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勇者に助けて欲しかった男と勇者でなくても困っている人を助ける平和組の話

前半がビーデル視点、後半が平和組の視点です。


1月26日修正

5200年前を7000年前に変更しました。

 今でも覚えているのは、全身に走る痛み。あの研究者の薄気味の悪い笑い声。そして、助けてくれなかった勇者たち。

 助けてくれるのが、勇者の役目じゃないのか。ただ魔王を討伐すればいいと思っているのか。俺は、こんなに苦しんでいるのに、どうして。どうしてどうしてどうしてどうしてッ!!

 そこから先は、覚えていない。気づいたら東南東の方にある場所に居座っていた。

 元々そこにいた、子供のような中性的な人間が数百人ほどいたような気がするがそれがトントン族であると知ったのは居座ってから4日も経ってからだった。

「魔族? 魔王の手下? 魔物? モンスター?」

「…………………人間」

 男か女かどちらとでも取れる声音を発しながら尋ねてくるから、数年ぶりに口を開いて発した。

 だが、違和感があった。自分の声ではないのは、確かだ。だが、自分の口から正確に音は出ている。だが、元々こんな声だったのか? いや、違う。元々は声変わりして少し掠れた声音をしていてそれが成人しても変わらず、よく友人にからかわれたじゃないか。なのに、なんだこの、声音は。

 俺の変化に、トントン族は首を傾げた。

「どうしたの?」

「……………………自分の声じゃないんだ」

「数ヶ月前に起きたアレのこと?」

「…………アレ?」

「1人の人間を魔王が現れるのと同時に現れる謎の瘴気を充てられたってやつだよ」

「ああ! そうだ! なんで、俺の声が変化するんだ!?」

「!? 落ち着いて! 何があったの?」

 混乱している俺にトントン族は、慌てながらも俺のことを知ろうとした。だから、俺は、あの日の出来事を語った。

 トントン族は、驚愕したのち、

「見捨てられた?」

「俺は、そう思っている…………」

「そうなんだ。…………君は、ここにいて僕逹は小人の所へ向かうよ。何か手がかりがあるかもしれないから、それまで待っていて」

 トントン族が住処を捨ててどこかへ消えたという記録が残った真相がこれだ。


 それから、2000年ほど経過して、男の場所に小人がやってきた。

小人は知識が豊富で彼が突然変異したことを本にまとめ上げることにしたのだ。

「どうして、本にまとめる必要がある?」

 男は尋ねた。

「僕たちの役目は本を作ることだから。もし、君を救える人物がこの本を見た際に、必ず勝算があるはずさ」

「……………元に戻れると?」

「年月は残念ながら戻らないが、やることは、まず君が悪役を演じることだ。この本に載っている異世界アトランダム儀式召喚で、特定の異世界の人を召喚して、気まぐれで呼んだと言えばいいさ。そしたら王宮のほうで呼ばれる異世界アトランダム召喚術式によって召喚された勇者に耳が入る。そして召喚儀式をしてから2ヶ月後ぐらいに呼び寄せるんだ。そしたら、彼らは憤慨するだろう」

「怒らせてどうするんだよ」

 男の呆れた言葉に小人はニヤリと笑った。

「実は、今から5000年後に平和な世界からやってくる勇者が来るんだ。彼らの勇者による価値観と他の世界からやってくる彼らの勇者の価値観はかなり食い違ってくるはずだ。それを利用するんだ。これが最後に残された手段だ」

「そんな先の魔王が来るのか? しばらく来ていないだろう」

「僕たちを何だと思っているんだい?」

「小人だろう」

 男の言葉に小人は、呆れた目をしていた。

「僕たちの予測は外れないよ。信じて欲しい。その時に実行するんだぞ。いいな」

「……………………分かったよ」

 小人は念を押してまでそういう。どういう風にそんな自信が付くのだと知りたいが、黙って聞いていた。

「君は人間の道を大きく外れている。魔王が発生させる謎の瘴気と同じ様にこの周りにも同じような瘴気が立ち込めるだろうね。そうなったら君は君ではいられなくなる。だが、それまで耐えてくれ」

 大分投げやりだとは思うが小人はそう言って去っていた。


 5000年後。

 魔王が出現すると同時に、異世界アトランダム召喚術式によって勇者が召喚された。その中には小人が以前言っていた平和な世界からやってきた。勇者がいるらしいというのを耳にした。モンスターや魔王などの争いがない平和な世界。

 俺のような奴も生み出さない平和な世界なのだろうかと男は、思った。


 1ヶ月後、小人の助言で異世界アトランダム儀式召喚により、必要な素材を用意して召喚してその召喚理由にノリと勢いと話したら、機械の子は出て行った。だいぶ小汚い演出に見えただろうか?


 3ヶ月後、既に集合しているであろう勇者の一部を掻っ攫ったが、そこから悪役を演じなければならないことに気が滅入る。

 ドラゴンの男性はロボットに身振り手振りをしていた。どうやらロボットの方は聞こえていないらしい。ドラゴンがロボットに何かを託すのを確認したのち、視察しにきた奴らに見える場所に置いた。


 そして、今。

 だからなのか、平和な世界と呼ばれた勇者3人は男を見据えていた。



 キオリとカズキとスズカは、王様の側近である男性に、先ほどの本を借りてそれを見ていた。

 というのも、元々気になる場所があり、そこには一切触れなかったことにキオリ達は疑問に思ったからだ。

「あ! キオリくん、カズキくん。あったよ。これだよね」

 スズカが人間の突然変異の3200ページ目のところ

『治す方法は、以下の3つ。

 当時の魔王の討伐、

 当時の魔王討伐に召喚された勇者

 実験が行われた場所。』

 の下に書かれてあった場所だ


『ビーデルの勇者価値観とほぼ一致したものも治療が可能である』


 ビーデルの勇者の価値観は、本に載っていた。それは、俺たちと同じ困っている人がいれば自分の損得関係なく、助けるということだ。これなら、彼を救うことは可能なはずだ。まず、話に応じてくれるかどうか不明だし、正確な治療方法は載っていなかった。

 そして5日後、平和組はビーデルを見据えていた。


「初めまして、ビーデルさん。俺はキオリって言います。こっちにいるのがカズキとスズカです」

 キオリの言葉にカズキとスズカは軽くお辞儀をした。

 ビーデルは黙ったままだ。

「俺たちは、ビーデルさんを救いに来ました」

 平和組がビーデルと会話している間に、パドラーは、捕らわれていた仲間の救出に向かう。これが効率的な作戦だ。

「救う…………だと? 7000年前に見捨てたお前たちが、俺を救うだと!?」

「そうです。確かに7000年前に異世界アトランダム召喚術式によって召喚された勇者たちは、ビーデルさんに目もくれず、魔王討伐という使命の為だけを全うしてそのまま帰って行った。それは、確かに許されない出来事だ。それは、同じ勇者である俺にも許されない恥ずべき行為だ」

「だったらッ!」

「だからこそ、俺たちは、ビーデルさんを救うんだ!」

 ビーデルの言葉を遮ってまでキオリはそう言った。

「何を…………言う! 何も知らないくせいに!」

 ビーデルはそう言えば、カズキは頷いた。

「ええ。何も知りませんよ。だからと言って、僕たちはこのまま、ビーデルさんを見過ごすことは出来ないんだ。困っている人物がいるなら助ける。それが僕たちだから」

 カズキは冷静に落ち着きを払いながらそう言えば、

「それに、ビーデルさんも、あたしたちが元に戻せることを、期待しているのではないんですか?」

「な、なにを……………………」

「あなたが、本当に勇者一行を恨んでいるのなら、既に、デラミラさん達は生存はしていません。貴方の目的はそれではないからです。トントン族の居場所を奪ったとこちらではそう認識していますが、この本には、貴方は、7000年前に、実験された研究所が破壊されたと同時に、ふらふらと彷徨って、トントン族が住んでいる住処にいつの間にかいて、ビーデルさんが、5200年前の勇者に助けられなかったことに驚愕していたことも。それにロボットのドロシーさんを獣人のテトさんの近くに置いたのは、ワザとですよね?」

 スズカの言葉にビーデルは眉根を、ひくりと動かす。

「トントン族は小人に頼んだ。小人が来たのは2000年後。まだ、瘴気はまだ出ていないはずですよね。その時に、助言されたことを実行している。違いますか?」

 スズカの言葉に、パドラー達は驚愕する。

「助言って…………一体何のために?」

 ソフィは困惑を隠せないまま平和組に尋ねた。

「小人は偶然に5000年後の今、俺たち平和組が召喚されることを知った。何故、5000年前に知ったかは、分からないが、ビーデルさんの思う勇者の価値観と俺たちが思う勇者の価値観は、偶然にも一致したんだ。だから、小人はビーデルさんに追加として異世界アトランダム召喚術式(偽)によって、勇者を追加させたんだ。そして落ち着いた時期に、ランダムで呼び出した。そうしないと、ビーデルさんを全く注目しないまま俺たちは、魔王を討伐後、異世界アトランダム召喚術式によって元の世界に帰還するからだ。それで、悪役を演じ、俺たちが来るまですればいい」

 キオリの言葉に、ソフィは驚愕しながらも納得した表情を浮かべた。

「この本には、正確な治療方法は書かれていなかった。僕たちが、ビーデルさんに逢えばそれでいいと感じだったからね」

「だから、あたしたちは、話し合うことにしたんだ」

「俺たちは、そこまで根性は腐ってはいないぞ。自称勇者一行にも言ったが、困っている人を放っておけるほど、最低な人間じゃないぞ。俺は」

 カズキ、スズカ、キオリの言葉に、ビーデルは、涙目になりながら、座り込んだ。

「ああ、君達の言う通りだ。俺は、小人に言われてガラでもない悪役を演じた。あの瘴気で俺は声が違うんだ。本当はこんな声じゃない。声変わりが中途半端に残った声なんだ。それが俺の誇りだったんだ」

 そう言って両手を顔で覆い隠したと同時に、カズキとスズカとキオリはビーデルを抱きしめた。

「辛かったんだね。声が変わってしまって恐怖してしまったんだね」

「1人で良く頑張ったな。僕たちがいるから、もう安心していいよ。一緒に原因を探そう」

「もう、お前は、1人じゃないぜ」

 スズカ、カズキ、キオリがそういうと同時に、ビーデルの身体が突如、光に包み込まれそれが落ち着くと、ビーデルの容姿は、一変していた。

 脂ぎって太っていたタンクトップに短パンだったビーデルの身体は、それら消え去り、灰色の服に茶色のジャケット、深緑の裾がゴムが付いたズボン、底が高くない茶色の靴。目鼻立ちもすっきりして、別人ともとらえられることが出来るぐらい変化していた。


どういうことだ?

【異世界アトランダム儀式召喚】

モンスターがドロップする物を触媒とし召喚する召喚方法のこと。

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