異世界アトランダム強制送還術式
前回のあらすじ
ティアマトはあることを思いついたようである。
1月18日追加
文章を追加
あとがきにミネルウァを追加。
それから4000年ぐらいの年月が過ぎた。
その4000年間の中でキオリ(精神)が現れる兆候を見せることなくアラルが監視役を徹してティアマトは少しでも思い出そうものなら洗脳を重ねに重ねた結果。200年経過して、常に何かを思い出す兆候が完全に消失して、ヘルモーズ(完全体)が完成され、その日はお披露目会を開くぐらいの盛り上がりがあった。
ティアマトは、ヘルモーズに洗脳する際に与えた記憶通りに動く彼女に笑顔を隠すことなくあからさまに機嫌がいいと言わんばかりの態度でヘルモーズを世話をしたりされたりしていた。事情を知る魔族たちは、ティアマトの固有能力を恐れて何も言わなかったが、顔には出ていた。
ヘルモーズが定着してからは、その訓練にさらに1800年も要したのだが、その理由として、運動不足が原因であった。
両手両足を鎖で縛りをそれを壁に貼り付けたまま拷問のような洗脳を200年間受けていたのだ。そりゃあ、運動不足なるのは当たり前である。体力付けるのに100年。さらに訓練に1700年ぐらい要した。
訓練内容は、ロッククライミングの他に、魔術訓練、魔力の底上げ、模擬戦闘などを含んだ多種多様の訓練をそれぞれ行った。その際にヘルモーズは合計5回ほど筋肉痛になってしまった。
で、残り2000年は何をしたかというと、2000年前に強制的に異世界に連れていかれて死体となって戻ってきたアトゥムの葬式を行った時は魔界全体が悲しみに暮れ、それに連動するように3週間ぐらい雨がやまなかった。
それから翌週に消えた最高上位幹部に数えられているオリアスを含めた4名が何処からか現れた鎖付き手錠で両手両足を固定されたのち闇の空間に飲み込まれたのをヘルモーズが偶然通りかかって、その何処から現れた鎖付き手錠の謎について、ミネルウァに報告を行った。
ミネルウァは、あらゆる知識に特化した魔族でティアマトとは親友で時折情報交換をする仲である。ヘルモーズの報告にミネルウァは、その謎について調べることにした。
そして現在。
「遅くなって申し訳ないね…………。ティアマト。ヘルモーズに頼まれたあの鎖付き手錠と謎の空間について解析が完了したよ」
ミネルウァの言葉にティアマトはベッドで横になって眠っているヘルモーズの頭を軽く撫でてから椅子から立ち上がり、その部屋から出て行った。
ティアマトとミネルウァが選んだのは西はずれにある飼育小屋である。昔は鶏とか馬とかを飼育していたが、魔界の人間側の協定により人間側の方で動物たちを飼育することになったので、現在は小屋だけが残っている状態である。
そんな場所にミネルウァとティアマトは、そこを密会場所とした。
「それで、ミネルちゃん。あの忌々しいあれが何なのか分かったわけ?」
ティアマトはミネルウァをミネルと愛称で呼んでいる。最初こそはミネルウァも懸念したが、数百年もすれば、受け入れるようになるぐらいには寛容になった。というより諦めたと言った方が正しいのだろう。
「以前、彼…………。キオリさんが言っていたことに関わるね。彼がこの世界に呼ばれたのは、異世界アトランダム召喚術式という魔術を用いた術式回路なんだけど…………って、話を訊いてくれるってのは分かるけど顔が歪んでいるよ」
「…………当たり前でしょう? だって結局、彼に頼ることになるんだから。まぁ、そのおかげでいい情報も手に入ったけど…………で?」
ティアマトの顔は最初より明らかに変わっており不機嫌であるということを顔に出しまくっていた。
「その術式回路を彼の記憶で見た限りは、彼がこの世界に読んだ書物によれば、その異世界アトランダム召喚術式とあの空間はかなり似ているらしい。そして、ここからが新たな情報」
そういってミネルウァは一旦黙った後
「異世界アトランダム召喚術式を誰かが改良したものだということが分かったの。異世界アトランダム召喚術式とは別の術式。これを仮に異世界アトランダム強制送還術式と名付けるけど、その強制術式に置いて一番重要なのは、それを発動したのがバルバトス…………つまり、貴方のお父様が最初に召喚した時のこの世界で当時の王様が禁忌魔術を使用したのではないかというのが、こちら側の推測だよ」
バルバトスはティアマトの父親で最高上位幹部の1人であった。と言ってもティアマトの本当の父親ではなく育ての親で特に慕っていたのがそのバルバトスである。
彼の威厳に憧れて魔王城に入ったのも言うまでもないのだが、その親しく慕っていた育ての親が死体になって帰ってきた時の怒りや憎しみは人一倍恐ろしいものであった。
ティアマトはミネルウァの言葉に顔を歪めて舌打ちをした。
「これだから…………この世界の住人は…………ッ」
かなり苛立っているのを横目で見ながらミネルウァは話を続けた。
「それで、異世界アトランダム召喚術式より強度な召喚術式となったことで、あとは異世界アトランダム召喚術式と同じようにこの世界に悪として認定されて呼び出された。これが真相」
ミネルウァの言葉に壁に寄りかかって話を訊いていたティアマトは壁から離れてから
「そう。ありがとう。要するにこの世界の人間が悪いってわけね?」
「そうね。そう考えてもいいかもしれない。実際に魔界にもブラックホールと似たようなものは発生しているけど、連れていかれるってわけではなく何故か現れているってだけだし」
ミネルウァに確認をとってからティアマトは、また何かを思いついたらしくニヤリと含み笑いをしたあと
「丁度いいわ。ミネルちゃん。手伝ってくれるわよね?」
この顔はあまり好きじゃない顔だなっとミネルウァは思いつつも逆らったら洗脳されるのがオチなので
「面倒事じゃなければ力を貸すよ」
「流石! ミネルちゃん。頼りにしているわ。後日、教えるわね。それじゃ!」
そう言ってティアマトは飼育小屋から離れていった。途中でスキップしはじめたのを見送ってからミネルウァは
「もし、彼がそれを想定していたとするのなら…………。いえ、そんなことはないか。アラルの話だと精神系の固有能力を持っているみたいで、しかも本人には自覚がないぐらいだから…………」
そう言ってミネルウァも飼育小屋から離れた。
魔界の空は基本的に雲で覆われていることが多い。これは意図的に暗くしているだけで主に魔王城周辺は、さらに厚い雲で覆われて光を遮断していたし人間が住む地域に至っては、雲と雲の間に光の柱が現れるぐらいには魔王城周辺より薄く、外に洗濯物を干しても普通に乾くぐらいの日差しが届いていたりする。
じゃあ何故、魔王城周辺のみ厚い雲で覆われているかというと、単なる人間側のイメージがそれであったからである。光に弱いわけでもない魔王城周辺に住む魔族は人間側で普通に買い物をしても悲鳴を上げることもなく、こんにちは。今日も来たのね? というぐらいに人間と魔族の友好関係は仲がいいぐらいなのだが、厚い雲で覆われて暗い雰囲気を纏っているというのが人間側のイメージで、偶に明るくさせたことがあるが、わざわざ魔王城に来てまで苦情を言いに来る人間がいた為、19万年前から厚い雲で覆われることとなった
「というわけで、人間側のイメージが崩れない限りはずっと厚い雲で覆われているわね」
ティアマトは、ヘルモーズの質問内容である、何故魔王城周辺だけ厚い雲で覆われているのかという理由を説明していた。
「そう、なんですか…………。お母さまは魔界に住む人間に嫌悪を抱いたりしたりしないの?」
ヘルモーズの言葉にティアマトは
「この世界に住む人間と魔界に住む人間は立場が違うわ。この世界の人間はわたしたち魔族を殺すけれど、魔界に住む人間は魔族を殺したりしないわ。寧ろ、友好関係に決定的な違いがあるのよ」
ほほ笑んでからヘルモーズの頭をゆっくりと撫でた後
「だから、ヘルちゃんも魔界に住む人間は優しくしてあげてね」
と言えばヘルモーズは嬉しそうに頷いた。
【最高上位幹部】
バルバトスとかオリアスとか言った、ソロモンという魔族に仕えている魔族の事。
驚異的な固有能力を有しており、ティアマトでも最高上位幹部には洗脳するのをためらう。
会社で言うとと副社長の位置に当る。
【オリアス】
最高上位幹部の1人。ライオンのような魔族。
【ミネルウァ】
魔術に関する知識に詳しい人。女性。
ティアマトは友好関係に当る。
【異世界アトランダム強制送還術式】
この世界における禁忌魔術の1つで、この世界で最も偉い人物の血の約10分の5の血液を使用によって召喚される術式。ブラックホールもそれと同様。
14000年ぐらい空きがあるのは、ブラックホールがあっても、それらを全く使用しなかったから。