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戦を知らない者

前回あらすじ

イザールはある本を見つけてそれをアルデバランに問いただす

 アルデバランとイザールは、アルデバラン本人でも滅多に入らない開かずの間に足を踏み入れた。その入り口は幻惑魔法で壁になっておりキオリ達やエリスはそこに開かずの間があることを知らないのだが、それを知っているのは、今のところイザールだけである。

 だからこそ、アルデバランは開かずの間を選んだ。そこならだれにも邪魔をされずに済むからだ。

「……………………で、用ってのは何だ?」

 開かずの間には、キャビネットとセミダブルベッドとロッキングチェアが2脚のみで、それ以外は何もなかった。何年も使用していないから埃が被っていて少しむせてしまう。窓すらないで空気を入れ替えるとうことも難しかったのだが、魔術で窓を生成して付け入ることだって出来たのだが、アルデバランは敢て、それをしなかった。

 アルデバランは、キャビネットの中に仕舞ってあったらしいろうそくを取り出しそれに明かりを灯してからロッキングチェアに腰を下ろしてそう尋ねた。

 イザールはもう1つのロッキングチェアに座ってから懐から取り出したある1冊の本にアルデバランは眉間に皺を寄せた。

「この本に載っていることなんだ」

 午前中にアルデバランがカズキとスズカに魔王の説得に必要な資料として取り出した【この世界史】と書かれた本である。

 この本は、どういう仕組みか、自動で文章が追加されるという謎の仕組みが入っている。それがこの世界が出来てから今までの歴史までを全て自動で印刷された文字の如く自然に浮かび上がるのだ。しかも最初は50ページに満たないほどだったのが、現在では240万ページに増えている。ちなみに、本を作り出している小人族の仕業ではないらしく、この本が誰が作り出してどのような仕組みで文字が浮かび上がるのかを研究する人物まで現れるぐらいだ。この世界の不思議の内の1つとして数えられている。

 イザールがその本の23ページ目に書かれているある項目に右手人差し指で指し示した。


『4400万年前に、この世界に初となる魔王が到来した際に、その時、世界を統一していた王と異世界に来訪された戦を知らない者3人が、魔王を帰還させた』


 と明記してあった。

「僕は常々、思ったわけだよ。魔王が現れたのは、400万年前だと思っていたし、アルデバランもそう思っていたのだろう? なのに、この本には4400万年前に魔王が来て当時の王と、戦を知らない者ってのは平和組の事だろう? これは、一体どういうことだい? しかもこの本は特定の人物の家にしか置かれていないと訊く物だ」

 イザールはそう尋ねれば、

「待て、落ち着け。落ち着けって。顔が近い!!」

 アルデバランは、ロッキングチェアから立ち上がり段々と近くなるイザールに両手で肩を掴んでからぐいっとロッキングチェアに無理やり座らせる。イザールは抗議をする際に顔が近くなる癖があるのをアルデバランは知っていた為、慣れた手つきだ。

 イザールは強制的座らせたところで我に返り、気恥ずかしそうに謝罪する。

「それを知っていたか。どうかって言われれば、俺は初めてその本を知ったぞ。どこに合ったんだ?」

 アルデバランの困惑している表情をみて、イザールはアルデバランが嘘をついていないことを確認してから

「アルデバランの隣の部屋にあったよ。本当に知らないのかい? この家の前の住人の者が忘れたという分けではないだろう?」

 イザールの言葉にアルデバランは頷いた。

「ああ。この家は、俺が購入して建ててもらった家だ。その時に荷物整理をエリスと一緒にイザールもエルナトも手伝ったのを覚えてないのか?

 確かに、イザールには、頷いた。あの場所はイザールが本を入れたのだが、その時には【この世界史】は無かった。しかも、この本は購入出来るものじゃないのは、この世界の常識になっているぐらい物珍しいものだ。

 謎が謎を呼んだだけに終わった【この世界史】に記載されている4400万年前に現れた魔王の名前や戦を知らない者は一体誰だったのか謎である。


「あの、イザールさん? 大丈夫? 睡眠不足だったり?」

 ドロシーの言葉にイザールは我に返る。

 あの後、本を勝手に持ち出したことには変わりがないので、アルデバランは【この世界史】を取り上げて12時30分になるからさっさと戻れと言われて戻ってきたのは、戻ってきてから上の空で、我に返った。

「いや、ちょっと考え事をね。失礼。えーっと…………。何処まで話したかな?」

 イザールがそう言えば、カズキは

「器を水に満たす方法なんだが…………」

「ああ、そうだね。ある程度の水切れだろうから…………そうだね…………。えーっと、ああ。あった。これだこれ。少し味は不味いかもしれないがこれを飲んでみてくれないかい?」

 カズキの言葉にイザールがそう言って取り出したのは、青紫色の液体が入った細長いガラスの小瓶である蓋が簡単に描ける花の模様になっているのが特徴的だ。

「え、なんですかこれ?」

「水を補うための薬品だよ。依存性はないから安心して飲んでね。味は苦いけど、」

「ゲームでいうところのポーションみたいなものか…………」

 スズカの言葉にイザールがそう言えば付け足すようにカズキがそう言った。

 イザールはカズキの言葉に知らない用語が出てくるので

「そのゲームとかポーションってのはよく分からないが…………。それで、分かるならそう思っていいけど口には出さないでくれると助かるよ」

 若干困惑気味の表情でそう言った。

「あの、イザールさん。あたしはそう言ったものは…………」

「ん? そうなのかい? 君のような個体は初めてだからなぁ…………。アルデバランに少し効いてくるから待っててくれるかい? カズキくんとスズカくんはその薬品を飲むように」

 そう言ってイザールは部屋を出て、地下室にいるアルデバランのところに向かった。


 俺は未だに拘束魔術でゴムボールのようなものを拘束していたのだが、未だにコツがつかめないでいた。四方八方に飛ぶゴムボールをいかに掴めるか悩みどころだ。

「一旦、落ち着いてやれ。とは言われたものの…………」

 昼休憩の時にイザールさんに言われた言葉を思い浮かびながらそう思うが少し難しいような気がする。

≪はは。困惑しているところを悪いが、少しアドバイスを送ろう≫

 脳内で響くような声はドーラだ。

(ドーラ。お前、応援する側じゃなかったのか?)

≪もちろん。応援するさ。ただし、アドバイスを送らないとは言っていないだろう?≫

 屁理屈だな…………と思いつつ

(で? ドーラ。そのアドバイスをってのは?)

≪キオリが捕まえようとしているボールはキオリの世界でいうとピンポン玉ぐらいしかないんだ。それでいて弾力性があり、ゴムボールのように跳ね返ってくる。一方で拘束魔術は、人間の足首以上のものしか固定しないんだ。つまりピンポン玉サイズのゴムボールは足首以上の大きさしか固定しない拘束魔術じゃ、拘束することは不可能ということをアドバイスするよ。あと、拘束魔術は人によって拘束する大きさが変動するんだ。キオリの場合はトウヤの魔力とキオリの魔力が合わさって人間の足首以上の大きさしか拘束できないんだろうね。アルデバランはそれを知っているかどうか不明だが。それじゃ≫

 アドバイスをくれるだけくれて電話を切ったような感じが脳内に響く。これにあと半年慣れなきゃいけないのかと悩んでいると、ソフィさんが来ていた。

「手が止まっているようだけど、大丈夫かい?」

「ああ。なかなか上手く行かなくて考えていたんだ」

「中級魔術では一番難しい部類に入るって言っていたからね。僕も拘束魔術をやりたいけれど、そういうのは僕は出来ないからなぁ…………」

 そう言ってからソフィさんは再び攻撃魔術の練習に戻っていった。

 

【開かずの間】

2階の奥のほうにある部屋で窓はなく既に薄暗いというよりも暗闇そのもの。ロウソクの明かりを灯さなければならない。幻惑魔法で壁にしてあるぐらい使用頻度はない。

キャビネット、セミダブルベッド、ロッキングチェアが2脚しかない。


【戦を知らない者3人】

イザールは初代平和組であると推測している。

この初代平和組は2代目平和組のキオリ達に何らかの関係がある。


【この世界史】

どういう経緯か不明だがページが増えるわ、文字が浮かび上がるわということで研究者が手を出す羽目になった本。突然現れては突然消える謎の仕組み付き。

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