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男性か女性か

 倉庫に足を踏み入った瞬間に頬を撫でるような生暖かい風が吹き抜けた。生暖かいというより蒸し暑いの方が正しい気がする。

「! ちょっと、入るならさっさと閉めてくれないかい?!」

 と、どこからか声が聞こえてたか分からないが、そういわれて、中に入って扉を閉めた。

 じっとしているだけで蒸し暑いこの空間内。きっと眼鏡だったり鏡があったりしたら曇っていたに違いない。それぐらい蒸し暑く額に、汗がじっとりと流れた。

 周りを見ると、綺麗並べてある紅茶の葉らしいものが縦、横10cmぐらいの網状の箱が均等に並べてあった。

 だが、ここまで周りを見渡しても、人の姿は見当たらない。確かに人の声が聞こえた気がしたのだが、気のせいだったのかと首をかしげる前に

「ああ、君だったのか。紅茶の過程を見るのは初めてだったのかい?」

 奥の扉を開けてやってきた男性が、俺を見た瞬間、納得する表情を浮かべた。

「はじめまして。アタシは、アーレイよ。思わず男の部分が出てきちゃったけれど、見た目は男、中身は女よ。うふふ」

 少し派手なメイクに、黒色の口紅、ショートボブの髪。服装は村でよく見かけた村民が来ていた民族衣装で男性である。ギャップを狙っているとしか思えなかったが、平然と装うことにしよう

「どうも、こちらこそはじめまして。俺は、キオリっていいます」

「あら? 随分裏声ね! 驚いたかい?」

 平然と装えなかった。しかも緊張しているのかよ。俺はそこまであがり症や、恥ずかしがり屋でもなんでもないぞ。断言してやってもいい。

「えぇっと、まぁ。そうですね」

 苦笑いしつつそう答えれば

「おやおや、正直な子だね。嫌いじゃないわ。さ、こっちに来て。紅茶の匂いにつられてこっちに来たのでしょ?」

 アーレイさんは、そういってから奥の扉の方へ向かっていったので、俺は、アーレイさんの後を追った。


 奥の部屋は、倉庫よりも涼しく風が優しく小窓から吹き荒れていた。

「服が濡れているわね…………。この服しかないけどそれでいいなら着替えてらっしゃい。風呂場はそっちにあるから」

 テキパキと指示を出して乾いたタオルを数枚ほど取り出してからそれを俺に渡してから、呆けている俺を風呂場の方へ強制的に移動させたのち、

「5分しか経っていないけど、あの倉庫は、貴方も実感しているでしょうけど、蒸し暑いのよ。だから、今着ている服は汗でびっちょりとしているわ! だから、さっさと身体を洗いなさい。いいな!」

 右手人差し指を立てながら、俺にそう言った後、浴室の扉を勢いよく、そりゃあ、壊れるんじゃないかというぐらいに閉めた。

 男のバスタイムなんて、興味ないだろうから、ばっさりとカットしつつ俺は、さっぱりしてアーレイさんから支給された服に着替えて、風呂場から出れば、エプロン姿になっていたアーレイさんは、俺を見るなり、じっくりと観察したあと

「うん。少しはマシになったわね。あなた、顔はいいのだから気を付けないと、ニキビが増えるわよ…………」

 ニキビというあたりで若干顔を青ざめていたアーレイさんは、すぐに切り替えてから近くにあったテーブルにティーカップと小さいスプーンを置いた。

「この村に入ったときに紅茶の香りの正体よ。少し熱いから気を付けて飲みなさい」

 と言われたので、俺は、促された椅子に座りながら、ティーカップを手に取って口に運んだ。

 これが、どんな味かと言われれば少し苦みもあり後から甘みが返ってくる。後味は爽やかで…………ちょっと待て。分かりやすく言おう。ブラックコーヒーを飲んでいるのにも関わらず、甘党のコーヒーの味がして、なぜかそれが爽やかミントだった。…………だめだ、説明しても分けわからん。

「どうだい? 新作の紅茶の味は? 爽やかですっきりしているだろう?」

「後味は。そうですけど、苦みより甘み…………この、よくわからないのが来てるんだが…………」

 アーレイさんの言葉に俺は、言葉を選びつつそういえば、頭上にクエスチョンマークを大量に浮かべた後、新しいティーカップを取り出し、それを入れてからぐいっと一気飲みして数秒してから微妙な顔をした。

「うん。確かに。キオリの言う通りかもしれない。これは、失敗したよ。爽やかなミント系の紅茶にしたかったんだけど、苦みのある紅茶と甘みのある紅茶の茶葉と一緒に入れていたみたいだよ。大雑把にして同じ箱に入れたのが間違いだった…………。うぅ…………。君が、レグルスを連れて帰ってくれてよかったよ。雑用係みたいなものとはいえ、彼に仕事を与えていたからね」

 両手を頭に支えたのち、項垂れるアーレイさん。どうやらレグルスに職場を与えたのは、アーレイさんのようだ。アーレイさんって結構大雑把なのかと俺は心の中で忘れないようにメモをしつつ、紅茶をまた一口のむ。

「癖になりそうだな…………これって」

「新種の紅茶として、販売してみようか。コアな紅茶ファンなら絶対に買ってくれるような気がするわ!」

 ガタンと急に立ち上がり目を輝かせるアーレイさんは、どこかへと向かった後、ペンと紙を取り出してメモに記した。

「まとめるのは、流石に品質上は勿体から一から作る必要があるね。ふふふ、楽しくなってきたよ。服は僕の方で乾かすから、明日の昼過ぎにまたこちらに来てくれ。ああ、もちろん倉庫からじゃなくて、表玄関のほうでね。倉庫によって隠れてはいたけど、僕の家は倉庫の後ろにあるんだ。ぜひ、他の旅人も連れてきてくれると嬉しいよ。その時には、1つの茶葉でこの味が出せるように頑張るよ」

 アーレイさんは、1人で集中したいようなので、俺にそうまくしたてると、表玄関の方から追い出したと同時に昼の鐘が鳴り響いた。


 茶畑から後にしたあと、俺はレストランへと向かうと、レストランの入り口付近にちょうど、スズカとカズキと出会い、一緒のテーブルに座ることにした。

「キオリくんのお陰で、レグルスくんと仲良くできたよ。ありがとう。キオリくん」

「俺はアドバイスをしただけだぞ。それを実行したのは、スズカとカズキだ」

 スズカの言葉に俺がそういえば、

「それでも。だ。キオリのアドバイスが会ったから僕とスズカはレグルスと仲直りが出来たんだ。だからこそお礼をさせてほしい。ありがとう。キオリ」

 カズキの言葉に俺は少し照れ臭くなりつつ、そりゃどうも。と小声でそういえば、聞こえたらしくスズカとカズキは嬉しそうに笑った。

 さっさと食事にしよう。いろんな所を見て回ってお腹が空いているんだと、その場の雰囲気を変えたくて、柄にもなくそう言えば、スズカとカズキは、笑顔でうなずいた。

 どうせ文字は読めないだろうと思いつつもメニュー表を開けば、不思議なことに、そこに書かれている文字が読めてしまった。

「う~ん。僕は、前と同じようなことは嫌だし別なのがいいなぁ…………。でも文字は読めないからなぁ…………」

「それには、あたしも賛成。できれば辛いのがいいよ。ファンシーなのは、遠慮したいけど」

 スズカとカズキはメニュー表が読めないらしい。ならなんで、俺だけメニュー表が読めるんだ? もしかしてメニュー表が違うとか? などと考えつつスズカとカズキが見ているメニュー表は、俺が見ているメニュー表と同じものだ。

「あれ? キオリくん。どうしたの?」

 スズカは俺の困惑しているであろう表情に気づいたらしく、心配そうな顔でそう言われた。

「あのさ、俺。なんか、文字読めるっぽい」

 俺がそう言えば、スズカは驚愕しており、メニュー表とにらめっこをしていたカズキも驚愕した顔を浮かべていた。


【アーレイ】

外見は男性、中身は女性の人。服装は男性。髭も生やしているが趣味で女口調にしているだけという噂もあるが真相は不明。紅茶の茶畑を1人で管理している。大雑把

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