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だって、仲間だから

キオリ達平和組は、王様の実年齢を知りません。


1月28日修正

誤字を修正しました。

 翌日。

 応接間は、ピリピリムードが続いていた。

 今すぐ行くべきだという声と、様子を見てから行った方がという声の半数が分かれていた。

「落ち着いてください。焦る気持ちも分かりますけど、今は冷静になるべきだと思います」

 落ち着く雰囲気ではないことにスズカは、そう声を掛けたのだが、

「落ち着いて!? 貴方たちも焦ったらどうなのよ!? 仲間が連れだされたのよ!? 落ち着けって方が無理があるわよ!!」

 普段は冷静で落ち着きのあるリドさんは、声を荒げながらそう言った。

「だからと言って、焦っても仕方がないと思います。焦って亡くなってしまったら、ニーモジさん達は悲しむと思います。だからこそ、落ち着いて状況把握を調べるべきだとあたしは思います」

 スズカは冷静に返せば、リドさんは言葉を飲み込んだ。

 それを訊いていたようで、イリルさんとテトさんは今にも出ていきそうだった勢いを止めたことにより、その2人を止めようとしたジャスさんとグインさんはこけそうになった。

「確かに、ラーシュとソフィさんが連れ出されたのは、俺たちも焦っています。ですけど、焦ったところで解決にならないんだって、旅の途中で気付かされました。北の街に行く際に、俺とカズキとスズカは、ソフィさんと言い争いになり、後ろから襲い掛かろうとしたモンスターに気付きもせずに大怪我を負いました。その時に、焦っても最悪な結果しか生まないことを学習しました。だから、焦って大怪我をするよりも、落ち着いて行けば、失敗しません。俺たちの住んでいる日本に、焦りは禁物という言葉があります。焦って失敗するより慎重に行った方が効率がいいのなら、俺はそうします」

 俺の言葉に場は静まる。

数十分後、静まり返った応接間にリドさんは大きくため息をついた。

「確かにそうね。仲間が連れだされて冷静さを欠けていたわ。ごめんなさい。スズカ。さっきは怒鳴ったりして。まずやるべきことは、作戦を練る事。そして、東南東に本当にいるかどうかよね」

 冷静を取り戻したようで、リドさんはスズカに謝罪をしてから、東南東の全体図が載っている地図を開いてから、分析をし始めた。

 それまで荒れていたテトさんとイリルさんも止めようとしていたグインさんとジャスさんに謝罪をしていた。

 ほっと安堵の息をつく。よかった。あの出来事の二の舞は二度としたくはないというのが、俺とスズカとカズキの意見だ。あの体験は俺たちだけで十分なのだ。


 気まぐれといういい加減な理由で、デラミラさん達を呼び出したという事実は変わることがない。元々、ソフィさんを呼びだしたのも、ノリと勢いというくだらない理由だったりする。

 元々、トントン族の住処だった東南東を、男が乗っ取たのは、トントン族が時計を提供しなくなった時期とほぼ一緒であるという事が判明した。

「そうなると、こいつ人間じゃないな。この世界の人間は例外を除いて、長生きしてても70前後だぞ? トントン族が時計を作らなくなったのは、5000年前だぞ。5000年も長生きしているやつなんて訊いたこともないぞ」

 という話を王様の側近である男性が驚愕しながらそう言った。

 側近がいることに俺は、今気づいたのだが、どうやらカズキとスズカも同じのようだ。召喚された時は、困惑していたのもあって、周りをよく観察していなかったのかもしれない。もしかしたら召喚された時からいたのかもしれないが、真実は不明のままだ。

「この世界で、認知していない種族がいる可能性は?」

 クィージィーはそう尋ねると側近の彼は

「先ほど、認知された種族にエルフと同じ身長の長身族がいますが、彼らの平均年齢は1300歳前後ですし、それ以外にまだ認知していない種族多いらしいので、否定は出来ません」

 申し訳なさそうに真面目な口調でそう言った。公私を分けるタイプなのか、仕事中は真面目な口調で、先ほどの口調は慌てて素になっていたのかもしれない。

「突然変異で、年齢が変わったりしませんか? 鶏が突然喋ったりとか。魔物でも鶏がいたぐらいだし…………」

 スズカは尋ねると、側近の彼は腕を組んでからしばらく悩んだのち何かを思い出したのか、どこかへと言って数分ぐらいで一冊の本を取り出した。

 【人間の突然変異】

 と書かれた本だ。結構分厚い。

「確か…………………ああ、これです」

 その本を開いて、3200と左下の端に書かれた数字の所で止まり指を指した。


『魔王援軍による突然変異について

 魔王による瘴気を与えられた人間は、当時の姿のままの不老不死となることが判明したのは、今から7000年前の出来事。

 ある1人の人間の男を実験として、魔王が現れる度に発生する瘴気を使って実験を行った結果、1人の男性は、不老不死となった。その実験を行った当時の研究者は、国の掟破りとして死刑された』


 と書かれてあった。

「この本が作られたのは2000年前で、王宮にある書庫で3年前偶然見たのを覚えている。まさか、そいつが、7000年前に魔王の謎の瘴気により充てられた被害者だというのか」

 またもや素に戻っている側近の彼だが、俺たちも驚愕するしかない。


『治す方法は、以下の3つ。

 当時の魔王の討伐、

 当時の魔王討伐に召喚された勇者

 実験が行われた場所。』


 治す方法は分かったにしろ、当時の魔王は既に討伐済み、その時に召喚された勇者は、連れ出されたデラミラさん達とは全く関係がない。実験が行われた場所は、既に倒壊済みで、痕跡すら残っていない。

「積んでいるな…………」

 ジャスさんはそう言った。

「謎の瘴気によって、暫くは、落ち着いたが、今になって暴走するものなのか?」

 グインさんの言葉に俺たちは、暫く悩んだ。


 被害者の男性の名前は、ビーデルということが本には書かれてあったのだが、それだけである。情報はそれだけ。それ以外何もない。

「困ったな。ビーデルという男を助けることには決まったが、どう助ける? あまりぐずぐずしてはいられないぞ」

 テトさんは、腕を組みながら唸っている。

「それにあの瘴気は、あの偽物のアトランダム召喚術式で召喚された術式でも勇者候補として入るから。問題はないが、あまり長引かせたくないな」

 クィージィーさんは、地図を指さし、羽のペンで丸を囲った。

「平和組は知らないだろうから、解説をするが、魔王がいる拠点の周辺には黒い靄が、いま羽ペンで囲った範囲のようになっている。この黒い靄は半円形状に囲われている。この世界で怠惰している勇者や、アトランダム召喚術式によって召喚された勇者候補全員には、特典として瘴気が効かないようになっているが、一般人だと、この本が解説したように正気じゃいられなくなる」

 と説明してくれた。

 その瘴気で実験を行った研究者の頭は一体どうなってんだよ…………と呆れも生まれたが。


「作戦は俺たちで考えます。ですが、その前に、実際に東南東にいるか視察をお願いしていいですか?」

 俺の言葉に、パドラーさん達は驚愕したが、やがて納得した。

「平和組は自称勇者一行の説得にも成功している実績もあるし、西の街の問題にも解決したという実績まである。作戦指示は君たちに任せよう。誰を行かせる?」

 パドラーさんの言葉に

「テトさんとクィージィーさん、リドさんでお願いします」

 俺がそう言えば、テトさんは納得した。

「なるほど、身体能力を買われたわけか。視察も俺とクィージィーが最も得意とするものだ。だが、リドをお願いしたのは何故だ? 彼女は、どちらかという後方支援タイプだぞ?」

 という言葉にカズキは

「ニーモジさんとフィルセさんってリドさんのご家族なんですよね?」

 と尋ね返したことに、リドさんは驚愕した。

「何故、それが…………? 一度も教えてませんよ?」

 というリドさんの言葉にカズキは

「僕は、弟と妹達が5人ほどいるのですが、弟たちは目を離すとすぐにはぐれてしまうので、長男である僕は、弟たちから目を離さないようにして、なるべく遠くへ行かないように注意を促すのが、僕の役目です。それで、観察眼がさえまして、初めてこの世界に来た時、リドさんは、ニーモジさんとフィルセさんから離れないように傍にいましたよね? その時に思いました。リドさんとニーモジさんは夫婦でフィルセさんは、その娘だろうって。でも、今まで確信は持てませんでしたし、疑惑でしたけど、昨日、連れ出された際に、リドさんはかなり、慌てていた様子でしたし、30分前もリドさんが、かなり荒れていてそこで確信を得ました。旦那と娘が気になるのは、僕たちの世界で、よくあります。だから、貴方を選ぶように僕が進言しました」

 そう言って、カズキは笑顔を向ければ、リドさんは、黙ったままお辞儀をしてから

「ありがとう、ございます」

 と少し涙声でそう言った。

【長身族】

13頭身前後の長身の種族で、異世界の換算で98年前に王宮に認定された。

人里離れた所に暮らしており、どこに住んでいるは、今だ分かっていない。


【人間の突然変異】

本のタイトル。10万3000ページぐらいあるのだが、いまだに読破している人物はいない。


【謎の瘴気】

 魔王が現れる度に発生する黒い靄のことで、半円形状に形成されている。

 勇者や、異世界アトランダム召喚術式によって召喚された勇者は、それらが効かないが、一般人だとそれが毒になる。


【ビーデル】

 異世界アトランダム召喚術式(偽)を試した、アイツの本名。


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