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迷子族の王様による伝言

迷子族の王様の登場回

 二度目のピエロの邂逅は、意外と早かった。まだ一晩も経っていないはずなのに、すぐに出会ってしまう。迷子族だって2ヶ月半ぶりだぞ。それくらい空気読めよと内心思ったが、口には出さなかった。

「おやおやおやぁ~~? まぁた、会いましたねぇ~~?」

「そうだな。また会ったな。結構な頻度でお前に逢えるのか?」

「それだったらぁ~~? 僕を、最初に見かけるはずだけどねぇ~~?」

「…………それもそうだな。今日は偶々ってことで」

「偶々ですねぇ~~~!」

 若干テンションが高めなのかどうかは分からないが、こいつ自信のテンポに合わせるのは非常に面倒くさいので、こいつの前だけは、適当に頷きつつ、受け流すことにした。それなりの対処法ってやつだ。

 ピエロはくるりと回転したのち、玉座に座る人物を見ながら

「さぁって、さぁって、何か願い事はありますかねぇ~~?」

 言動を身体で表現しつつ尋ねれば、その人物は瞼をゆっくりと開けてピエロを見据えたのち

「今も、昔も変わらぬ。この街の繁栄だ」

 声音的には男性のようだが、見た目は女性だ。普段の一般女性より少し声が低めの人なのだろうと俺は判断した。

 ピエロはその言葉を訊いてから肩をすくめた

「いつもと同じですねぇ~~。まぁ? いいですけどぉ? では、継続ってことでぇ~~? また会うときまで!!」

 そう言うと同時に、ピエロはどこからか取り出した煙幕のようなものを使って、煙が引いたときには、ピエロは姿を消していた。


 ピエロが退場したあと、玉座に座っていた人物は俺を見るなり品定めしたあと

「ああ、君は、キオリと言ったか。随分前に、迷子になったという。手紙も受け取った。感謝する」

「あ、えっと。いえ」

 非常に気まずいが、俺は右手で後頭部の髪を掻きつつそう言えば、

「自己紹介をしよう。我は、カノープス。この森の王でもある」

 カノープスさんは、そう言って立ち上がり、傍にいた側近に白色のファーと赤い布で構成された背広を羽織ってから再び玉座に座った。

 王様らしさを出したのだろうと俺は思いつつ

「キオリを、こちらに呼んだのは言うまでもない。君、というより君達が森の外で起きている不祥事を解決しようとしていることだ」

 不祥事と言われて思い出すのが、あの魔王のことだが…………

「魔王のことですか?」

 一応、確認の為に尋ねれば、カノープスさんは頷いた。

「そうだ。中央の王も話たとは、思うが、あの魔王は好き好んで、この世界に来たわけではない。ブラックホールにより、強制的に連れ出されたものだ。そのブラックホールの発生は人間による悪の感情から発生している。以前来訪した勇者は、街を助けることもなくただ単に魔王を討伐して帰還していたが、君達だけは違う。君達がやってきた行いは、我々が諦めかけていた魔王を救い出すということが可能性が非常に高い」

 そこで、カノープスさんは一旦深呼吸をしたのち

「だが、君達はどうやって魔王を救い出すという方法は、まだ分かっていないと推測するのだが、実際はどうなのだ?」

 カノープスさんの言葉に俺は頷いた。

「確かに、どうやって救うという判断は、俺たちも分かっていません。ただ、救えればそれでいいという投げやりなことは、したくないんです。魔王もこの世界の人も心から安堵できるような世界を作りたいと思っています」


 この世界に来て、王様気取りになるつもりはない。困っている人がいたら助ける。それを行動に移すことは、普段の生活では、非常に厳しい事柄だ。実際に俺も、ここに来るまでは、行動に移すことをしなかった。つまり傍観者側だったのだ。 

 だが、この世界に来てから、傍観者ではいられなくなった。最初は魔王を討伐すればいいと思ったが、実際は違う。傍観者でいたら死ぬ可能性があるこの世界では、戦わなければ生きていけないということを強制的にされたのだ。始めて行ったモンスター退治の時が、特にそうだ。戦わなければ負ける。これはそういう世界なのだと実感した。だからと言って、困っている人を放っておけるかと言われると、西の街で非常事態が起きた際に、放っておけなかった。だから、西の街でも、俺が名乗り出るまでは、メンカリナンさん達でさえ諦めたような顔をしていたし、自称勇者一行の場合は誰が止めることなく眺めるだけ。それが当たり前だと言わんばかりだ。ビーデルさんを救った時もバドラーさん達も放っておく雰囲気があった。

 あの時は、無我夢中だったのだ。勇者候補か、勇者だから勇者は困っている人物を放っておけないのは、物語上でも鉄板だったから助けた。西の街は勇者だから助けるのは当たり前だろうと。だが、現実は違う。決断しなければならないのだと知ったのは、自称勇者一行の事だ。そこで価値観が一変したのだ。

 俺は息を呑んでから

「困っている人を放っておけるほど、俺は悪人になった覚えはありません。救えるものがあれば救う。それを俺は、この世界に来て教わったんです」

 そう言えば、カノープスさんは驚愕したのち

「なるほど! 素晴らしい考えの持ち主だな。キオリ」

 褒められるつもりじゃなかったんだが…………一応、礼は言っておく。

「君達は、アルデバランに用があるのだったな。それならこの手紙をアルデバランに渡してくれ」

 そう言ってカノープスさんは側近に手紙を渡し、その側近が俺に手紙を渡した。

「アルデバランに会うための招待状みたいなものだ。アルデバランに逢う時に仲介人がいるだろう。その人物に手紙を渡せばいい」

 アルデバランに逢うのに招待状までいるのかと思いつつ俺は手紙を四次元麻袋に入れた。

「そろそろ、夜が更けるな。貴様を帰そう。そこに座ってくれ」

 帰すのに座らせるので、大人しく座ると

「そのまま目を閉じてくれ。そして流れに身を任せると言い。起きた時には、あのテントの場所に着くだろう」

 と言われたので大人しく瞼を閉じる。

 流れに身を任せろと言われてゆらゆらと揺れいる。外の音も大して変わらず物静かだったのだが、急に騒がしくなった。テレビの音を急に上げたようなそんな感じだ。思わず耳を塞ぐ前に、

「キオリ! 大丈夫か!?」

 というカズキの言葉が耳に入り、瞼を開けると、いつの間にか、俺は、あのキャンプした場所の外にいてしかも横になっていた。

「あ?」

「キオリ? 大丈夫か? 急に倒れたんだが…………それに、コアはどうしたんだ?」

 カズキは、俺を起こしつつ周りを見ながらそう尋ねた。

「あー…………えーっと、迷子族に連れていかれた。多分、元の飼い主の所に帰ったと思う…………」

 俺はカズキに引っ張り出されながらもそう言えば、カズキは何言ってんだという顔をした。

「迷子族って、あれだろ? 北の街に向かう時にキオリが逢ったっていう木で出来た奴」

「ああ、その迷子族だな」

 俺がそう言えば、カズキは少し落ち込んだように落胆を見せながら

「僕は迷子族に逢ったないから、一目見たかったな。レアキャラだろうな…………あれって」

 少しというよりかなり落ち込んでいるようだ。俺は励ましていると食事の準備が出来たらしい。


「キオリ君。また、迷子族に逢ったんだね。羨ましいなぁ」

 円になるように座りながら俺は、コアと俺が迷子族の拠点である大きな大樹に入ったことを話したら、スズカは羨ましそうに、そう言った。

「好きで会っているわけじゃないんだけどな。さっきも話したが、コアは公園のベンチに置いていった感じで、俺は、公園からでも見える木で出来た城に入って、そこでカノープスという迷子族の王様に逢ったんだ。カノープスさんは、アルデバランさんに手紙を渡すように頼まれたんだ」

 俺はそう言って四次元麻袋から、カノープスさんから貰ったアルデバランさん宛ての手紙を見せてから四次元麻袋に仕舞い込んだ。

「招待状だとカノープスさんは言っていた。アルデバランさんに逢うには、仲介人がいるらしいんだが、その人物にこの手紙を渡すつもりだ」

 俺がそう言えば、カズキは目を輝かせながら

「ということは、気難しいアルデバランさんに一歩近づくための切符を手に入れたってことだな!」

 非常に興奮しているカズキを隣に座っていたソフィさんは落ち着かせてから

「迷子族の王様、カノープスも君達の活躍を常に聞いていたというわけだ。カノープスを裏切らない為にも、アルデバランには、ぜひとも協力してもらおう」

 その言葉に俺たちは、同時に頷いた。

【カノープス】

迷子族の王様。木で出来ている。キオリは女性だと判断したが、迷子族は性別の判別がないため、不明。

中性的な女性の声をしている。

アルデバランの他、エルナト、メンカリナンと知り合い。

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