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四面楚歌

前回のあらすじ

ティアマトはある実験を行う予定である。

 その翌日。

 1800万年経過して性別は変わっていないものの服装を含めて一新している仲間を見て、平和組と呼ばれた勇者候補たちは、それでも魔王を守るというのかという実験内容を、ティアマトは魔界全体に広めた。ただしヘルモーズには、その話が耳に入らぬようにという伝達付きでもある。

「さて…………1800万年後の彼らを見るとするとしようか。見る分にはこちらの影響は少ないはずだからな…………」

 アラルはそう言ってから瞳の色を漆黒の黒から黄金色へと変化させた。

 アラルの固有能力である未来視である。現在から未来までを見通す固有能力を持っている。それを見てから、ヘルモーズの素体になった精神の持ち主であるキオリの詳細を詳しく知ることが出来た。

「……………どうやら、1800万年後に精神の持ち主と対面することになってしまっているらしい。といっても未来視で会話しているだけのようだが」

「アラルは、そういう所が器用で羨ましいわ。わたしも精神の持ち主と会話したいところなのだけれど、最初の時だけね」

 ティアマトとアラルがいる場所は2人の密会場所である魔界を眺めることが出来る監視塔の屋上にいた。

「羨ましい? 洗脳系の固有能力を持っていてよく言う。魔界に住む人間をほぼ洗脳しているのは知っているぞ」

 アラルは怪訝そうな目でティアマトを見てからそう言った。

「だって、仕方がないじゃない。この地域の壊すと言い出したもの。そうなると今まで保たれているバランスが一気に崩れて人間が魔王を討伐するという大昔に流行ったことが起こることを洗脳で防ぐしか方法がないじゃない。人間はまともに会話に準じるってことをしなさそうだし。何か不幸なことが起きたらすぐ魔王のせいだって平気な顔でそう罵るのだもの」

 ティアマトは興奮気味で憤慨しながら腕を組んでぶつぶつと文句を並べた。

「人間に影響を与えて損害な被害があっている場合なら、魔族側は人間側に好意を示して謝罪して回っているのに、花瓶とか鋭利なものを向けられて殺されるのがオチだからな。人間の複雑な心境よ」

 アラルはティアマトの言葉に同意した。

「で、今度は異世界で人間に被害を与えていないのにも関わらず魔族が活発したからという意味が分からない理由で殺されるって、理不尽にもほどがあるわ」

「たしかにな。それが1800万年も続いているわけだし。…………で、1800万年後に召喚された勇者候補の1人でもあるヘルモーズの精神の持ち主とカズキとスズカ…………だったか。その3人が途中で魔王を討伐してもいいものかという疑問を抱いたところから始まるというわけだな」

ティアマトの言葉に付け足すようにアラルはそう言って真上を見た。

 厚い雲によって覆われてはいるが、その向こうには、この世界と呼ばれる惑星が存在している。

「……………」

 アラルとティアマトはその厚い雲に覆われたこの世界を睨むようにしてから視線を戻し

「で、ティアマト。その残り2人は仲間にしないのか? こっち側にくれば他にも魔王を救おうとする人物が過去に魔王を討伐した者に見せられるだろう?」

 アラルがそう尋ねれば、ティアマトは首を横に振って

「そんなほいほいと精神体を勧誘出来ないわよ。その条件が魔界の人物と知り合いとなって呼び出したのが彼だったんだから。そうでしょう? ヘルちゃん」

 ティアマトはそう言って出入口でもある階段を見つめてからそう言えば、そこから出てきたのはヘルモーズであった。


「洗脳するなら、マシなのにしてくれません?」

「あら、あれほど記憶を書き換えたのにすぐに戻るなんて…………。流石、勇者候補者ね?」

「いいえ、書き換えには戻ってはいないですよ。その精神を分離した感じで、乗っ取っているんで」

 乗っ取るという簡単にいうキオリだが、魔界では乗っ取るのは超弩級の禁忌行為に当たる為、誰も乗っ取りをすることは出来ないのだ。だからヘルモーズの身体でもそれが刻まれている為、乗っ取ることは不可能なはずなんだが…………。

「なんだ。あんたの固有能力は精神干渉系の能力だったのか」

 それが可能なのは精神系の能力だけであるのだが、魔界ではその精神系の能力は存在していないのだ。アラルはそれに気づいてそう言った。

「固有能力? というのは知らないけどさ、俺でも知らない能力をここで発揮するとは…………」

 キオリは魔界用語はからきしであったし魔界の言葉が喋れるわけでもないが肉体の持ち主がこの世界で生まれ育ち言語を生まれた時から訊いていたのか、この身体に入ってから自然と分かるようになっていたのだが…………。

 キオリは大きくため息を付いた。

 北の街の戦闘訓練所で使用したあの謎の技術で造られた幻術で見せられているものだと思っていて油断していたがまさか、過去に…………しかも1800万年前に遡っているって誰が思う。

 キオリの姿にティアマトはニッコリと笑って

「この世界の技術でこちらに来ていたと思っていたのね。でも、そろそろヘルちゃんを返してくれないかしら? ヘルちゃんはこれからいろいろしなくちゃならないことがあって。ほら、貴方を殺すことが出来ないでしょう?」

 目元が笑っていない顔で今日の夕食を語るような口調でそう言われた。その目には威圧がありキオリは押し黙った。

「精神事。俺を殺すつもりってか…………。何を企んでいるか知らないが、少しだけいいことを教えるよ。魔界がこの世界と繋がる理由は、この世界の憎しみと言った負の感情からなっていて、異世界アトランダム召喚術式と似たような術式で魔王をこの世界に呼び出されているんじゃないかってのがこの世界の考えだ。それと俺が異世界アトランダム召喚術式で呼び出されたとき魔王が現れるのに14000年ぐらいの空白がある。それだけは覚えておいてくれ」

 魔界の人間に教えるべきではないことをキオリは教えた。ヘルモーズに戻れば、キオリの精神は諸共消滅することを直感で分かっていたが、それに抗うということはしなかった。

 多勢に無勢というやつだ。いくら抗ったところで、ティアマトの洗脳系の能力はあまりにも逸脱過ぎている。これに勝てるものがいたらぜひとも教えていただきたい。この魔界の魔王が住む城の大多数がこの世界を憎む人物。だから、ヘルモーズにそういう風に植え付けた。

(まさに四面楚歌か…………)

 だから、キオリはティアマトに拘束されても無抵抗であった。それをみたティアマトは笑いながら

「あら、意外と分かっているじゃない。あなたが幾ら逃げようがわたしの能力に勝てるはずがないということも。それに逃れたってその姿では人間に奴隷にされるのがオチだってことも…………ね?」

 嘲笑うかのようにそう言われた。

「そりゃあな。それに貴方が俺がいつ思い出してもいいようにこの服にしているんでしょう? 俺が最初に言った。女装では出歩きたくないってのを尊重している当たりがな」

 キオリがそう言えば、ティアマトは口角を上げた。

「その通り。ああ、早く1800万年後にならないかしら? 目の前で洗脳をする姿を見せてあげたいわ!」

 そう恍惚な顔を浮かべてからキオリと連れティアマトはあの場所へと向かったのを見送ったアラルは、それを黙って見送りつつ

「……………。救える者としては十分な素質のあるやつだな。あの状況で俺たちに情報をくれるあたり、この状況を察したのか。それとも何なのか……」

 そう独り言を呟いてから階段から降りるとアトゥムがいた。

「どうしたんですか? アトゥム様」

「精神の持ち主と対面をする。精神の持ち主の記憶ではそうなっていたはずだ」

 アトゥムの固有能力は時間跳躍。過去から未来まで行き来することが可能な能力である。

「分かりました。いってらっしゃいませ。アトゥム様」

「うむ」

 アトゥムはアラルにそう返事をして時間跳躍をした。

【アラル】

18000年後に異世界の人間によって殺される際に、SSPの公園に来るであろうことは未来視で見ていたのでそこで、キオリの姿を確認していた。

タルタロスの本名。


【素体】

キオリの精神が入る前の入れ物のこと。ヘルモーズがこの素体。魂の宿っていないただの入れ物のことを魔界では素体と呼ぶ。これを創っているのがティアマトなので、ヘルモーズをお母さまかママ呼びさせるのはその理由があるからである。


【精神の持ち主】

キオリのこと。


【多勢に無勢】

少人数うに対して大勢で立ち向かっても勝ち目がないこと。という意味で

キオリ1人に対して人間を憎む魔界が大多数を占めている為、キオリはその言葉を引用した。


【四面楚歌】

助けがなく、周りが敵か反対者であること。という意味で

キオリがティアマトから逃れても魔界に住む人間が魔族を襲うことは明確であったことを判断した。


【キオリ】

魔界に呼ばれた理由が魔界にすむ魔族と知り合いだといこと。本人は何とか精神を分裂させて持ちこたえていたが、この後ティアマトによりその精神を壊されてしまう。


【アトゥム】

時間跳躍が可能な魔王。43話のドラゴン姿のソフィさんで、キオリに握手を求めて挨拶した男はこの人物。

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