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魔法と魔術の器

前回のあらすじ

キオリの幼馴染が魔王だった件について。


12月21日修正

前話の矛盾点を修正。

前話→トールが友人だと教えたキオリ

今話→トールが友人だと教えていないキオリ。ここを前の話と嚙み合うようにしました。

 異世界でのそいつの名前は、トールと呼ばれていたらしく、既に明るく好奇心旺盛で誰に対しても優しいというのがアルデバランさんが持っているノートに記載されている詳細である。

 明るく好奇心旺盛なのは、分かるが誰にでも優しいかと言えば、そうでもない。

 俺とカズキ、スズカがいる世界でのそいつの名前はトウヤである。保育園に通っているときにトウヤは自分の名前に疑問を抱いていた。

「僕の名前はトールじゃないの?」

 トオルという名前の男の子が同じ園内にいたのだが、その子の名前が格好いいからというのがトウヤ両親の見解であったのだ。

「ねぇ、キオリ。もし僕が魔王だって言ったらそれでも仲良くしてくれるかな?」

 中学校入学する前日ぐらいの出来事だった。トウヤは俺にそう尋ねた。質問の意図が全く分からなかったが、答えなければここで友情が破綻するのではないかと、自分自身でもよく分からない感覚があった。

「あー…………。その魔王って具体的には何をする奴なんだ?」

「魔王が住む世界では、魔王が世界を統一して人間軍勢と魔王軍勢が和解しているけど、別の異世界に強制的に飛ばされて何もしていないのに殺される魔王かな」

「なんだ。その体験したような言い方は…………」

 その意味は、この世界のことを言っていたのだろう。だが、当時の俺はおとぎ話か夢かアニメの話だと思ってそう捉えた。

「そうだな。それなら、魔王が戻れるように手伝うとかか? 何らかの事情により強制的に魔王が住む世界から飛ばされているんだろ? なら、その戻す理由だってあるはずだぜ。魔王を討伐して世界は平和になりました。めでたしめでたしってのは、実にありきたりで読みなれた文章だろう?」

 とそう言えば、トウヤは目を丸くした後に両手を握ってから

「感動したよ! 君のような人ならきっと救えるよ!」

「感動するところあったのか?」

「あったよ! 魔王を討伐しないで戻れるように手伝うって言っただろう。それなら問題ないと思うんだ」

 そういう意見もあるのかと俺は納得してから

「ちょっと待って。もしもの話だろ? 感情移入が凄いな? 演劇部でも入るつもりか?」

 疑問符が多いのは許してほしい。困惑していたんだ。

「……………………。夢で見たんだよ」

「夢…………ああ。なるほど」

 トウヤは神妙な顔つきをしつつそう言った。それ以上は深く入るなと目が訴えていたので、これ以上は言えなかった。


 服装や体格までは違うが、面影としてトウヤが絵という形で現れた。

 トウヤが過去に話した、あの話は半信半疑ながらも聞き返すことはなかったし、トウヤはそれ以上話を振ることは一切しなかった。夢の話だと自己完結したのかと、あの時は思ったのだが実際は違う。記録としてこの世界に残っている。俺はその真実に目を背けてしまいそうになった。

 だが、背けてはいけないという意思が受け付けられない。そんなことはあり得ないという否定と目の前に証拠があるから信じろという感情が入り混じった感じになっていた。

 だから、俺は

「……………………なんで」

 それしか言えなかった。

 そんな俺をソフィさんとラーシュとアルデバランさんは黙って見つめていたが、

「俺も詳しい事情は詳しいわけではないんだ。だが、トールはお前の幼馴染で親友だった。それは変わらないはずだ。まずは、落ち着け。そして深呼吸をしろ」

 アルデバランさんは、そんな言葉を返す。言われた通りに俺は深呼吸をする。そして頭が少しスッキリした。どうやら俺はアルデバランさんの言う通り思っていた以上に混乱していたようだ。

「詳しい事情は後でするとして、今は訓練の時間だな」

 アルデバランさんはそう言ってから咳払いをした。

「話は戻すが、魔法と魔術は基本同一として異世界でも表現されていることもあるが、この世界では完全に別だと認識してもらいたい。簡単なのは魔法と表現し、難しいのは魔術と表現する。それがこの世界の決まりだ」

「あの…………今更で悪いけど、この世界の名前って何だい?」

 ソフィさんがそう言えば、アルデバランさんは驚愕しつつ

「何って、さっきから言っているだろう。この世界だって」

「……………………はい?」

「だからこの世界ってのが名前だ」

「嘘だろ!?」

 俺がそう言えば部屋が近いのか、カズキ達の声も聞こえてきた。どうやら同じ内容を話していたらしい。

「本当だぞ。なるほど、比喩表現だと思われていたんだな。どおりでこの世界っていう度に変な顔をしていたんだな。納得だよ」

「変な顔になっていたなら教えてくださいよ。あたしたちが恥ずかしい思いをしているじゃないですか!?」

 ラーシュは顔を赤くしながら勘弁してくれっと言わんばかりにそう言った。

 俺も、言ってほしかったよ。今まで尋ねなかった俺たちが悪いんだが…………


「話を戻すぞ。魔法と魔術の違いを説明したが何故、難易度によって魔法か魔術か分かれるのかという理由なんだが、先ほども説明したが体内に保持している魔法又は魔術の差があるのが大きな理由だ。例えて言うならコップ1杯分が魔法の器なら魔術はコップ10杯分ぐらいの差があるんだ。魔法を使えるものが魔術の魔法を使うのにその差を消費しなければならなくなり、結果的に亡くなったという事例が過去に10件以上存在したんだ。だから、魔法と魔術は別であるという意識に変わったんだ。それまでは魔法も魔術も一緒という認識だったというわけだ」

 アルデバランさんは、椅子に座りながら足を組んで話を続けた。今まであっちに行ったりこっちに行ったりとうろちょろしていたのが気になっていたから少しありがたい。

「だが、その魔法又は魔術の器は、人間には1人を除いて認識出来ていないんだ。認識できるのは人間ではない種族ならだれでも認識できる。この世界ではな。だが、アンタ達もその器を見ることが出来ない。それを可視化する表現をしているならともかくだ」

 カズキでいう所のゲーム上で表示されているMPという所だろうかと俺は想像する。

「その器って鍛えれば大きくなったりはします?」

 俺がそう言えば

「いや。それはない。生まれながらに器は決まっているんだ。その魔法又は魔術の力は消費されるが、一晩寝れば元通りに戻る。だが、使用分の魔法又は魔術を使いすぎると死ぬ」

 妙に恐ろしい話だ。体力が満タンなのに魔力が0だと死亡扱い。恐ろしい。

「ん? でも、カズキ達を鍛えるってのは?」

 ふと疑問に思ってそう言えば

「カズキ、スズカ、ドロシーの場合はコップ満杯に入っているわけではないんだ。半分以下かそれよりもっと下か。つまりギリギリの状態だ。魔法、魔術を扱ったことがない人物は大体そのぐらいなんだ。キオリもそうなんだけどなぁ~~? おかしいなぁ~~?」

 怪しいという目をされながらもアルデバランさんは話を続けた。

「そこで、コップに水を一杯いれることなら訓練さえすれば可能なんだ。だが、俺はその訓練方法を知らない。そこで、イザールを呼んだんだ。あいつは、可視化できる唯一の人間だからな」

「ああ、それで1人を除いてと。というとアルデバランはどうやって見ているんだい? そのような発言が多いようだが…………?」

 ソフィさんが首を傾げた。

「俺やエルナト、カノープスと言った特殊名には魔術を応用したものが出来る。ああ、特殊名というのは、生まれながらに魔法、魔術の力が他より凄いってことだ。他の種族では結構みられるんだが、人間では稀に現れてその特殊名を付けられるんだ。イザールもそのうちの1人で逸脱していると言われている。特殊名をもつ人物は俺の知る限り20名以上いるのだが、俺たちもそれを把握しきれているわけではないんだ。その特殊名を持つ者たちが共通して持っているのが、器そのものを見るのではなく、どのくらい入っているのかということが可能なんだ。そうだな…………、たとえて言うなら。イザールは遠くで見てもこの人はどれくらの器かなってのが分かるんだが、俺たち近づいてどれくらいかなって見ることが可能なんだ。器ごと見れるのがイザールとその他種族で限られていて近づいてみるのが俺たち。特殊名を持たない人間は見れないってことだ。これは説明不足だったな。悪かった」

 アルデバランさんはそう言って謝罪した。

【トール】

魔王軍勢の1人で唯一人間の姿をしていた。

ある魔王の1人であるゼウスがトールに魔法を唱えてどこかにやったことにより勇者候補が倒せなかった唯一の魔王と言われている。明るく好奇心旺盛の性格をしていた。


【トウヤ】

魔王トールの人間の姿。平和組がいる世界に転生したとキオリは思っている。

探求心が強く何もかも疑問に抱くことばかりするのは、魔王だった時の名残。


【この世界】

キオリを含む勇者候補一行が召喚された異世界の名前のこと。

この世界、あの世界と2種類ある。

この世とあの世という意味。


【器】

魔法又は魔術を受け取るためのもの。ゲーム上でいうMPであっている。アルデバランさんは水一杯に入ったコップと表現した。

その器は生まれながら大きさと水が入っている。その水は寝れば回復するのだが、水より大きなものを使用して器が何も入っていない場合、いくら元気でも水がないため簡単に死ぬ。


【特殊名】

魔法と魔術の力の差が一般より特殊で秀でている人たちに与えられる名である。アルデバランが知っている限り20名以上の年齢不順の男女がいるらしい。特に人間に生まれることは稀とされており基本トントン族といった種族に多いことが確認されている。

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