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本当に倒していいものなのか

次の話には、一人称視点に戻します。

 前回のあらすじ

 ビーデルの体格、服装が諸々変化した。以上。



 ビーデルの体格や服装が変化したことによって、東南東中心に広がっていた謎の瘴気も消滅し、ついでに言えば、近くにいて凶暴化になっていた魔物まで、角のようなものが生えていたが、それさえ消滅していて普通の魔物になっていた。その魔物は、こちらに襲いもせず一目散に逃げて行ったのが不思議だったのだが…………。

 平和組は、ビーデルから離れてその変貌に驚愕したものの、対して驚きしなかった。

 というのも、ビーデルのほうが驚愕していて慌てたことにより、逆に冷静さを取り戻せたからだ。

「!? 嘘!? 戻ってる!? マジで!?」

 太っていて髪が長くて脂っこい顔つきだった野太い声だったのが、ビーデルが言ったように少し掠れた声変わり時期に戻っていた。だからなのか、時折、興奮しては、せき込んでいる。


 一体何が起きたのか、さっぱり意味不明な状況の中、平和組を含む勇者一行と、ビーデルは中央に位置する王宮へ移動魔法で戻ることになった。

「住まわしき魔法による造形か」

 相変わらず王様は何を言っているかさっぱり分からない。側近の男性は咳払いをしてから

「平和組の皆さんもそうですが、異世界アトランダム召喚術式によって召喚された勇者一行及び、この世界にいる勇者による特典である、魔王が現れる際に発生する謎の瘴気を打ち消す能力があるのは、ご存じですよね? その能力によって消えたのではないかというのが王様の意見です」

 そう説明した。

 通訳がやたら長いのは、よくあることだとソフィさんは説明した。ビーデルさんは、キオリに

「俺の知っている王様もそうだったけどさ。王様って意味不明な奴がなれるのか?」

 と尋ねて来たぐらいだ。キオリは肩を竦めた。

 結論は、それしかないらしいということで、ビーデルは平和組に大いに感謝した。歳をとるかは不明だが、ビーデルはしばらくの間、王宮の仕事をすることになったらしいので、素直におめでとうと平和組が言えば、ビーデルは目を丸くしたのち、咳払いしてから照れたように市場で買ったという帽子で顔を隠しつつ、ありがとうとお礼を言ったぐらいだ。


 ソフィとラーシュの他、ビーデルによって攫われた勇者の身体には影響がないが、勇者専門の医者がいるらしく、その人によれば、1週間ぐらいは様子見を見た方がいいというこで、しばらくの間だが、王宮にお世話になることになった。

「あ、そういえば、街の人に訊いたけど、東西南北にある街を一度訪れたら、王宮に戻るって訊きましたけど…………。あれって本当なんですか?」

 応接間で好きなように遊んでいた際に、スズカはそう尋ねれば、パドラーは頷いた。

「ああ、そう言えば、君達には話していなかったね。魔王がいる場所の周辺に障壁があってね。それを壊すのに、異世界アトランダム召喚術式によって召喚された勇者とビーデルが言っていた異世界アトランダム儀式召喚の勇者と一緒に、障壁を破壊する術式を展開しつつ、破壊する必要があるんだ。だが、その障壁を破壊する術式は、一定の力…………そうだね。分かりやすく、レベルとでも言おうか。一定のレベルが必要になるんだ。そうでもしないと魔王討伐なんてのは、難しいからね。そのレベルさえクリアしていれば、魔王を討伐しやすくなるんだ」

 と説明した。

 魔王に挑むには、それぐらいの難易度の条件をクリアしなければ、魔王討伐は難しいということを考えさせられたのだが…………平和組はそれに不満を言うつもりはないが、何かに疑問を持った。


「あのさ、今更なんだけど、魔王って必ず討伐しなければならないのかな?」

 夕食を食べ終えてから、キオリは、召喚された時に使用していた部屋で寛いでいたら、スズカとカズキがキオリの部屋へ訪れて、椅子に座るようにキオリが促して、キオリがベッドに座った所で、スズカがそう言った。

「討伐って言っているからな…………。でも、これまでに魔王によって影響したのは、魔王襲来によって凶悪性が増したモンスターが街を襲ったという報告でその原因である魔王は何もしていないのに討伐されるってのがな…………」

 キオリの言葉にカズキも同意するように頷いた。

「僕も、そう思うよ。ただ、僕たちは初めてこの異世界に来た新参者で、既に何度もこの異世界に訪れた上に魔王討伐の経験者に歯向かうのはどうかなって思うんだ。ビーデルさんの時も、討伐する雰囲気だったけど、どうにかしないとって思った結果、誰も死なずに済んだ。けど、次に人間ともし戦うことが会った時に、僕たちは武器を手にして戦わなくてはならないって状況になったときが、怖いよ」

 カズキの言葉にキオリとスズカは何も言えなくなった。

 本当に、これでいいのか。本当に倒していいものなのか?

 それを答える人物は、この場にはいなかった。


 翌日。

 キオリは、魔術の種類を教わる為にパドラーさんの所へ向かい、カズキとスズカは、本当に魔王を討伐しなければならないのかという自問自答の末に、キオリの一言で2000年に1度現れるという謎の空間を調べる為に王宮にある図書室に訪れていた。

 元々、2000年に1度現れるという謎の空間は、何故発生するのかさえ、分かってはいなかった。それを2回経験しているビーデルが言うには、

「あの空間が、発生するとき…………。地震のようなものがあるんだ。地面の下から上へのし上がったような感じだな…………。それと、同時に謎の空間が発生する。トントン族は、それを洞窟と呼んでいたな」

「洞窟?」

「ああ。洞窟のように、灯を付けないと闇が広がっているように見えるからそう呼んでいるんだ。洞窟が発生する前に起きる地震のようなものに被害が出るのは主に北の街を中心とした地域なんだ」

 ビーデルは咳払いをしてから

「トントン族や小人は、平均年齢が非常に高い。だから、洞窟の発生条件と魔王が住んでいる魔界を調べるなら、小人が書いた本がいいと思うぞ。王宮にもあるはずだ」

 ということで、カズキとスズカは図書室に訪れたのだ。


 その本は直ぐに見つかった。

【洞窟の発生について】という本が埃が被っていたが奥の方にあった。


『洞窟について

 洞窟の発生には、いくつかの現象が確認される。

一、北の街を中心とした北西、北東、東北東、北北西、北北東、西北西に大規模な地震が発生する。

二、滅多に雨が降らない、西、北を中心に雨が一ヶ月近く降る。

三、東の街に住んでいるモンスター、動物等が一斉に暴れ出す。

四、一~三の各地方の異常事態が100年前から予兆される。

 が、上げられる』


 4番目を見て、カズキとスズカが納得しているとキオリが遅れてやってきた。

 教える魔術はないとパドラーにハッキリ言われて、放り出されてしまったようで、かなり落ち込んでいたようで、カズキとスズカは、キオリに【洞窟の発生について】と書かれた本を見せた。

「……………………なるほど。気になったんだが、何で全部日本語なんだ?」

 とキオリが尋ねた際に、スズカとカズキは首を傾げるしかなかった。

 読み進めているうちに、気になる箇所が399ページの右上にあった。


『洞窟の発生の際に、魔界に住む種族は、強制的にこちらへ無理矢理連れていかれてしまうことが明らかになった。最初の洞窟の発生の際に、気づいた洞窟の研究者をしていたクローズ博士によると、謎の洞窟は、王宮が他の世界から勇者を呼ぶ際に発生する強制的に召喚する方法とほぼ類似していることが判明していると明かした。しかし、その説を世論に演説をしてまで、話し合ったが認められなかったとして、演説してから3年後に公開処刑で殺され、世論も忘れている』


 と書かれてあった。

【障壁】

魔王が現れたと同時に現れる透明な薄い壁のこと。その障壁は、切っても、燃やしても、冷やしても全く歯が立たない為、魔法の障壁を壊す術式を展開しない限り破壊することは不可能。その術式を展開するのに必要なのが、勇者一行のレベル。


【レベル】

RPGによくある、キャラクターの熟練度のことで、上がれば上がるほど、魔王を討伐しやすく魔物も討伐しやすい。


【洞窟】

魔王が現れる前兆とされる謎の空間の事。

黒く奥の方が視えないことからトントン族が洞窟と呼んでいるが、正式名称ではない。正式名称は、あるにはあるのだが、それが本当に正式名称なのか、不明なので使われていないだけ。


【洞窟の発生について】

小人が出版したもので、全部日本語で書かれてある。1500ページ。

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