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契約者

前回のあらすじ

キオリは、どこかにいて、キオリに扮した人物が現れた

 黒い角、薄紫色の肌とギザギザな歯、黒い大きな翼に長い尻尾。見た目そのものは、悪魔と評しても何も変わりもなかった。

「でも、残念。悪魔ではありません。この世界には悪魔というのは、種族的にはいるだろうけどこの世界では発見していないからねぇ?」

 そんなことを口に出していたらしいカズキの言葉に彼はそう答えた。

「じゃあ、誰なんですか? キオリはどこに行ったんですか?」

 ラーシュは警戒しながらも、彼に問いただした。敬語になっているのは、驚きと恐怖が入り混じった感情になっているからである。

 彼は周りを見渡した後、肩をすくめてから首を大きく横に振った。

「それは僕からは答えられないなぁ。前者の質問も後者の質問も。両方共だ。そういう契約をしてしまっている」

 契約という言葉が出てきたが、それを追求しても彼は口を割ることはなかった。

「いつ、入れ替わったのかについてヒントを上げよう。キオリと呼ばれる青年? が、小石に躓いて倒れた時だよ。そこは大正解。おめでとう」

「どうしてだろう…………正解するときは凄くうれしいはずなのに、嬉しくない」

 スズカは明後日の方向をみながらそう呟いた。

 彼は、そのままカズキ達と同行することになったのだが、その理由として

「入れ替わりの代償として、入れ替わった人物に同行者がいた場合、その同行者に着いていくという契約の1つにあるんだ。キオリと呼ばれる青年? が戻った暁には何かしらの恩恵が与えられるのも付け加えて教えておこう」

 キオリのところで首をかしげているのは、女顔であるキオリが本当に男なのかという疑問を持ち合わせているからである。



 一方のキオリは、石タイルと石材で造られていると思われる場所を壁伝いで出口を探っていたのだが、

「ん? 戻ったか?」

 どうやら同じ壁をグルグルと回っていたようだ。最初に気づけとは思うが松明で照らされている光は先が見えないほど心もとないのが現状だ。

「慎重に進むべきか? それとも、猪突猛進の如く迷わず進むか? いや、後者の方はだめだな。ここは、俺の知らない場所だ。慎重に進むべきだろうな」

 独り言をぶつぶつと呟きつつ、足元をみつつ慎重に進むことにした。

 しばらく前に向かって進むと倒れている人とその周りをウロチョロするコウモリがいた。そのコウモリは俺に気付くと、俺のところに向かってから何かを懇願するように羽をバタバタとする。

「えーっと、ご主人様を助けろってことか?」

 なんとなくでそう言えば、コウモリの目はキラキラ輝いた。正解のようだ。

 俺は、その倒れている人を揺すったり頬を叩いたりしてみたが反応がない。それならとズボンの前ポケットにしまっていた麻袋の中からパンを取りして匂いに反応するかどうかを確認したが、数十分経っても反応がないので、他に反応するものを取り出したら生肉で眉が少しだけ動いてから、急に身体を起こしてからその生肉を奪い、貪るように食べ始めてから空いた手を出してきたので、まだ生肉が欲しいのかと思い麻袋にある分の生肉を全部出して渡した。わんこそばみたいだなと思いつつ、差し伸べられなくなるまで渡すこと感覚で30分ほど。

「美味しかったー! ん? でもなんで生肉が?」

 どうやら俺の存在を認知していないらしいが小さいコウモリは俺の周りを飛びキーキーと甲高い鳴き声で鳴いている。

「ん? そこに誰かいるの?」

 俺が答える前に小さなコウモリは鳴く。

「嗚呼。なるほど? そこにいるのだね? 僕は目が見えないんだ。聴覚で君のことがわかるよ。君が僕に食事を与えてくれた。えーっと人間だね?」

「ああ。あんたは人間じゃないのか?」

 俺がそう尋ねれば、その人物は頷いた。

「そうだね。この世界では未だに目撃されていない吸血鬼という種族だよ。好きなものは赤い食べ物。血に固執しているわけでもない吸血鬼さ」

「それは、吸血鬼と言えるのか?」

「どうだろう? 君はこの世界の人間じゃないのかい?」

「ああ。えーっと実は…………」

 俺は吸血鬼であるその人に、別の異世界からやってきた勇者候補であることと魔王を討伐するように依頼されたが実は魔王を救うことで呼ばれた者であるということを説明したら吸血鬼であるその人は頷いてから

「なるほど。異世界の勇者候補か。ならば、君がここにいる理由も納得できる。少しだけ時間をくれないかな?」

 と言って吸血鬼は壁を杖代わりにして立ち上がり小さいコウモリの鳴く音を頼りに歩き始めた。


 吸血鬼であるその人が戻ってきたのは、感覚的に数十分後ぐらいだ。手には大量の本と紙がありもう1人の吸血鬼もやってきていた。

「ああ。君がここの迷い人の勇者候補であるか」

「あ、はい」

 その人物は俺より筋肉質な体系をしていて身長も俺より1頭身ほど高かった。彼はその人に座るように促して彼も隣に座ってから本を一冊取り出しそれをめくってからある程度のページで止まった。

「えーっと…………。平和組と呼ばれる勇者候補の1人で間違いないか?」

「あ、はい。そうです」

「敬語は抜けていい。緊張しているな。腹でも空かしているのなら、赤色以外なら食べてくれ」

 と言われて少し緊張をほぐしてからパンを口に運んで食べた。

「食べながらでも訊いてくれ。君は無意識的に、ある吸血鬼と契約を結んだことになっている。君はそれに伴って契約者である君がこちらに来ている」

「無意識的に契約?」

「本人にとっては自覚がない行動が、引き金となり吸血鬼と契約を交わすことが出来る。ただし、その無意識的行動は、僕たちでも分からない。習慣的な行動なのかそれとも無意識的にやっている行動なのかがわからない。僕たち2人は未契約者としてここにいる」

 いきなり契約とか訳の分からないものが出てきたぞ。そんなのソフィさん達にも訊いたことがないが…………。

「ちなみにだが、この契約が結べるのは人間だけなのだ。ハーフエルフと言った人外とは契約は出来ない。僕たちには、僕たちのパートナーとして呼べる人物がいる。ただし、君から吸血鬼と契約したということは口外することは出来ないし、僕たちもそれをするのは違反行為として示されている。モンスターに吸血鬼とか悪魔と言った者が存在しない理由がそれだ」

 確かにモンスターと戦う際には、骨人間はいたもののサキュバスといった肉体のある人間に似ているモンスターは一度も戦ったことがない。

 その理由に俺は納得すると

「でも、なんで俺はここにいるんだ?」

「契約内容が定まっていないからだ。パートナーとの契約上、僕たちは名前を与えられる。僕たち個人の名前がないのが主な理由だ。僕たちがここにいるのは、平和組の残り2組とも契約を済ませるためだ。しかし契約の引き金である無意識的にとる行動は分からないのだがな」

 名前がないのか…………。そう思っていると最初にあった吸血鬼の人が1枚の紙と羽ペンを俺に渡す。

「そこに契約者の名前と吸血鬼の名前を決めてくれ。名前個人は好きなようにしていい。ある程度の従者として君に従えるだろう。ああ、君達の言語で頼む。それが契約上の決まりなのでな。名前はフルネームで頼むぞ」

 そう言われて俺は自分の名前と吸血鬼の名前を書くことにしたのだが。何にしようか。逢ったこともない吸血鬼の名前を考えなければいけないほど、俺としては悩みどころだ。感覚的に数分ぐらい悩んでからカタカナで名前を書いた。

「で、下に、契約上の決まりを書くんだ。君とその吸血鬼に関する必要最低限の契約書をな」

 と言われたので、俺はそれを書き記した。


『1.契約者本人が契約者の同行者と10m以上離れた場合、その同行者に着いていくこと

 2.契約者と吸血鬼は、同じ契約者同士である人物以外に互いのことを喋ってはならない。

 3.契約者と吸血鬼は隠し事は一切しなく、お互いの秘密を共存するとともに、戦闘で契約者又は吸血鬼が前線離脱した場合、相手の力を振るえることが可能とする』


 とした。

【吸血鬼】

この異世界では、血を吸わないのだが吸血鬼と呼ばれている人種でコウモリを従者として従えている。好きなものは赤いもの全般だが辛い物は苦手。全員の一人称が「僕」

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