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前回のあらすじ

魔法と魔術の根本的な違いを教わりました。

魔術の基礎は、魔法より高難易度であるというのは、以前にも説明したと思うのだが、魔法は杖なしでは扱うことはこの世界の基本的知識としてあるのだという。それに対して魔術は魔法に必要な杖をなしに扱うことが出来る。ただし魔法より難易度は数十倍以上に跳ね上がる為、この世界では魔術試験を行う必要があるのだ。

 そうこう話しているうちに、鐘の音が聞こえた。

 夕方の合図を知らせる鐘だ。時計を見れば17時丁度である。

「今日は、ここまでだ。まず知識を学びそこから魔術の基礎である、上級魔術を教える。今日来た時間帯でいい。扉は自由に出入りできるようにエリスには話しておく。以上だ」

 アルデバランさんはそう言うので、俺たちがアルデバランさんの部屋から出る前に

「だが、キオリ。お前だけは残れ。というか泊まれいいな」

 半場強制的である。きっと俺の中にある膨大な器のことについて知りたいのだろうだとは思うが…………

「……分かりました」

 トウヤのことを話さなければ魔法や魔術を使わない世界なのに膨大な器を所持して水一杯になっているのかという疑問を解決しなければならない。そうしなければ先に進めないのだ。

「カズキ達には僕が話しておくよ」

 とソフィさんはそう言ったのだが、俺だけ聞こえるように

「僕も、君の器というのが気になるんだ。気が向いたらカズキ達にも話してくれると嬉しいかな?」

 と小声でそう言ってからラーシュを連れて今度こそアルデバランさんの部屋から出て行った。

 廊下側が少し賑やかな喧騒で聞こえなくなるまで、アルデバランさんはずっと無言のまま俺を見つめていた。俺はアルデバランさんに何か話題を振るようなこともせず、見ないように顔を逸らしていた。気まずいだろう。

 遠くから扉が閉まる音が聞こえたと同時にイザールさんがアルデバランさんの自室の扉を開けた。

「おや。君だけは残っているのだね? その不釣り合いな器が理由なのかい? アルデバラン」

 イザールさんは、俺を見てから目を細くしてからアルデバランさんにそう尋ねれば、アルデバランさんは頷いてから、いたずらっ子のような笑みを浮かべて俺を見た。

 俺はそれを真剣に受け止めるしかなかった。


 俺は、アルデバランさんとイザールさんにトール基トウヤと出会ってから死んだあとの話を話した。それが起因して無茶な行動をとるようになった理由も説明した。

 アルデバランさんとイザールさんは、俺の話に黙って聞いくれた。この世界に来てからトウヤのことは話すことはなかったが、話したことによって少しだけ肩の荷が降りた感覚がした。それだけ緊張していたのだろうと俺は思う。

「…………あの。話は終わりましたけど」

 話を終えた状態で俺はそういった。既に10分ぐらい時間が経過しており、それまでに飲み物を口にしつつ話したのだが、未だにアルデバランさんとイザールさんは口を開くことがいなので、俺がそういえば、2人は時が動き出したのように我に返ってから

「ゼウスと名乗る魔王がトールを逃がしたというのが記録上で残っている。その逃がした場所が、キオリ、カズキ、スズカがいる世界だろう。トールはトウヤという名前で生まれ変わって平和な世界で暮らせるようにそこに送ったゼウスも思ったはずだ。実際にトールは人間に近い風貌をしていた。そして、キオリという人間の友人を得た。話からするに、トウヤはトールの時の記憶を持っていたのか?」

 とアルデバランさんは尋ねたので、俺は頷いた。

「夢の話だとは言われましたけど、今の状況と似た内容は聞かされましたけど」

 俺のその言葉にイザールさんとアルデバランさんは頷いた。

「なら、キオリがもつ器に対しても説明がつくな」

「え!? そうなんですか?!」

 俺は思わず驚愕する。今の話にどう関係するのか気になったからだ。

 俺の言葉にイザールさんは、咳払いをしてから

「魔王の記憶を持っていたトウヤくんは、キオリくんと常に一緒に行動していた。というよりもキオリくんに魔王のことを話していたのならその器を与えることが可能なんだ。実際に魔物と魔物同士が交換しているは記録として残っている」

 そう言ってイザールさんが左手をアルデバランさんに向けて差し出せばアルデバランさんは、何かをイザールさんに渡した。イザールさんは、俺を見てから

「そして魔王も器の授与が出来たんだ。魔王がもつ器の大きさは世界を書き換えることが出来るぐらいだと噂されているのだが、その魔王も水をキオリくんに渡したのだと思われる。その量はおよそ半分だ。コップ100杯分あるとすればその50杯をキオリくんがもらっているんだ。本来ならカズキくんやスズカくんと同じようにギリギリな量しかないはずなのにそれだけの器の大きさをしているというわけだよ。どうやって与えたかは不明だけどね。キオリくんは分かるかい?」

 イザールさんにそう聞かれて俺は首を振ってから俺が何かを言う前に腹の虫の音が部屋中に鳴り響いた。

 俺は恥ずかしくて両手で腹を抑えながら赤くなった顔を見られまいとアルデバランさんとイザールさんの方に向けていた顔を逸らして地面の方をみればアルデバランさんとイザールさんは少しだけ笑ってから

「そうだよな。お腹空いているよな。今日は泊まることになっているし夕食にしようか」

 アルデバランさんはそう言って立ち上がった。


 食堂と思われる場所に案内された。

 白い布地にキレイに盛り付けられた料理の数々。中にはご飯と味噌汁が存在していた。

「エルナトから食料を仕送りで送ってくるんだ。俺の母親のように接してくるし年上だから断れないんだよ」

「例えで言うなら反抗期に入ってぐれても母親には頭が上がらないと言った感じだな」

「反抗期って…………」

 おっと心の中で思っていたことが口に出てしまっていた。イザールさんは苦笑いしてアルデバランさんが明らかに落ち込んでしまっている。

「あの、すみません」

「いや、なかなかの例えだと思っただけだ。エルナトが母親か。まぁ確かにそうだよな。年上だし」

 俺の謝罪にアルデバランさんは、肩を竦めてからぶつぶつと呟き始めた。

 俺の隣にエリスさんが座り向かいにアルデバランさんとイザールさんが座った。俺の目の前がイザールさんでエリスさんの目の前にアルデバランさんはが座った感じだ。

「いただきます」

 俺はいつもどおり手を合わせてそういえば、エリスさんとアルデバランさんはイザールさんは両手をくろすさせるように組んでから

「日々の食事に感謝を込めて」

 とほぼ同時に行った。

「あれ? 食事前のそれってなかったような…………?」

 思わず素の口調が出てしまうほど驚いた俺に、イザールさんが

「ああ、それはね。君達平和組が召喚されてから、その食前の行いを目撃している人物が多くなってね。その行為を行う人が一気に広まったんだ。それがつい4日前、王宮で全員にそういう行いをする習慣する命令というか御触れが出された。意味合いはあっているだろう?」

 と左手人差し指を立てながらそう言った。

「なるほど…………」

 俺たちに感化されて定着させられるってのは、少し気恥ずかしいのもあり嬉しいものもあるぐらい複雑な気分になったのは言うまでもない。


「あの。器の大きさは預けられるものによって変化するものなんですか?」

 お腹の虫が鳴る前に言いかけた言葉を食事が終わってまったりしている時にそういえば

「確かに、器の大きさは、与えた分だけ大きくなる仕組みになっている。なぜそうなってしまうのかは未だに判明されていなくてね。研究者同士でも悩みの種となっているんだ」

 イザールさんはそう説明した。

 遠くからエリスさんとアルデバランさんが食器を洗っているのだが、洗い場が近いのか食器の音がカチャカチャと話し声は聞こえないが笑い声が混じって聞こえた。本来なら招かれている俺たちが洗う予定だったのだが、客人だからという理由で断られてしまった。

「トウヤくんが魔王だった時、既に勇者候補の人物たちは、魔王を絶対に討伐するものであると魔王側の認識があったんだ。だから、最初は幼馴染でもあるキオリくんに彼は警戒していたに違いない。どこかで裏切られる可能性も高かっただろうからね。でも、君はトウヤくんの想像を遥かに超える言動をしたんだ。それに救われて自分が魔王だった時の話をしたんじゃないかな?」

 イザールさんは少しほほ笑んでからそう答えた。

 もし、そうならトウヤは、俺は信用に値する人間だと判断されて仲良くなったのだろうか。今は訊けることがないトウヤの問いかけは、今更無理だろうかもしれないが、もし、生きていたらトウヤはどう答えていたのだろうか


【器の授与】

人間同士では一切できない行為であり、器の一部を相手に渡すことが出来る。

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