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北の街よ、またどこかで

北の街のお別れの日。


Q:キオリ達が食べた物って?

A:パンケーキに似た何か。入った店が、偶々カフェ兼パンケーキ専門店だった。



長かった滞在期間も終わり、ある程度の準備が整った後の前日。

 最終日には、自由行動して、お互いバラバラな方向にいったはずなのだが、何故か、カズキとスズカだけ、偶然立ち寄った市場で居合わせた。

「あ。キオリくんにカズキくん。偶然だね」

 確かに偶然である。

 カズキは、スズカの言葉に頷いてから

「全くだ。5人それぞれ自由行動だったのが、偶々同じ場所で出会うとは。僕も驚きだよ。そうだね。あそこで休憩しないかい? カフェっぽいし」

 そう言ってきたので、スズカと俺は頷いてからカフェでティータイムを過ごすこととなった。


 流石に、異世界語ぐらい話したいと2ヶ月目に入った辺りから思うようになった。この異世界には、カレンダーという概念が、存在していらしく、今の今まで見かけなかったのが、不思議なくらいである。そのカレンダーを作ったのは、イロイロ族と呼ばれる、時間の流れを正確に読み取ることが出来る種族で、そのカレンダーによると、異世界アトランダム召喚術式によって召喚されたのは1月13日であることが分かった。

 何故1月13日なのかは、不明。過去に異世界アトランダム召喚術式によって召喚された勇者も1月13日だったので、この世界での1月13日は特別な日として、認定されていた。ただし、曜日という概念がないため、1月13日は、何曜日かと尋ねられても、その曜日は何? となるわけだ。

 そこから、今の日付を尋ねれば、指示したのは、3月14日である。


 で、話を戻すのだが、この異世界の会話を覚えたいなという呟いたのが原因なのか、翌朝の枕元には日本語で、【よくわかる異世界語】と書かれていた本が置いてあった。

 そう。置いてあったのだ。ソフィさんに訊いても首を傾げるし、スズカの通訳で宿屋の人に訊いても首を傾げる突然現れた本。

 何故、この本が突然枕元に置かれていたのか不明だし、日本語で分かりやすく解説しているので、大変便利なのだが、如何[いかん]せん出所[でどころ]が不明。

 最初こそ、警戒して手には出さなかったのだが、3人で一緒に自由行動をとるわけにもいかず、今まで読まずにいた本を、北の街滞在最終日に手に取ったのだ。


 結果を言おう。凄く便利だ。

 行きたい場所を街の人に訊いて指を指すだけで、案内してくれるという優しい人しかいない。思わず泣きそうになるのを我慢して、そこへ向かおうとしたら、カズキとスズカにあった。そうここで、カズキとスズカに出会ったことに戻るのだ。



 3名で空いている席は、あるかと通訳本を指さしながら言えば、丁度1席余っていたらしく、そこに案内された。

 渡されたメニュー表をみつつ、適当に選んだものを指さして注文を待っている間。

「そういえば、明日は東の街のに向かうけどさ、ついでに、魔物がいる住処まで行ってみたいんだけど、いいかな?」

 というスズカの言葉にカズキは

「いいんじゃないか? 魔物のオーク…………。名前は確か…………何だっけ?」

「忘れてたのかよ。名前は名乗ってなかったぞ。あと、オークじゃなくてトカゲ」

 カズキが首を傾げ始めたので、俺がそう言えば、ああ、そうそうと頷いた。

「北北東あたりだよな? 魔王に乗っ取られたりとか」

「その心配はないって西の街の時に話しただろ」

「あー…………。駄目だ。僕の記憶力はどっかに行った」

 とカズキが落ち込んでいると同時に、注文している品が届いた。

 文字も分からず適当に選んだのが、悪かったのか、ファンシーのような料理に驚きつつ、俺は、甘いのを頼んだつもりが、スパイシーなファンシー料理。になっていた。スパイスカレーのようなものだ。

「キオリくん。あたしのと交換しない? あたし、甘いのって苦手なの」

「別にいいけど、これって辛いと思うぞ?」

「だからだよ。あたし辛いのは結構好きなの」

「そうなのか? んじゃ、交換な」

 スズカの言葉に、スパイシーなファンシー料理とファンシー料理と交換してもらった。

「にしても、これってパンケーキみたいだよな」

 カズキの言葉にスズカは交換してもらった料理を一口食べながら頷いた。

「偶々、指さしたのが、パンケーキだったとか。それか、この店がそう言うの専門店だったりとか」

 俺の言葉に、カズキは、そっかーと呟いてからパクリと食べた。


 話は世間話になった。お互い共に行動はしているが、詳しい事情は分かっていなかったりする。3ヶ月の間、勇者候補として召喚されたことも、戦闘に初めてしたりで、それでも、暇を見つけては会話をしていたりしている俺たちなのだが、その暇を見つけることすら与えなかったり忙しかったりするのだ。

「カズキくんとキオリくんは、辛いの苦手なの?」

「僕は、好きじゃないよ。寧ろ苦手。普通のカレーライスの中辛すら辛いって言ってしまうからね。いつも、甘口。甘い方が好物だよ。苦いのも苦手だし。キオリは?」

「俺? 俺は普通だな。甘いのも辛いのも中間ぐらいが好き。滅多に食べないだけだからな。逆に苦手なのが、炭酸系だな。しゅわしゅわって感覚が嫌なんだよな」

「炭酸? サイダーとか?」

「そうそう。あと、臭い奴。高校1年の時、賞味期限が切れているのにも関わらず、それを知らずに食べたことがあって。それで腹を下して以来嫌いになった」

「え。何食べたの?」

「ヨーグルト」

「ヨーグルトって賞味期限過ぎると酸っぱくならない?」

「なるんだよ。なんか酸っぱいなと思って食べたんだよなー。それ以外は好きだけど」

 などと、喋りつつ、果実系のジュースを一口飲んでから

「そういえば、スズカは甘いものが苦手ならお菓子も食べないってことか?」

 と尋ねると

「お菓子は、辛いお菓子があるからそれを選んで食べるよ。たまに寿司でワサビがたっぷり入っているのってあるじゃない? あれが一番好き」

 と少し恍惚[こうこつ]な顔をしつつそう言えば、カズキはあからさまにドン引きした。

「えー。あれって、結構キツイから嫌なんだよなー。辛くても少なめに入ってればいいのに」

 若干項垂れつつカズキはそういう。

「あれって寿司ネタを下にして食べるといいって訊いたことあるぞ」

「え? 本当? 帰ったら実践しようかなー」

「帰ってからって、覚えているかどうかさえ分かんないよ」

「覚えてたらだよ。僕の家、卒業祝いに寿司食べるって決まっているんだ」

「いいなぁ。それ、あたしなんて…………」

 という内容が繰り広げられていた。


 銀貨4枚で支払いを済ませた後店を出れば、既に夕日は傾き始めた。

「あはは。あれからずーっと話し込んでたね」

 とスズカは笑顔で笑いながらそう言うので、俺は頷きつつ

「確かにな。自由行動と言ってもすることは無かったし、結局は3人組が落ち着くという結論まで至ったからな」

「僕は、それなりに楽しかったよ。ソフィさんとラーシュにも話を聞いてみたいと思えるようになったし」

「あー。確かに」

 帰るときも結局喋りながら帰った。


夕食を食べ終えて、明日の昼には北の街を出発するので、その片付けと準備をしていると

「あ、そうだ。ソフィさん。魔物がいる北北東に立ち寄りたいけど、いいかな?」

「北北東? 別に構わないよ。魔物が住んでいる場所だけど、魔王の影響で少なからず人が多いと訊いたから、食材は大目に買っていたほうがいいかもね」

「じゃあ、午前中に大目に買い物します?」

「それもそうだね。午後から出発だし。君たちが気に入っていたあれも持ち帰って昼食用に食べよう」

「了解。僕、スズカ達に伝えておきますね」

 カズキは片付けも終わったのか、そう言って部屋を出て行った。


「君は、気づいているのだろう?」

 さっきまで明るい空気だったのが、一気に暗くなる。

「…………何をですか?」

 俺はそう言うと、ソフィさんは少し含み笑いをしつつ

「誤魔化すなら、それでいいさ。君にも話せない事柄をカズキとスズカには話している。それにあの二人は君との繋がりが強いから選ばれただろうから」

「学校が違うのにか?」

「学校? ああ、制服というのは、呼び名は一緒だけど、学校が違えば違う制服になるのか。いやいや、そう言う意味じゃないよ。まぁ、いずれ知るだろうね」

 曖昧な言葉に何かを言う前にカズキが戻ってきてこれ以上は。何も言えなかった。


 翌朝。

 朝食を食べ終えた後、荷物を纏めて宿屋を後にした。女将は笑顔で手を振って見送ってくれ、市場で野菜と果物をある程度購入してから、門番と会話をした。

「次は、どこに行くんだ?」

「東の街です。その前に魔物に会う予定で」

 と言えば

「ああ、なるほど。北北東だからな。あそこは荒野だから、少し足場が悪いが、君たちなら大丈夫だろう。頑張れよ」

「はい!」

 門番へお辞儀をしたのち、俺たちはまず魔物がいる北北東へと向かった。


【イロイロ族】

カレンダーを制作している種族。時の流れを正確に読み取ることが可能。ただし曜日がないだけ。


【よくわかる異世界語】

突然枕元に現れた代物。北の街滞在して4日目の朝には置いてあった。

誰が置いたのかは、現時点で不明。


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