も冒険者が請け負ることになっているのだが、地方都市から目と鼻の先にある洞窟に入ったっきり二度と出てくることはなかった。最初こそは別の出入口があるのではないかとかその洞窟のどこかに地下空洞があり、そこから脱出しているのではないかという噂はあったのだが、実際に確かめに行った地元住民は、あっさりと戻ってきたのだがその時には出入口はここしかないということが分かった。

 その他にも地元住民は、その洞窟に入ったのだが二度と戻ってこなくなるということはなく普通に戻ってきたのだが、地方都市の傭兵をしていた男2人組が洞窟に入った時には一晩経ってもその傭兵が戻ってくることは決してなかった。

 これにより地元住民は、冒険にある程度手練れた人物が洞窟に入ると二度と戻ってこない洞窟として認定し、それを解決できるのは魔王城周辺に住む魔族だけしかいないので、その依頼が魔王城に届いてティアマトとヘルモーズが依頼を受けて地方都市に訪れたのである。


「前に一度だけ、魔族の方々が入っているのを街の住民が見かけており、洞窟から出て行くのを別の住民が見かけたという証言があり、これ以上冒険者や傭兵を減らさない為にもぜひ、お二人様の固有能力で解決していただければと、思っております」

 その地方都市を統括している腰の曲がった女性は向かいに座るティアマトとヘルモーズにお辞儀をするように頼んでいた。ティアマトがその女性がわずかに揺れているのを目撃しつつ敢てそのことには触れず

「わかりましたわ。わたしたちにお任せください」

 と笑みを浮かべてそう言った。

「おお、ありがとうございます!」

「でも、いくつか質問を『洞窟を創ったのはあなた? 嘘をつかずに教えて』くれる?」

 ティアマトの言葉に女性は困惑しつつ

「いいえ…………。わしが幼いころに突如として現れたものじゃ。その時は、冒険者も数多く入っていったがちゃんと帰ってきたのを覚えている」

「そうなの…………。ありがとう。行きましょうヘルちゃん」

「はい。お…………ティアマト様」

 ヘルモーズが外でティアマトを呼ぶときにはお母さまではないほうを呼ぶようにという伝えてあるので、ヘルモーズはお母さまと言いそうになった口を押えてからそう答えた。

 女性の家から後にして人気のないところに着いたところでティアマトは周りを見てから

「ヘルちゃんはどう思ったかしら?」

「あの、洞窟の内部に幻惑の術が掛けられているのを外からでも確認しました。問題は洞窟の中かと…………」

 地方都市に訪れる際に問題である洞窟をチラリと見た際にヘルモーズの固有能力である幻惑と幻想でそれを見抜いていた。

「だから、手練れの冒険者や傭兵は消えていくのね。初心者でも推薦しないぐらいの力量さがあるでしょうけれど、ヘルちゃんも推薦には達しているし大丈夫ね」

「はい! 任せてください! ティアマト様」

 ヘルモーズは気合を入れる仕草をして目を輝かせてからそう言うのでティアマトはほほ笑みながら頭をなでてから、人気のある市場へと戻り大量の食料を買ってから2人はその洞窟に向かった。

 リグレット洞窟と地域住民からはそう呼ばれている。というのも、その名の通り、手練れた冒険者や傭兵が洞窟に入って戻ってこないのだから、後悔の念でそう名付けられた。そういう英単語があるらしい魔界にも異世界から人間が転生した人物が付けた言葉らしいが、ティアマトは、魔界からの異世界転生されたということもあり、あまり気にしなかった。

 そのリグレット洞窟は非常に不安定であることは、その異常事態の説明をしてくれた女性が教えてくれた。全員が脱出できたのを確認次第、入り口を封鎖するつもりであるとも説明されたので、ティアマトとヘルモーズはなるべく早く洞窟の異常を見つけて調べる必要があったのだ。

 大量の食料を買ったのは、洞窟に入った人間が飲まず食わずだった場合必要な食料を届けるためである。

 

 リグレット洞窟の入り口に足を踏み入れた時に足音が壁に反響して遠くまで鳴り響いた。

 出入口付近は地上でむき出し状態になっているのにも関わらず、雨粒が一滴一滴ずつ滴り落ちているのを見てティアマトは雨が降った際の名残で残っているのだろうと推測した。

「ティアマト様! そこから先は幻惑の術が仕掛けられています」

 ヘルモーズの言葉にティアマトは立ち止まった。

「確かに手練れた冒険者と傭兵しか通れないわね。本来ならこの突き当りを左に進むのでしょうけれど、手練れた冒険者が獲得できる幻惑の術を取得していれば新たな道にしかも、地下に向かっているわね」

 ティアマトの言葉にヘルモーズは頷いて幻惑の術を解除してからその先を見た。

 綺麗に整えられた階段。長方形の意思がレンガ積みのように並べられたもの。ここだけ作りが違うが明らかに分かる。

「誰かが意図して作った…………? こうすることで、ここに入るように誘導した…………とか?」

 ヘルモーズはぶつぶつと言いながら冒険者や傭兵が消えた理由を考える。しかし、考えても仕方がない。ティアマトとヘルモーズはお互いに顔を見合せたから黙って頷きヘルモーズが先にその奥へと立ち入るように歩き始めティアマトもヘルモーズの後ろを少し距離を置いて歩いて行った。

 歩くたびに壁に設置しあるろうそくに灯りが勝手に灯ることにより薄暗いのは薄暗いのだが、それでも足元を確認できるぐらいの薄暗さ。先は未だに暗いままだ。コツコツと歩き始めること数十分後。とてつもなく甘ったるい匂いが漂って来た。

「魅惑魔術だわ!」

 ティアマトはそう叫んだ。

 魅惑魔術と呼ばれる魔界には一般的に使用をすることは禁止になっている魔術の事だ。独特な甘ったるい匂いは洗脳に並んで非常に厄介な能力なのだ。魔界でも使えるのはアスモデウスだけである。そのアスモデウスは現在では行方が分かっていないのだが…………。

 そこからさらに数十分ほどようやく長い階段の終着点についた先に見えたのは薄い桃色の蛍光灯のような明かりで照らされており、そこには大量の食料品と目に正気を失った冒険者二十数人がいてその中心には、赤色の生地金色に塗られた背もたれにくつろいでいる行方不明になっているアスモデウスがいたのだ。

「アスモデウス様!? あなた、一体…………。これは、貴方の仕業なの?」

 ティアマトは驚愕しながらアスモデウスは腰まで長い髪を右手で払いのけながら

「あらぁ~~? ティアマトじゃない? 久しぶりねぇ~~? これはぁ、そのぉ…………。制御出来なくなったのぉ!!」

「は? どういうことよ?」

 ティアマトはそう言えば

「この空間はぁ、私たちの固有能力が消滅するように作り替えられているのよぉ。おかげで魅力の固有能力が駄々洩れよぉ~~! 子の人間達も帰ってこれなくなるしぃ~どうしたら」

「固有能力が消滅する? まさかッ!?」

 アスモデウスの言葉にティアマトはヘルモーズを見るとヘルモーズは動かなくなった冒険者を俵担ぎをして持ち上げていた。ヘルモーズの体力は冒険者1人を軽々と俵担ぎできるほどの体力は持ち合わせていないはずであるのをティアマトは知っていた。

 ティアマトを制するようにアスモデウスはティアマトが着用している服の襟をつかんでからおびき寄せて

「あれって、どういうことなのかぁ? 説明してくれるかしらぁ?」

 そう小声で呟かれて、ティアマトは最高上位幹部の1人であるアスモデウスには逆らうことは出来ずに渋々と言った感じで事情を説明したのであった。

【とある地方都市】

人口はおよそ1300万人前後で男女非は6:4。

初老の女性が地方都市を統括している。


【人間から魔族の依頼】

よほどの事じゃない限り、人間から魔族への依頼することはない。

ほとんどが冒険者のみ。


【リグレット洞窟】

Regretという英単語で後悔や遺憾という意味。異世界から魔界に転生した人物が名付けた言葉

岩肌で構成されており足場や綺麗に整えられていないので歩きづらくそれようの靴を履くことがお勧めされている。時折天井から砂埃が落ちてくるので何もかも危ない。

幻惑の術がそこら中に張り巡らされている。


【魅惑魔術】

魔界における魅惑魔術は、緊急事態ではない限り一般使用が禁止されている魔術でそれを持っているのはアスモデウスだけと言われている。


【アスモデウス】

魅惑の固有能力を持っている最高上位幹部の1人。女性で胸が大きく腰までの髪が伸びている。基本的に紫色の服を着ていることが多い。

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