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東の街の滞在1日目

前回のあらすじ

スズカとカズキも吸血鬼と契約しました。

 スズカとカズキが元に戻ったのは翌日の早朝だった。

「カズキ。よく眠れたか?」

「んー…………。多分?」

「多分ってなんだよ」

 俺は苦笑いをしながらカーテンを開ける。シュレディンガーの宿屋は他の街ではなかったカーテンが付いていた。夜中にも農作業をするらしく明るくて眠れないといった要望が入ったためだと女将は説明してくれたのだが、どれだけ明るのかと試しにカーテンを開けて寝てみたら窓際に漏れる光が消えたりついたりの繰り返しだったので流石にイラついてカーテンを勢い良く閉めたのを覚えている。

 あの点滅がなんだったのかは、気にはなるが覗き込もうとは思わなかった。いろいろあって疲れていたからな。

「今日もいい天気だと思いたいが、今日は曇りだな。東の街は気候が切り替わるのか…………」

「ちょっといいかな? キオリ?」

「なんだ?」

「僕、実は…………」

 カズキが何かを言うその時、散歩から帰ってきたらしいソフィさんが戻ってきた。

「おはよう! 2人とも。今日の朝食は温野菜スープとたしかえーっと、ロールキャベツ? らしいよ。…………って。邪魔をしたかい?」

 ソフィさんはそう言って首を傾げる。

「……………大した話じゃないんで、じゃ、キオリ先に言っているからな」

≪このドラゴン。勘がいいみたいだぞ≫

 カズキが部屋から去ってからドーラは嬉しそうに笑いながら語りかけてきた。

 朝食を食べている最中でも食べ終えてからもスズカとカズキは落ち着きがなかった。俺のことをちらっと見てはそらしたりの繰り返し。時には、カズキとスズカはこそこそと何かを話していた。そんな2人に気を使ったのかソフィさんは、

「スズカとカズキは、キオリに話したいことがあるのなら、今日はアルデバランに会うのはやめて明日、アルデバランに会おう。アルデバランに逢って話すのに内容が入ってこないのは不便だろう?」

 そう言ってきて席を立ってから

「僕たちは、東の街を観光してくるよ」

 俺にそう声をかけてから、ドロシーとラーシュを連れて、料理屋兼宿屋から出て行った。連れ去られたドロシーとラーシュは、困惑しながらも大人しくついて行ったぐらいだ。

「で、スズカとカズキ。俺に何の用だ? 人気のない場所で話すか?」

 俺がそう言えばスズカとカズキは、黙ってうなずいた。

 

 人気のない場所といわれても俺は、東の街を隈なく探検したわけでもないのでどれが人気のない場所なのか見当が付かないので、街から少し離れて人が使用した形跡がない洋館を目にしてそこに向かうことにした。

 誰かが足を踏み入れた形跡がないってのは生い茂っている草とか雰囲気で分かる。その洋館の近くに偶々あった丸太に座りスズカとカズキはアンバランスに近くに落ちていた少し大きめの石に座った。

「話ってなんだ?」

 最初に切り出したのは俺だ。スズカとカズキはお互いに顔を見合わせた後アイコンタクトを交わして頷いた後、スズカは口を開く

「キオリくんも吸血鬼と契約したの?」

 ストレートに訊いてきたなと俺は思った。俺はスズカの言葉に頷いてから

「スズカとカズキも吸血鬼と契約したのか?」

 といえばスズカとカズキは頭がもげるんじゃないかと思うほど勢いよく頷いてから安堵した顔を浮かべた。

「そうなんだ。あたしとカズキくんも昨日契約したばかりなんだ。えーっと、吸血鬼同士ってお互い顔を合わせられたっけ?」

 とスズカは不思議そうな顔をすると、手品師が手からバラを取り出すときのようなポムだがポンだかという音で半透明のような形で俺たちの隣に吸血鬼が現れた。

≪やぁ。二人とも3日ぶりの再会だね?≫

≪君は元気そうだな≫

≪それが、彼の取り柄じゃないのかい?≫

 上からドーラとカズキの吸血鬼とスズカの吸血鬼となっている。

≪僕はドーラという名前だよ。君達2人は?≫

≪僕は、ヴァンだな。ブじゃないぞウに濁点がつくほうのヴァンだぞ。ブァンじゃなくてヴァンだ≫

≪僕はキューだよ。かわいいだろう?≫

「落ち着いたか? ドーラ」

≪うむ。落ち着いたぞ!≫

 仲間の再会を嬉しそうにしながらドーラは頷いた。

「あ! そうだ。あたし、吸血鬼と契約することでメリットとデメリットを知りたいけどいいかな?」

 スズカがそう言えば

≪それについてか。吸血鬼と契約の契約時のメリットは、基本的に人間の寿命が大幅に増える。それは異世界の人間でも同じ現象が起こる。元の世界に戻った際に僕たちは一緒に元の世界へ行くことは出来なくそのまま消失といった形となる。見た目は若いが中身が老けていたり、見た目は老けているが中身が若いのは、吸血鬼と契約したからだと思っていい。あと若さが持続できるとかか。デメリットは、ただいるだけで何の役にも立たないってことだ≫

 ヴァンは、デメリットのほうだけはやけっぱちだと言わんばかりにそう言った。寧ろ開き直っている。

「え? えーっと、体力が衰えるとか、身体の一部が使えなくなるとかじゃなくて?」

 カズキはポカーンとしながらそう言えば

≪人間と僕たち吸血鬼は、あくまでも友好的な関係を築くために生まれたり消失したりしているんだ。異世界から来た人外には、知られてはならないという吸血鬼の決まり事があるんだ。もちろんこの世界のモンスターとか魔物とかもそれらに分類する決まりがある。理由としては、僕たちを狩る存在が現れるからさ。そうなると僕たち吸血鬼が狩られた場合人間も並列して何かしらの病気か事故とかで亡くなるんだ。だから目立った外傷などは避ける必要があるんだ。デメリットが僕たちが役に立たないのは、それが理由なんだ≫

 キューは、申し訳なさそうな顔でそう答えた。

「殺されると俺たちも死ぬってことか? それはデメリットになるんじゃないのか?」

 と俺がそう言えば、

≪契約前のデメリットならそうだね。だけど契約時のデメリットには入らないだろうね。僕たちが見えるのは吸血鬼と契約した者同士。殺されるということはないというのは、君達でも感覚で分かるだろう?≫

 ドーラにそう言われて俺たちは、頷いた。

 なんとなくだが、吸血鬼たちが殺されることはないというのが感覚である。どういう感覚なのかというのは訊かないでくれ。よく分からないとしか言いようがない感情だ。保護欲? 子を持つ親の気持ち? 好きなものを他の奴に横取りされたような消失した気持ちじゃないのは確かだ。やはりよくわからない感覚だ。

「でもなんで契約に必要な事項が無意識的に取る行動なんだ?」

≪前にも話したとは思うが、それは僕たちでも分からない。なぜそれが契約になるのかは未だに解明されていない1つとして数えられている。僕たちを調べる研究者もいるようだがその解明には時間が幾らあっても足りないぐらい足りないのだ。以前にキオリがフォレスト・ティータイムで迷子族を調べていた研究者と逢ったことがあるだろう? その彼も迷子族に長[おさ]がいることさえ分かっていなかっただろう? それと同じ理由なのだ。ほかにも何故、人間と吸血鬼は同じ数だけ存在するのか。何故吸血鬼が殺されると、それに関連するように人間が死ぬのかという疑問もある。しかし、どれも未だに解明されていない。僕たちの知識は、契約する人間の知識と真逆で育ってしまうのだ。これは何でも知っているとされている小人族さえ驚いたことだ≫

 ヴァンはそう言ってカズキをちらりと見た。

≪見ての通り。僕はカズキの持つ知識とは逆に分析力に長けていたりする≫

「性格も正反対のような気がするんだけど、気のせい?」

 スズカの言葉に

≪気のせいじゃないね。契約者の性格とは一致しないように僕たちは生まれてくるんだ。僕の場合は、明るくポジティブで何事にもくじけないメンタル持ちってことになるのかな?≫

「あれ、そうなるとあたし結構何事にもくじけるメンタル持ちってことなの?」

 スズカはそのことに関して驚愕した。

「ということは、ドーラのその不真面目でいじめっこな性格はキオリの反対の性格なら」

 カズキの言葉に

≪まぁ、いじめを許さない真面目な性格ってことだろうね?≫

 ドーラがニヤニヤしながら俺を見てみた。俺の正反対の性格に俺は若干溜息をついてから

「吸血鬼をさらすだけで性格を当てられるのってある意味恐怖だけどな」

 そう言えばスズカとカズキは同意するように頷きつつ溜息をついた。

【東の街宿屋】

いつも通り料理屋兼宿屋で3階建て。

夜中に農作業をやっているのだが光が点滅の原因でカーテンがしかれる。


【東の街】

古ぼけた洋館と中央に大きな銅像がある。

通称、農業の街で野菜とかの農作物を育てている。


【洋館】

全く使用されていない洋館で窓ガラスが割れていたり、屋根に穴が空いたりしているのだが取り壊すことはないのは、村の待ち合わせの目印として使われ始めた為。

何とか取り壊そうと大きな銅像を建てるが人気がないのか使われていない。


【ヴァン】

ヴァンパイアのヴァンから来ている。カズキ専用の吸血鬼。基本的に冷静沈着。分析力もある。

自身の名前の発音に要注意するように促した。


【キュー】

ドラキュラのキュから。スズカ専用の吸血鬼。

キオリが吸血鬼の住む住処で行き倒れていたのはこの子。

基本的に明るく前向き。何事にもくじけないメンタルの強さを持っている。


【吸血鬼の契約】

メリットとして人間の寿命が大幅に伸びており、約2000年ほど長生きが出来る。契約者が死ねば吸血鬼は消失するし異世界から元の世界に戻っても消失する。デメリットは、何故契約したのかと思うほど、何の役にも立たない。ということだけ。

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