自主訓練
前回のあらすじ
自主練を行うことになった
11月26日
中途半端だった文章を大幅に修正+追加。
自主訓練の場所として選ばれたのは、公園より少し離れた誰も使われていない広場であるのだが、草とかは伸びきっておらず所々に綺麗にした痕跡が残っていた。
「昨日、ここを見つけてね。軽く掃除してたら、村長さんが、使わないから訓練にでも使ってくれって許可をもらったから、ここで訓練しようかなって思ってね」
とラーシュは、少し誇らしげにそう言った。
「北の街で訓練をしたとはいえ、東の街へ向かう途中の戦闘では、平和組は3割ほど、逃げ腰気味だから、それを無くすことから始めよう。例えば、味方が相手によって操られた場合、キオリでも説得は難しいだろう。説得をして救えるほど、これまでのご都合主義みたいなものはもう存在しないと頭の中で考えて行動しようか」
ソフィさんは、今までに注意点を指摘しながら、そう言った。
確かに、少しだけ逃げ腰になっていたのかもしれない。モンスターの中には人型もあるので、それで少し逃げ腰気味になっていたのが表に出てしまっていたのか…………。俺なりには、そうならないように気を付けてたつもりだったんだが、まだまだってところか。
「別に慣れろと言っているわけではなよ。逃げるのも選択肢の1つだが、逃げ腰の状態だと、敵が隙を見て、襲い掛かってくるってことも考えられることなんだ。その選択肢を潰していくのが今回の訓練だ。それに、僕やドロシーだって逃げ腰気味だからね」
というソフィさんの言葉に、俺たちは驚く。
「え!? そうなんですか!?」
スズカがそう言えば、ドロシーは頷いた。
「そりゃあ、そうだよ。元の世界でも戦闘はあるけれど、自分より数十倍上の敵と戦う時や自分と同じ相手や、自分より下の相手と戦う時も怖い時があるからね。その場合は相手に悟られないようにするのが一番いいんだ。ソフィもそうでしょ?」
ドロシーがそう言えば、ソフィさんは頷く。
「確かにね。僕の場合は、少し特殊だけど…………幾千とも言える魔獣の数々、滅ぼしては、復活する常に恐怖に怯えながら生活しているようなものだ。逃げ出したい気持ちもあるけれど、それをしたら僕の住む世界は救われないってことが分かっている。後はドロシーが言ったように相手に悟られないようにすればいいだけさ。平和組も相手に悟られないようにする訓練でもしようか」
難易度が高いことをおっしゃる。
自主訓練開始だ。
俺たち平和組は、ドロシー、ラーシュ、ソフィさんの2人1組になって、訓練を行うことになった。俺は同じ接近戦同士ということで、ソフィさんと一緒に訓練することになった。
「僕が攻撃を受け止めるから全力で襲い掛かってくるといい」
そう言われて俺は深呼吸を数回繰り返し、サーベルを構えて走り出した。
「その意気込みと勢いは、素晴らしいがまだ隙があるぞ!」
そう言って刃を俺の眉間の間に刺さるか刺さらないかの距離でそう言った。それは、あまりにも一瞬で、それが目と鼻の先にあることに、俺は思わず息を止めてしまう。それを見たソフィさんは、刃を地面に下したのを見て、俺は息を吐いた。
「モンスターは、それをお構いなしにやってくるんだ。もしかしたら、ブラックホールに強制的に連れてこられた魔王も警戒心を強めて戦わざる終えないだろう。その場合、キオリはどうする?」
ソフィさんの言葉に、俺は思わず息が詰まる思いだった。
確かに、どこかに行った魔王が消えて戻ってきたら魔王が死んでいて、詳しく事情を知らないものからすれば、魔王がいる世界では大惨事そのものだ。誰がやったんだとかいう大騒ぎの問題では済まないだろう…………。だからこそ警戒心を強めてくる。殺されるぐらいなた戦うしかない。生きるためには戦うしかない。過去に逢った戦争に戦う市民もそんな気持ちだったのだろう。俺たちは、それを話を聞くことで後世に伝えることしか出来ない。それと同じように、魔王のいる世界は後世に伝えて対策を練ったに違いない。
「……………………戦って伝えるしかないです」
長い問答の末、俺はそう答えた。今の俺にはそれしか持ち合わせていなかったのだ。
ソフィさんは、そんな俺を見てから頷きつつ
「それでいい。精一杯悩んで答えを見つけるといい。そして、まとまった答えを他の勇者候補にも伝えなくてはならない。僕たちが囚われた時のようにね。さ、次も同じのをしてみようか。隙を見せないように意識をするんだよ」
優しい声音でそう言ってから、軽く手を叩いて再会させる。
「後方支援で全体攻撃ってのは、結構便利だと思うの」
モーニングスターの鎖の部分を持ちながらブンブンと振り回しつつラーシュはそう言った。
「アタシもこれを扱えるのに結構苦労したんだよ。想定していた方向に行かないときとか、木に引っ掛かって周りに迷惑を掛けてしまうこととか。カズキの戦闘は、まさにそんな感じなんだよ。近距離戦闘のキオリとソフィでも、そうなってしまった場合かばうことは難しいんだよね。だからアタシは小型ナイフを懐に入れているよ」
そう言ってラーシュは懐から小型のナイフを取り出した。
「身を守るために戦う為の最終手段だよ。似たタイプの小型ナイフを買ったからこれを使うといいよ」
ラーシュは、そう言ってカズキに小型ナイフを渡した。
カズキはそれを手にしてからじっくり観察した。
「そうだね…………。。常に身に着けているところに入れておくといいよ。戦闘の時に取り出しやすいようにね」
ラーシュはカズキにそうアドバイスを送ってから
「その小型ナイフで一度訓練をしようか」
「! はい!」
手に馴染みやすいように、モーニングスターを一旦邪魔にならない場所に置いて、カズキはナイフを利き手である左手に握って訓練を開始した。
一方のスズカとドロシー組みもカズキと同じ問題を抱えていた。
「ブーメランだと戻ってくるときに襲ってくる可能性もあるよね。その隙が出てきて逃げ腰になってしまうかもね。そうならないためにも、一度じっくり考えようか」
ドロシーはそう言って、スズカに地面に座るように促した。
「アタシの場合は、一応近距離も遠距離も出来るようなっているから問題ないけれど、スズカはそうじゃないでしょ? ブーメランを投げてもし敵が襲ってきた場合、スズカはどう対処する? ただし、カズキとキオリは手が離せない状態だと仮定してね」
ドロシーの言葉にスズカは、悩みながら腕を組んで考えて数十分して顔を青くして項垂れた。
「多分、殺される」
とやけに小さく、聞き取りずらいの音量でスズカはそう言ったのだが、ドロシーには聞こえたようで、首を縦に頷いてから
「怖がらなくていいよ。それが当たり前。克服しなくていいから。そう言った悩みは、アタシかラーシュかソフィに話したらいいよ。話しにくいっていうのならカズキやキオリだっているからね。特にキオリなんかは、最善策を出してきそうだよ」
と楽しくそれぞれがスズカの問いになんと答えるかを想像しながらドロシーは答えた。
「目の前のことじゃなくて、目の前の出来事が終わったら何しようかっていうのを想像しながら楽しむのがいいんだよ。まぁ、戦闘で笑ってたら戦闘狂ってあだ名をつけられるかもだから内心で考えてね。まぁ、それでもちょっとサイコパス過ぎるかな。うーん。なんていえばいいんだろ。とにかく勝つ! っていう意気込みがあればいいんじゃないかな? ごめんね。あまり戦闘に役に立つようなアドバイスじゃなくて」
ドロシーはしょんぼりしながら、そう言えばスズカは
「いいえ。あたしもちょっと考えてみます」
そのアドバイスをしてくれるのは、面倒見のいいキオリであろう。魔王の討伐の際に打ち明けた悩みもキオリは、それなりの対処をしてくれたのをスズカは覚えている。そして
(これは、このままでいいかな)
好きになったのは、それだけで十分なのだろうなとスズカは思った。