紅茶の味は
11月22日修正。
文章の追加。
クローズ博士は、誰もが信じない中、1人でずっと演説を行っていた。たぶん1人で心細かったに違いないはずだ。けれど、少なからずの支援者がいたらしいことは、このクローズ博士の日誌に書かれているのだが、その支援者についてか詳しくは書かれていなかった。明日の朝、ハカセに訊いても上手くはぐらかすのを数十分しか対面していないキオリが知っていたし、なんなら、この町に住む、住民もハカセは、はぐらかすのが上手であるというのは、既にスズカとカズキからの証言により得ているぐらいだ。
その日の夜は、消灯時間まで俺たちは、眠れない夜を過ごしたのであった。
翌日の早朝。
珍しく、朝早く目覚めた俺は上半身を起こして部屋を見回すと、風呂場から近いベッドで寝ているカズキが毛布を頭までかぶりながら寝ていて、その隣のベッドで寝ていたソフィさんは、ベッドメイクを綺麗な状態のまま、部屋にはいなかった。俺は右手で頭を掻きながら大きいあくびをこぼしつつ、窓際から近いベッドからでも見える遮光カーテンから漏れる僅かな光を見に、ベッドから降りてから、軽く背伸びをしつつ、部屋の窓に向けて数歩歩いて、遮光カーテンを少し開けてから窓から見える景色を眺めた。窓越しでも分かるぐらい、空気が澄んでいており、心の中にあった靄が綺麗に洗われるような気がして、心の中がすっきりした。もしかしたら、そういう癒し効果があるのかもしれないなとキオリは思っていると、ベッドが軋む音が聞こえた。昼間とは違い、朝方はとても冷える、遮光カーテンを閉めようかと思って手に掛けたその時に
「おや、キオリ。もう起きていたのかい?」
今泊まっている部屋の出入口からそう声を掛けたのは、ソフィさんだ。どうやらソフィさんは早起きであるようで、外を散歩していたらしく
「外の空気は澄んでいて、とても思考がスッキリしたよ。少しだけ肌寒いが、キオリも散歩するのなら、羽織を持っていく行ことをお勧めするよ」
にこやかに微笑みながらそう言われたが、俺は丁寧に断った。
その1時間後にカズキが目を覚ましたようで、
「おはよう。2人とも…………ふわぁ~~~っ…………」
カズキは大きく欠伸をして瞳に涙を浮かばせたがそれを軽く右手親指で掬ってから背伸びをすれば、腹の虫の音が聞こえた。
「お腹空いたなー。今日の朝食なんだろう?」
カズキは、呑気にそういいながら、いつものように洗面所へと向かった。
朝食は、フォレスト・ティータイムの特産品である野菜を使った、野菜スープと牧場でとれたての卵を使った目玉焼きと焼いたパンだ。以上。
数十分して、朝食を食べ終えた後、俺は服を取りに茶畑に向かう前に、カズキ達に茶畑へ行った際に他の旅人も連れてきたら嬉しいと言われた事を思い出して、俺は意を決してそう言えば、紅茶が好きらしいカズキと、ソフィさん、ラーシュは喜んで受け入れて、スズカは若干悩みながらも頷いて、ドロシーは茶畑そのものを見たことがなかったので興味津々に頷いてくれたことに俺は少しだけ安堵した。断られたらどうしようかと悩んだからだ
というわけで、茶畑に向かいアーレイさんに言われた通り木製で出来た玄関口を2回ほどノックすれば、扉は直ぐに開いた。
「やあ! 待っていたわよ!!」
明るい顔をしてアーレイさんは、俺たちを招き入れた。
俺以外の自己紹介を軽く済ませた後、アーレイさんは、奥の部屋から綺麗に折りたたまれた服を俺に渡した。
「はい。1日中外に干していたいから綺麗になったわよ。その服は、キオリくんに渡すわ。もともと、小さくて入れなかったのよ。うふふ。カズキくん達の分もちゃーんとあるから安心しなさい。ふふふ」
語尾に音符マークがつくようにかなり機嫌がいいらしいアーレイさんは、そういった後、また奥の部屋に戻ってから数分して、全員分のこの町の民族衣装を手渡した。女性陣は素直に受け取ったのだが、カズキは若干困惑しつつも受け取りつつ、俺にしか聞こえないように小声で
「なぁ。キオリ。性別はどっちなんだ?」
と尋ねてきたので、俺もカズキに聞こえるように小声で
「性別は男。中身は女って言っていたからどっちでもいいんじゃないか? あと、いいことを教えてやろう」
「ん? いいこと?」
「機嫌が悪いと男が出るから、あの状態はむしろ機嫌がいい証拠だと、初対面時に言われたぞ」
「あ、そうなんだ。じゃあ、普通は?」
「両方混ざる。昨日はそれだった」
「なるほど。スズカに教えていい?」
「いいぞ」
小声での会話を終えてカズキはスズカに耳打ちをしていた。
一方のソフィさんは、微妙な顔をしつつも受け取った。独り言で、人間形態がどうのこうのと呟いていたので、人間形態時に着る服として、受け取ったようだ。そういえば、ソフィさんが今着ている服は、ドラゴンの姿になると消滅する仕組みなんだよな…………。どうなっているのか気になるところだが、落ち着いた後でいいかと思っているから口には出さないけどな。
機嫌がいいらしいアーレイさんは、人数分の紅茶を入れた。ドロシーにもそれ専用の紅茶を常に開発、研究をしているらしく、それを渡した。
「前回の失敗をもとに、爽やかで苦みがあり甘みもある茶葉を作ってみたの。ぜひ飲んでちょうだい!」
カズキとスズカは、若干微妙な反応を示したものの、断るわけにもいかないのか、作り笑顔で受け取った後、その紅茶を一口飲んだ。
「ん? 甘い?」
「あれ? 苦い?」
カズキとスズカは同時に喋ったのだが、カズキの感想が甘い、スズカの感想は苦いということだったので、俺も飲んでみたら、爽やかな味わいになった。
「俺のほうは、爽やかな味をしているぞ」
三者三様で、味が違うことに疑問を抱いた。スズカが飲んでいた紅茶を断りを入れて一口飲んでも、カズキが飲んでいた紅茶も理を入れて一口飲んでも、爽やかな味わいしかしない。それは、ソフィさんたちもそうで。ソフィさんは、爽やかな味わい、ラーシュは甘い味、ドロシーは苦みのある味。という違いに俺たちは、アーレイさんを見ると、アーレイさんは両腕を腰に当ててドヤ顔をしてから。
「これぞ、新たに開発した試作品第130茶葉の新要素。相手の好みに応じて味が変化するように品種改良した茶葉よ!! ふふふ。どう!?」
誇らしげにやや興奮気味にそう言った。
「あの、爽やかな茶葉と苦みの茶葉と甘みのある茶葉を間違えて合わせたのを一緒にしたんですか!? しかも相手好みになるように味は別々に!?」
「味は別々にしていないわよ。同じ味で、相手によっては違う味になるようにしたの。そこに1番苦労したわ! 特に、3種類の味を同じようにするのが苦労したわね。でも、もう大丈夫。この手順を踏まえれば、違う味を作ることができるわ。うふふふ…………。腕がなるわね!」
俺の言葉にアーレイさんは嬉しそうにそう言いながら、空想世界へと入っていった。こうなると、人の話を聞かないのだと、地元住民は教えてくれたっけ。
「あ、あの!」
「? 何かしら?」
スズカの言葉にアーレイさんは直ぐに復活してスズカの言葉の続きを催促した。
「あの、このフォレスト・ティータイムのティータイムの由来はここから来ているのですか?」
と尋ねれば、アーレイさんは、腕を組んでから数十分ほど悩むようにうろうろとしたのち、何かを思い出したらしく
「いやいや、そうじゃないわよ。初代村長がティータイムが好きで、元々ここは、アタシの前の前の前ぐらいの住人の土地で、何も使われていない更地だったのだけれど、初代村長が自ら交渉しに赴いて、半年以上かけてこの土地を買収することに成功したの。その前の前の前の住民も紅茶を作るのを趣味にしていたから、村長の申し出にあっさりと首を縦に頷いていたわ。それで、その翌年から毎年ある月の午後三時にティータイムを開催することにしているの。村の名前の由来はそれが理由ね。今年はもう過ぎているけれど、大いに盛り上がったわ」
懐かしそうな顔でそう言えば、俺たちは納得した。成程な。