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西の街の不穏な気配

わざと空白を開けている部分があります。




8月31日修正

文章の段落開け

本文の修正

カズキがラーシュを甲斐甲斐しく世話する説明を追加


2月1日修正

誤字修正

本文を修正

あとがきに【旗】を追加

 この異世界の大陸地図は、大雑把に書かれており、西の方角に海があるという事だけが分かる。南は真冬並みの寒さで北は砂漠が広がっており、東方面は緑に覆われているという大雑把にしか書かれているらしく、俺たちのいた地球とは全く異なっている。大陸を書く人が大雑把だったのかどうか不明だが、この異世界の住人は、その地図で世界を知った。


 オレンジ色のバンダナをした盗賊たちと別れて三日後、俺たちはようやく、西の街に辿り着いた。

 大きい城壁の前に立つ鉄製の鎧をまとった門番は、俺たちを見るなり驚愕した。

「もしや、勇者候補として召喚された平和組と獣人か?」

「あ、はい。そうですけど」

 俺が代表して言えば、門番は目を輝かせて、俺たち平和組に握手を交わしたのち

「ようこそ     へ」

「なんだって?」

 街の名前を言ったようなのだが、俺たちは首を傾げた。知らない言語が飛び出して耳に入ったからである。

 門番は、謝罪をしたのち

「こちらの言語を習得していると思っていましたので、すみません。では改めて、ようこそ、漁業の街へ。この街で有名なのは、やはり漁業でしょう! しかし2ヶ月前から不漁続きで、今年の大漁祭は期待ができそうにありません。門前にあるこの黄色の旗は、この大陸での危険度を表しておりまして、赤が一番危険が高く誰も近寄りません。黄色は要注意、緑が安全です」

 と門番は得意げな目をする。

 口は見えないドヤ顔をしているな。

 赤、黄色、緑と言えば信号機だなと俺は思った。多分、スズカとカズキもそう思っているだろう。

「不漁と言っていましたけど、何か問題があるんですか?」

スズカは門番に尋ねた。

「いやあ、昨年の今ごろでしたか。魔王の再来の前兆かどうかは知りませんが、雇っていた軍人兵が一斉に崩れまして」

「軍人兵?」

訊きなれない単語にカズキは首を傾げる。

「ああ、西南にある妖魔が造り出した、夜間専用の対モンスター討伐型の軍人型の兵器でして、兵器と言いましても、土で造られたゴーレムなのですが、雨風にも強くて壊れることは無かったんですが…………」

「それが壊れたと」

 俺がそう言えば門番は首を縦に頷いてから

「ええ。詳しいことは港にいる人に訊けばいいでしょう。言葉も分かると思いますし」

 と門番はそう言って俺たちを中へ招き入れた。

 西の街。

 門番は漁業の街と言ったが、その街に足を踏み入れた突端に匂う塩の匂い。レンガ造りの家に屋根瓦はライトブルーで統一されている。そのレンガの壁には小さな黄色い旗が飾ってあった。街の人は外には出ていないらしく、海の音とにゃーにゃーなくカモメの声だけしか伝わらず静けさを感じた。

 俺たちはまず、門番に言われた港へと足を向けた。


 港に着くと、水色のバンダナをしたノースリーブの水色と白のストライブ柄のタンクトップと青の半ズボンをしている男性たちが、掛け声らしきものをしながら、大きな木箱らしき物を運んでいた。

「あのー! ちょっといいですか?」

 スズカが声を掛けると、船の近くにいた一人の男性がこちらに気づき近寄ってきた。

「嬢ちゃんたち、勇者候補として召喚された平和組と獣人かい?」

「あ、はい」

 服装の違いもあるのか男性は俺たちをじっくり観察するように尋ねれば、スズカは呆気にとられたような声音でそう言った。

「なんか聞きたいことあるんだろうが、今は仕事でな。そうだな…………。そこのベンチに座っててくれよ。30分ぐらいで終わると思うからよ」

 と言われて男が指を指した白色のベンチに向かい腰を下ろす。4人でもまだ余るぐらい横に長い白いベンチだ。

「ラーシュ。喉渇いてないか?」

「大丈夫! オ水。近クで飲ンだ! 塩辛イオ水」

「それ、水じゃなくて塩水だ」

「塩水?」

「塩で造られた水のことだ。美味しくなかっただろ?」

カズキは呆れながらそう言えば、ラーシュは長い爪で眉根の間を数回ほど掻いて

「ナイ!」

 エフェクトに花が舞う笑顔でそう言われた。

 カズキはラーシュに甲斐甲斐しく世話をしている理由について尋ねたら、下に弟と妹たちが3人ほどいるらしく、ラーシュを見ていると世話を焼きたくなるということだった。

 兄弟か。俺はいないが、スズカは姉が3つ離れた姉がいるらしいく、俺は、兄弟っていいよなと呟いたら、カズキとスズカに兄弟のメリットとデメリットの話をされつつ30分後


「嬢ちゃんたち! 待たせたな。場所を移動しよう!」

 スズカが最初に声を掛けた男たちに連れられて入ったのは宿屋兼料理屋の店のようだ。

 中は広く、壁に掛けられた数多くある見たこともない魚の魚拓、丸いテーブルが8つ、長テーブルが5つ。丸いテーブルに椅子が4つ。長テーブルに椅子が両側に8つずつある。あとカウンター席が幾つか存在する。見たこともない観葉植物と水槽に入れられた見たことがない魚が10数匹以上おり優雅に泳いでいた。右側の奥には階段があるため、2階が宿屋だろうと俺は思った。

 床はフローリングだからか

「土足厳禁だからよ。靴箱に靴を入れてスリッパを履いてくれ。獣人の嬢ちゃんは、足の裏を拭いてから上がって、そうだな。カウンター席に座ってて待っててくれや」

 と男はそういいつつキッチンのあるところに移動した。

 俺たちは男に言われた通りカウンター席に座る。

 目の前にあるメニュー表らしき物を開いてみるが、異世界語で読めない文字ばかりだ。数字は共通言語のようだ。

 メニュー表を閉じて元の場所に戻すと同時に男は数人ほどガタイのいい男を連れて戻って来た。


「嬢ちゃんたち、平和組なんだってな! いやー! 待ってたぜ! アンタ達が来るのを! 西の方角へ進んでいるという噂を聞いた時は、俺はァ! 感動したぜ!」

 無料ということでサービスさせられたのは、王宮にいた時に食べたサンドイッチらしきものだ。違うものは中身が生のつみれがぎっしり埋まっているところだろうか。

「感動? ここに着く3日前にも盗賊が同じ様なこと言ってたけど…………」

「おっと、んじゃあ内緒だ! 倒れられちゃあ困るからなァ」

 スズカの言葉に男は、ガハハハッと大声で笑いながらサンドイッチらしきものをかぶりつく。

 一体なんだというんだ。

「それで、早速本題からなんですけど。門番から、軍人兵が崩れたって聞いて来たんですけど」

 スズカは本題に入れば、ガタイのいい男は腕を組んでから神妙な顔をした。

「ああ、去年のこの時期にだな。開発物との妖魔は、何かの予兆だと言っていたが、魔王の到来の時期だとはなァ。昼のモンスターは俺たちにはァ、余裕で倒せるんだが、夜のモンスターは、格段に違うんでねェ、賊やらに任せるんだが、そこらのモンスターより凶暴で手がつけようがなくて、困ってんだ。それに他の奴らも巻き込むもんだから、街の人が闊歩しない理由はそれだ。噂じゃあ、自称勇者御一行の仕業じゃあないかと恐れられている」

 またもや出て来た自称勇者御一行。正式名称は一切不明。そいつらが自称勇者と名乗っていることからそう呼ばれている。

「それで、夜のモンスターは、どのくらい強いんですか?」

 スズカは尋ねると、男は水を飲み終えてから

「軍人兵が20回倒してやっとだな。外のモンスターより強固だが、試しに薪に火をつけて放ったら逃げたから火に弱いだろう。物理攻撃は当たらないが魔法と魔術には弱いと思うな」

 と言って、今度は皿に奇麗に並べられた刺身を口に含んだ。


「あの、それ、俺たちがやっていいですか?」

 俺はそう言うと、男は驚愕した顔をした。

「べ、別に構いやしないが。兄ちゃん。勝つ方法に算段が付いているのか?」

 顔に傷のある男は尋ねた。

「その算段はない。けど、俺は困っている人を放っておけるほど、無能じゃない。俺たちが何故、勇者候補として召喚に選ばれたのかは分からない。けど旅を続けるときにその理由が分かる気がする」

 と言えば、隣に座っていたカズキは立ち上がり

「僕もキオリと同意見だ。このまま見過ごして後味の悪い結果になるのはごめんだからな」

と笑顔を向けてそう言った。

「あたしも、同じ。町の人達が安全に過ごした方がいいし」

「モンスターの気配なラ! アタシに任せてヨ!」

 スズカもラーシュも笑顔でそう言えば、男たちは驚愕した顔のまま、瞬きを数度繰り返してから、突然大声で笑った後

「いやァ! 最高だな! そういうことなら、俺たちも協力するぜ! 改めて自己紹介だ! 俺たちは平和組の世界の言語でいうスター一族だ! 俺はそのスター一族の長男。メンカリナンだ! よろしく頼むぜ!」


【軍人兵】

妖魔が作り出した対モンスター討伐用軍人兵器のこと

ゴーレムで雨風にも強く壊れることはほとんどないと言われている。

夜用、朝用、昼用の3種類いる。


【妖魔】

異世界にいる妖魔のこと西南に住んでいる。

軍人兵を作り出す魔術を使っている。夜型のモンスターの一種。


【西の街】

名称はあるものの、地球にある言語全てにおいて言語化出来ない。

漁業が盛んで暖かい時期に大漁祭が行われる。


【旗】

この世界ではよく見かける旗で、街の危険度を赤、黄色、緑といった色分けでされている。今回西の街は黄色の旗が壁際に掛けられている。

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