キラキラ族
前回のあらすじ
魔王を元の世界に戻すための方法をアルデバランに教えてもらうそうです
「魔法を覚えてもらわなければいけないって言われても、僕とスズカは魔法がそんなに得意ってわけじゃないんですけど」
アルデバランさんの言葉にカズキは申し訳なさそうに言えば、アルデバランさんは呆れるように溜息をついてから
「得意云々って話じゃ魔王は救えないぞ。最初から試してもいないのに無理だって決めつけるなよ。面倒くさいな」
面倒くさいとさらに付け加えつつアルデバランさんはカズキとスズカを見てから
「最高が100最低が0と仮定して全体的のバランスで見れば、スズカとカズキは2人合わせてちょうど20だが、個人だとそれぞれ10ぐらいしかない。キオリは80で。3人合わせてちょうど100となる。だが、キオリ1人での魔法では魔王を全員に同時帰還させることはまず出来ないと思え。勇者召喚された人物全員の協力を得なければならないのだが…………そこのところはどうなんだ?」
呆れるようにそう言い放ってから俺を見たので、俺はエルフとハーフエルフ以外は協力関係にあると話せば、アルデバランさんは腕を組んでから
「なるほど。あの2組の説得か」
「一応、魔術師の人たちが説得に当ってはいるんですが、そう簡単に納得出来るわけがないという話を訊きました」
俺の説明にアルデバランさんは少し悩んだのち
「そのうち、納得せざる終えない状況がくるだろうな。その時に話し合いをいずれ平和組を含めて話し合いをすることになるだろうな。それがいつになるがわからんが、その時にお前たちには魔王を元の世界に戻すための魔法を君達から残りの人物に教えればいいだけの話だ。カズキとスズカも覚えなければ魔王を帰還させるのは夢のまた夢だ。それは分かっているな?」
そういってスズカとカズキを見た。スズカとカズキは真剣な顔つきで頷いた。
「なら、それでいい。不平不満はあとから言ってくれ。さて、その方法なんだが」
と続きを言う前に遠くから鐘の音が聞こえた。
「……………っち。もう夕方か。平和組に連れがいるはずだ。今度はそいつを連れて、明日の朝こちらにきてくれ。昼食はこちらで用意してやる。説明は以上だ」
アルデバランさんは顔を歪めてから舌打ちをしたのち、出ていくように促した。
いいところで止められた俺たちは残念に思いながらも。アルデバランさんに挨拶をしたのちアルデバランさんの個室から出れば入り口付近で待機していたらしいエリスさんに案内されて外に出てから
「アルデバラン様は、時間を気にする方なので、鐘が鳴るとやる気が削れるみたいですから気にしないでください」
と言われて俺たちが見えなくなるまで見送られた。
宿屋に戻れば、ソフィさん達は戻ってきてはいたが、かなり疲弊しきっていた。
「俺たちから見ても、多分赤の他人が見ても、あんたたちが疲弊しきっているように見えるんだが、どうしたんだ?」
俺たちはソフィさん達の向かいに座りつつそう尋ねてみた。
「厄災事に巻き込まれてね。別に大したことじゃないのだが、僕とカズキとキオリが住んでいる部屋で夜中に点滅していたのだが、それについて僕たちは言及したというわけさ」
「でも、ちょうど明かりが見える位置にある農業全般に話を訊いてみても、そんなものはしてないっていうんだよ」
「そこから明かりがある、明かりがない! の押し問答だよ。そこまでは良かったんだけど、農場方面の明かりが点滅しているのを知っているのは、農場主以外全員で、圧倒的に不利な状況にあるのにも関わらず、農場主が言うことを訊いてくれなくてそれで住民同士の争いになってしまってアタシたちはそれを止めてました。昼食抜きですよ…………」
上からソフィさん、ラーシュ、ドロシーの順で喋ってくれたのだが、上半身を机に預けて横になってから説明した。上半身を起こすのが億劫になるぐらいの惨事だったのだろう。
「思ったんだが、この異世界は電化製品は存在しないはずんだんが、どうやって明かりを付けてるんだ?」
俺の言葉にそれを聞いていた女将さんは両手に鍋をもって上半身を机の上に預けていたソフィさんたちに邪魔だよといいつつ鍋を机の上に載せてから
「夜間作業の場合は、蝋燭を用いるんだけどね。その場合は光を遮断する魔法を使うことがシュレディンガーで決まっているのだけど、それが一切ないから民宿で苦情が出たのよ。一応改善策として遮断魔法を使用しているのだけど、それでも漏れているみたいでそれが丸1日の抗議の結果。最高位のアルデバランさんが調べてくれるっていうからそれ待ちよ」
そう言ってから今日は、西の街でとれた魚で造った鍋料理よ! とソフィさんからドロシーまで背中をバシンという音を叩きながら店の奥へと引っ込んだ。
ちょっと待てよと俺は思った。もしかして最悪なタイミングで訪れたんじゃないかと一瞬不安になってしまった。こうなると気になってしまいキリが無い。明日の朝にソフィさん達を連れてアルデバランさんの家に向かわなければいけないのでその時に謝罪でもしとこうと俺は思った。
煮えたてぐつぐつという音が鳴りながら受け皿と箸を手に取って夕食を食べつつ、ソフィさん達に、朝方からアルデバランさんの家に訪れるようにといえば、
「分かった。朝食を食べ終えてからアルデバランの家に訪れるようか」
そう言ってソフィさんはつみれを食べた。
風呂から上がり寝ようとする前に大きく欠伸を立てつつそろそろ眠ろうかと準備していた時にドンという音とともに地響きがした。
「!? な、なんだ!?」
すでに睡魔に負けて眠っていたカズキは上半身を起こしてからそう叫ぶ。
「様子を見てくる。カズキはその場に待機していてくれ」
「お、おう」
カズキにそう指示した俺は一階に降りてから料理屋兼宿屋から出ると、険しい顔で腕を組んでいるアルデバランさんと、なぜか地面に座っている全身が光っている謎の生命体がいた。
「アルデバランさん? その、これは?」
俺がそう声をかける前に農場主である男がそう尋ねれば、アルデバランさんは、農場主を見ながら
「こいつが原因だ。キラキラ族という王宮側でも認識していない種族の一種だ。特徴として全身光っているのが特徴だな。あの能面だ。こいつがあんたの農場にある畑で育っていた野菜を盗んだりしていたらしい。遮断魔法じゃ効かないはずだ。遮断魔法はろうそくの明かりまでなら消せる威力だが、キラキラ族の光は遮断することが難しかったんだろう。だから点滅していた。こいつは昼間でも普通に闊歩しているんだが、昼間だと逆に姿が見えなくなってしまうということだ。このキラキラ族は危害を加えるつもりはないが、食料が欲しいということだ」
アルデバランさんがそう言えばキラキラ族といわれた種族は首を縦に動かした。
「そうか…………」
男は俺たちをみてから謝罪した。
「迷惑を掛けてすまなかった」
「君が謝ることじゃないよ。キラキラ族に住処があるのかい?」
「住処はないらしい。お互い認識するのも初めてだと言っているぐらいだからな?」
口がないのにどこで分かるんだ? と俺は首を傾げた。
「口があるようには見えないけど…………?」
女性がそう言えば
「念話だ」
「ああ…………」
念話で納得できるぐらい便利だ。すごいな。
「うむ…………それなら、俺のところに住まないか? 夜間作業を行うんだが、君達が居てくればはかどると思うんだ。もちろんその分の食料を別に用意するからそれならもっていってもかまわないよ」
男はそう言う。寛容だなと俺は思ったがキラキラ族は首を縦に必死に動かした。もげやしないかと不安になるぐらいだ。
「よし! 決まりだ! これからよろしく頼むぞ」
男がそう言えば彼らは嬉しそうに踊っていた。
「感謝の舞いだそうだ。筆記は可能だから筆記のやり取りを次からしてくれ。そして俺は寝る」
アルデバランさんはそう言って家に戻っていったので俺たちも戻ってカズキたちに経緯を話してから布団にもぐった。
【遮断魔法】
光を遮断することが出来る魔法。
透明の膜のようなもので覆う。
【キラキラ族】
全身光っているカオナシの種族のことで、王宮側では発見されていない。
遮断魔法でも効かないほどの光を放っているのが特徴。