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魔物の住む住処への道のり

今回は短め。

 目指す場所は北北東に住んでいる魔物の住む住処だ。

 門番の言う通り、あまり整備されていない足元に度々こけそうになりながらも、北北東へ進んだ。

 ついでだから、魔王がいるとされている住処も近づきはしないが、眺めるだけにして、そこから得られる情報があれば、役に立てばと意気込んだのだが、魔物が住んでいる住処と魔王がいるとされている住処の距離は、大体300㎞前後。魔物が住んでいる住処の後方300㎞先に魔王がいるとされている住処があるのだと、先ほど念話で教えてくれたジャスさん情報により、魔王がいるとされている住処を眺めるという作戦は、あっけなく崩れたのである。残念。


 なので、普通に魔物が住む住処へと黙々と歩くのだが、召喚されてから今の今まで運動靴だった俺とカズキと、ローファーだったスズカの靴は四次元麻袋に仕舞い込んで、北の街で、新たに購入した、この異世界の専用の、襟がもこもこした登山靴とついでに、服装も何着か購入した。

 いつまでも、学校指定の制服を着ても、帰って来た際に衣服が破れたままで元の状態に戻ってこなかったら親や教師が驚愕するのは、目に見えている。そうならないように、服も新しくした。この異世界の中でも、最も寒いとされる南の街でも適用する衣服だ。

 男女で違いがあるのだが、分かりやすく言えば、ウエスタン風の服装で、女性はそれにフリルがあるかないかの違いだ。つまり、ウエスタンフリル付きか、ウエスタンフリル無しかの違いだ。女性らしい色にデコレーションまでついていたのだが、スズカは、それを見た瞬間、微妙な顔をしたのち、デコレーションを外すようにお願いした結果、フリル付きの女性用ウエスタン衣装となったのだ。

 ちなみに、ラーシュとソフィさんは、着慣れた衣装ということで真新しい衣装には着替えなかったのだが、その理由として

「俺は、元はドラゴンだからね。あまり、服を着るという行為がないんだ。今着ている服装は、俺の所に転生してきた人間が造って、人間の姿になるたびにこうなるから、ドラゴンに戻った時破れてしまうのが…………」

 と遠い目していたし、ラーシュは

「アタシは、戦闘民族だから」

 という理由だった。



 しばらく、歩いていると

「オイ、人間」

 と呼ばれて俺とスズカとカズキは振り返ると、鶏がいた。しかも鎧を着ている。

「人間、ドコニイクツモリダ?」

「えーっと、魔物が住んでいる住処だけど」

 鶏が再び口を開いて尋ねたので、俺がそういえば

「ム? 人間ガ?」

「大分前に、魔物のトカゲに立ち寄ったら歓迎するって言われて」

 意外そうな声音に疑問を抱きつつ続きを言えば、鶏は器用に翼を利用して腕を組んで考えたのち

「思イ出シタ。平和組ト呼バレル人間ダナ?」

 と言ってきたので頷けば、鶏の彼は羽を羽ばたかせてから

「ソウカ、ソウカ! ソレナラ、ワタシガ案内シヨウ! ドラゴンノ君! 肩ニ乗セテ欲シイ!」

 とソフィさんの所に近づきながらそう言えば、ソフィさんは彼を持って頭の上に乗せた。頭の上に

 俺とカズキとスズカとラーシュが驚愕していた。あ、ラーシュも驚きの行動だったのか。

「あの、ソフィさん。いいんですか? 頭の上で」

 再び歩き出した所で、スズカはソフィさんに尋ねた。

「別に構わないよ。ドラゴンの姿だったとき巣が作られるのは、良くあったからね」

 むしろ、落ち着くと笑いつつも、器用にバランスを保っており、鶏が落ちることはない。


 鶏の名前はコーカスと名乗った。男だが一人称はワタシのようだ。

「コカトリスノ亜種ミタイナモノ。ト、思エバイイ。ワタシハ、戦闘面デハヤクニタタナイ。鋭イ爪モナイ。養鶏場ノハグレモノダ」

「養鶏場ってあるんだ…………」

 コーカスの言葉にカズキが呟くと

「東ノ街ダケダ。野菜、畜産ガ東ノミリョクダ」

 聴こえていたようで、器用に翼を曲げて得意げな顔をする。


 コーカスは魔物が住んでいる住処の名前は【胡蝶蘭】という名前らしい。

 

 この異世界では、平和組がいた地球に自生する植物が全く生えないわけではないのだが、生える頻度が地球より頻度が低いのだ。つまり希少価値として金貨99枚でしか買えないほど、高価なのである。だが、1度咲いたら、次に咲くのは16万年後。魔物が住んでいる住処に偶然にも生えたことからその名がつけられたらしい。

 

「胡蝶蘭ハ、ワタシヲ歓迎シテクレタ、イイ場所ダ。君タチ…………特ニ、獣人ニハ第2ノ故郷ト言ウダロウ。昔ニキタ獣人ハ、ソウ評シタ」

 コーカスは翼をバサバサと羽ばたかせながらそう言う。ソフィさんは気にせず前へと歩く。

「ドラゴン! 左ダ!」

「おっと、失礼。場所を移動したのかい?」

「移動シテナイ。右ハ、橋ガ壊レテイル。軍人兵ニ任セテアル」

「橋? 橋の向こうにあるのか?」

 カズキの言葉にコーカスは頷いた。

「サヨウ。我々、魔物ハ、ソコラニイル、モンスタート代ワリナイ。人間デモ、判別ハ難シイ。ソノ時ニ出来タノガ、人間ト隔テル橋。デモ、今ハ違ウ! 13年前ニ、人間ハ魔物ト、モンスターヲ区別出来ル用ニナッタ。人間側ノ魔物ト交流ヲ持ツ人間ガ、現レタカラダ。我々ノ技術ハ、人間ガ持ツ技術ヨリ進歩シテイタ。人間ニソレヲ教エル代ワリニ、人間デシカ手ニ入ラナイ物ト交換シタノダ。元々、魔物ニハ、人間ガダイスキダ! 喜ンデ商談ハ成立シタ」

「それって?」

「平和組ガ着テイル服装ダ。13年前マデハ、適当ナ布デ作ッテイタ。人間ハ裁縫ガ出来ナカッタノダ」

 コーカスは左翼を広げて服を器用につまんでそう言った。


 夕日が差し込んでから、しばらく歩くと休憩所が視えた。

「アソコデ、一泊シヨウ」

 案内役のコーカスはそう言う。

 休憩所の広さは畳9畳分。それなりの広さがある。真ん中に囲炉裏[いろり]があるのが特徴的だ。

 ここに来て急に和風っぽくなったなっと驚きつつ

「1120年前ニ作ラレタ休憩所ダ。少シ古臭イガ、我々モ使ッテイル場所ダ。キレイナノハ、保証スルゾ」

 と、コーカスさんの説明の通り、古ぼけた日記と地図と台所以外はキレイに整えられている。樽に入った野菜や藁で隠されたお肉や魚などは、半日も経っていないように見えた。

「土足禁止ダカラナ。靴ヲ脱グ用ニ」

 と言われて、入口付近で俺とカズキとスズカは靴を脱いでキレイに並べて、座椅子に座った。

 奥に襖[ふすま]があり、開けてみれば布団が8組もあったので、人数分には困らなそうだと納得しつ背伸びをする。

 少し疲れたな。明日もまた頑張ろう。


【魔王が住んでいるされている住処】

魔物が住んでいる住処からさらに北北東へ300㎞進んだ先にある。3週間ぐらいは掛かるので、途中で魔物が住んでいる住処から買い出しをしてから行かなければならない。分かりやすくいえば、東京都から愛知県名古屋市の手前までの距離ぐらいである。ちなみに、この距離を徒歩で行かなければならない。


【ウエスタン衣装】

西部劇上よくある茶色のジャケット、赤いスカーフ、ウエスタンブーツなどを浮かべて欲しいあれだ。


【コーカス】

鶏の魔物なのだが、コカトリスから生まれた亜種。鶏がまず魔物になることすらまずありえないので、亜種として認識されて魔物が住んでいる住処へ移住した。元々東の街出身。

種族名呼びをする


【胡蝶蘭】

 魔物が住んでいる住処の名前。

 異世界には生えないのだが、16万年に1回のペースで何故か咲く。薄いピンクだったり白だったり可愛らしい花が魔物が住んでいる住処に生えたことにより、その名前からとって胡蝶蘭となった。

名前の知る切っ掛けは、平和組が住んでいる地球の本から。


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