東北東の山小屋の特徴
山小屋の回
ペーパーさんと一緒に、東北東のほぼ中心にある山小屋の内装は、使用した後に掃除をしてくれれば土足でも構わないというスタンスで、入口付近から見て木製の衝立[ついたて]があり、衝立の右側が石畳で形成され、そこに台所があったが、冷蔵庫は存在せず、人一人ぐらい入るであろう、大きめの樽に氷と野菜を入れる手法を使っており、その手法は、この世界の共通認識のようだった。
電気という概念がないわけではないが、電気を作らないという考えがあるらしく、その理由として、ペーパーさん曰、電気という言葉自体が出たのは、小人が作り出した本の一部で書かれていたらしく、その構造も詳しく書かれていたらしいのだが、この世界の研究者たちは、それを読んだうえで、実験を行おうとした結果、爆発事故が起きてしまい、それ以来、電気は要らないということがこの世界の常識となっていた。
現に、冷蔵庫、エレベーター、電子レンジなどの電気を使うものは一切開発されていないようで、元々魔法があるからそれに頼っているので、必要ないのが一番の理由のようだ。
夕食は、ペーパーさんの御手製ということで、暫く待つことになった。
この異世界の決まりで、結婚していない異性相手に料理は見せてはいけないというのが決まりで、それが結婚していない同性だろうが、結婚している異性や同性だろうが、料理を見せていいのは結婚した相手のみの特典だということだ。
それで、冒頭の山小屋の見学をしていたというわけだ。
風呂の方は、洋室、台所は和という具合に、和と洋が融合したような状況が出来上がっているのだが、これに関しては、昔からというペーパーさんの情報なので、確信は取れていない。
「この世界について、知りたいのなら、王宮の図書室がこの世界にある本を一気に集結したようにたくさんありますよ。ないものを探すのが難しいぐらいです」
という話だったので、王宮に戻ったら調べてみようかと思ったが、それはもう図書室ではなくて、図書館なのではないかというツッコミは誰もしなかった。多分内心、俺たちがしているのだろう。
どうやらこの小屋は屋根裏部屋あるようで、そこに向かえば、布団が4つ並んでいた。ここで、寝ろという訳か。
「キオリ君。屋根裏部屋何があったの?」
屋根裏部屋を見に行ったのは、俺だけだったので、1階にいるスズカが尋ねて来た。
「布団が4つあるけど。スズカって高所恐怖症だったか?」
「あ、ううん。あたしは大丈夫。カズキ君は?」
同じ1階にいるカズキは
「僕も平気かな。今、夕食を作ってくれているペーパーさんは知らないけど」
屋根裏部屋の論争は一旦中断して、俺は1階に降りると同時に夕食が出来上がったようだ。
ペーパーさんが、予[あらかじ]め用意していた牛のステーキ肉に甘い醤油ダレと柚子のような風味のコショウに、シロツメクサに似た葉っぱと食パンが1人つき3枚とフォークとナイフのみ。以上。
「あ、そういえばあの樽は、何日まで保存できるます?」
いただきますをした後に、スズカはペーパーさんに尋ねると
「そうですね。大体1週間前後です。保存状態もありますが、生ものなどは、平和の勇者様もお持ちしていますこの麻袋に入れて持ち運びます。麻袋内は基本時間が停止している状態なので、麻袋のまま持ち運ぶことは可能なのです。ですので、氷は麻袋に入れることで入れておくことは出来ます」
「それなら、野菜とかも麻袋に入れた方がいいんじゃ…………?」
というスズカの疑問にペーパーさんは首を横に振った。
「当初は、そういう考えもありましたが、鮮度だけが時間だけが止まっていたようで、味の品質が変質したのです。干し肉とかそう言う類は、構わないんですが、それ以外はほぼ全滅。腹痛や下痢、嘔吐など、平和の勇者様の世界で言う、食中毒が該当しますが、その件数が増えていまして4300年ぐらい前に使用停止が言い渡されて以降はこの大樽が一般的になってますね」
ペーパーさんは残念そうな顔をしつつそう言った。
四次元麻袋の謎だったことが解明されたことで、俺たちは止めていた手を動かすことにした。
「ごちそうさまでした」
俺たち3人がそう言えば、ペーパーさんは、それはなんだと尋ねて来たので、食事に感謝する言葉だと教えれば納得して真似するようにごちそうさまをした。
そういえば、海外でもいただきますとごちそうさまの概念がないんだよな。神に感謝をで頂きますになるようだから。そういうやりとりをするのは日本だけということを知ったときは、印象深い。
この世界もそう言う習慣がないのだろうと改めて確認した。
「そういえば、屋根裏部屋に布団が4つあったんですけど」
「あぁ、そういえば忘れていましたね。この小屋だけは屋根裏部屋で寝るのですよ。他の小屋は基本的に土足厳禁なのですけど。ここだけ土足がOKなのには、理由がありまして。元々、ここは今までの小屋と同様に土足厳禁でしたけど、まず先ほども話しましたが、小人の住む東北東へ向かうために王宮に認定された転移場所は小屋の出入り口でしたけど、何故かからなず小屋の中へ土足で上がってしまう状態が既に1万回試しても小屋の中になってしまって、そこから土足OKになりました。で、寝る場所をどうするかという話で、小屋を少し改造しまして、屋根裏部屋を作ってそこで寝るということになってます」
「あ、はい。そうなんですか。ペーパーさんは高所恐怖症ではないんですね?」
「こうしょきょうふしょう…………? なんですか? それ」
「え」
どうやら、この世界には、恐怖症という概念すら存在しなかった。街の外に出ればモンスターと遭遇して戦わなければ死という世界なので、恐怖症を発症することすら与えないらしい。
らしいというのは、あくまで俺たちの推測が事実は未だに不明というところだ。王宮に戻ったら調べてみようと思う。
ペーパーさん、スズカ、カズキ、俺の順で風呂に入った後、談笑したのち、
「平和の勇者様は、私達に対しては、口調が丁寧のようですが、何か決まりが?」
「え。あー。その見た目的に年上の人には、基本、丁寧に話しますけど」
ペーパーさんの疑問にカズキはそう返せば、なるほどと納得して、そのまま眠くなるまで何気ない会話を繰り広げてその日は、寝相が激しいかもしれないという理由で右端の壁際から左側の入り口の近くの順番といて、スズカ、カズキ、ペーパーさん、俺の順で寝ることになった。
翌日。
俺が起きるころには、屋根裏部屋は俺しかいなく、1階へ降りると、料理を並び終えた後だった。
「おはよう。キオリくんでしたね。よく眠れましたか?」
ペーパーさんの言葉に俺は頷くと
「それは良かった。ジュースは昨日の残りで今日は、スズカさんが作ったサンドイッチなるものを作ってくれました。顔を洗ったら一緒に食べましょう」
そう言われて、俺は頭を右手で搔きつつ洗面台へ向かって顔を洗ってから頭も視界もスッキリしたところで、ペーパーさん達がいるところへ戻る。
「朝食を食べて少し落ち着いた後にここを掃除してから出発しましょうか。小人がいる道までは迷いやすいですから、明るいうちに出ないといけません。それとここら辺一体はモンスターの出現が滅多にありませんが万が一の為に武器の手入れも忘れずにお願いします、ちなみに私の武器はこれです」
そう言ってペーパーさんが取り出したのは、変わった形状をした斧のようだ。
「トマホークという斧の武器の一種です。接近攻撃なので、確か、キオリ君もそうでしたね。その時はよろしくお願いします」
ペーパーさんは軽くお辞儀をしたのち、トマホークを四次元麻袋に仕舞い込んだ。
【東北東にある小屋】
数ある小屋の1つで唯一土足で上がっても構わないとなっている。その代わり掃除をするのが決まり。
他の小屋と同様に土足厳禁であったが、王宮側が認定した移動場所で転移魔法を行う際に、何故か小屋の外ではなく、中に入ってしまうのを1万回以上繰り返しているため、土足が許された。
屋根裏部屋は後から追加されたもの。和と洋が融合している。
【電気】
元々は小人が作った本の一部に載っていたのを実践した研究者がいたのだが、爆発事故が起きて以降、電気に関する事柄は禁止された。
魔法があるので、それを使えばいいんじゃないかと思うが、魔法を使うのにも使用者が限られている。
【四次元麻袋】
四次元ポケットならぬ四次元麻袋。
基本的に何でもはいるし生ものも鮮度だけを時間を止めることは出来るが、それ以外は全て腐ってしまうことが判明した。
【恐怖症】
この世界では、恐怖症という概念は存在しない。常に死と隣り合わせの状態なためだと平和組は推測しているので、詳しい事情は不明。