重要なのは、慣れでした。
次で、北の街から東の街へ出発します。
模擬戦闘訓練でのアクションシーン。
戦闘シーンはちょくちょく入れたいですけど、上手く伝わっているか問題になりますね。
ラーシュが若干空気になっています。気を付けないと。
あれから、訓練所に足を運んで、毎日模擬戦闘をしている。特に油断しやすい東の街に住んでいるモンスターは、常に気を張っていた。休憩した場所から襲ってくるという油断大敵すぎる作戦なので、カウンターは徐々に減ってきてはいるものの、それでも確実に慣れているという証拠が目の前にあることに、思わず顔が綻ぶのが分かる。
しかし、ラーシュとソフィさん組で東のモンスターの模擬戦闘はカウンターは50前後しか回っていない。カズキ、スズカ、そして俺の3人で合わせてもまだ100以上あるので戦闘の慣れというのに実感せざる負えない。
適度の休憩、水分補給などを行いつつ3回目の挑戦。
模擬戦闘は所謂、この世界の魔術で構成されており、難易度の設定が決まったら場所は移り変わるという不思議な仕組みを利用していた。
あの汗臭さが残る訓練所とは打って変わり、森林。東方面は大体森林で覆われている。北の街が草木が生えない分、頑張って生えてやるみたいな根性で生い茂っているのだ。それに、視界も薄暗くなり、雑草も腰まで伸びきっているから、いつ、どこでモンスターが襲ってくるかが分からない。雑草の動きで判断しなければならないのだ。
「今日は、個人でやってみよう。この森林逸れやすいから、今まで一緒にいたけど、はぐれた可能性を考えて個人戦をしてみたいと思ったの」
というスズカの要望で、確かにそうだと俺とカズキは思いいたり、個人で戦闘に挑んでいた。
「はぁッ!!」
サーベルを思いっきり振りかざして、会心の一撃のつもりで攻撃すれば、モンスターの断末魔と同時に、泡となって消えた。
いつも思うんだが、この仕組みってどうなってるんだ? 倒したと同時にアイテムとお金が出てくるのも疑問なんだが。
「………はぁッ!! 次ッ!!」
戦ってはやってきての繰り返し。東のモンスター達の作戦、油断大敵が始まっている。魔法を使って一気に蹴散らすのもありなのだが、俺は、術式を直接発動させたり発動することは出来ない。今だに紙の媒体の術式発動しか出来ないし、直接発動させることが出来るソフィさんでさえ、東のモンスターは魔術を発動させてくれる暇を与えてないのだ。
「まだまだッ!!」
大分慣れて来た。それまでに3回ほどやられてはいるが、何とかなるものだ。あのモンスターの習性もよくわかった。一つ覚えたらそれしかしないという単純な理屈だった。初見は知らなくても慣れたら以外と行ける。初見殺しというやつだ。RPGでは絶対に、何回か挑戦して飽きられてしまうゲームみたいだとは思う。慣れればどこに、モンスターがやってくるかなんて検討が付く。
ビーッ
という終了合図と共に景色は一瞬で変わり訓練所へ戻る。
カウンターは53と表示されている。
「キオリ。お疲れ! 後半になるにつれてカウンターの減りが遅くなったけど、慣れたのかい?」
ソフィさんは水の入ったコップを渡しながら尋ねてきた。
「規則性が分かったので、それで、ですかね? カズキとスズカは…………?」
周りを見回すと俺とソフィさんだけのようで、ラーシュとカズキとスズカの姿が見当たらない。
「二人なら、先に終わって訓練所に設置してあるシャワー室の方へ向かったよ。ラーシュはその案内だな。遠距離武器のスズカは武器を投げる際に、襲われていて69回。カズキも同じ理由だけど、途中で木に引っ掛かったりで60回ぐらいだったよ。それでも二人とも法則性は覚えていたみたいでね。後半ぐらいからカウンターが止まり気味だったよ」
なるほど。
「僕とキオリは、お互いに接近戦だから、遠距離と中距離を擁護しつつ戦っていこうか。明日は5人でやってみようか」
「あ、確かに5人で一緒には、まだでしたよね。ついうっかりしていましたよ」
そうなのだ。
模擬戦闘訓練は常にソフィさんとラーシュの戦闘慣れしている組と平和組で分けていたのだが、その理由としては、北の街に着く前に、足を引っ張ったの苦い記憶があるためで、平和組は、まずは3人で訓練を行いたいという理由があったのだが、それが3日続いて習慣的に戦闘慣れ組と平和組で分けるようになったのだ。
5人で模擬戦闘を行って実際にどう動くかを考えなければと思っていると、ラーシュたちが戻って来た。
「あ、キオリくん! お疲れ様」
「お疲れ。キオリ」
「おう。スズカもカズキもお疲れ」
スズカとカズキは、口裏を合わせたかのように同時に喋っていたので、俺は思わず口角が緩みそうになりながらも返事をした。
ソフィさんは、戻ってきた3人に明日の模擬戦闘訓練場は5人で一緒にやらないかという話を持ち掛ければ、ラーシュは手を広げながら返事をし、スズカもカズキも今気づいたのか、納得してから頷いた。
翌日。
今回は、初めて5人で模擬戦闘訓練を行うことになった。設定してからいざ東のモンスター模擬戦闘へ!
草木が生い茂っている地点に5人固まって移動をする。それぞれの武器を持ち入り、周りの気配の殺気感じつつも、前へのほうへ歩いていくと、スグに草木が揺れて数秒してモンスターガ襲ってきた。
前にスズカがいたのだが、とっさで後ろに隠してサーベルで攻撃を受け止めた。受け止めている間に、同じ接近戦のソフィさんがモンスターを倒す。
「あ、ありがとう。キオリくん」
スズカの言葉に俺は、サーベルを振ってから返事を返す。
「ああ。気にすんなよ。だが、まだ終わってないから油断するなよ」
「う、うん!」
これは、まだ序盤だ。一番つらいのが後半戦だ。最初の模擬戦闘訓練場を終えた翌日の朝は、ひどい筋肉痛に見舞われた。普段使っていない筋肉を酷使したからなのか、起き上がる、立ち上がる、座る、横になるという、普段は気にしないであろう動作にも筋肉痛の痛みが走ったのを俺は覚えている。
2度目、3度目と繰り返すうちに筋肉痛は起きなくなった代わりに、1人の男性が、体格がよくなってないかと尋ねられた上に、身長も少し伸びていた。
シックスパックみたいに筋肉が出て来たわけではないが、体力が確実についていることに俺は言われて実感したのだ。
「はぁッ!!」
サーベルを利き手である右に力を入れながら思いっきり振りかざす。
ゴブリンのモンスターは悲鳴を上げて泡となって消滅する。そしてさらに迫ってくるモンスターの大群。
「これでッ!!」
スズカは隙を見て、攻撃するという手法をとり、取りこぼしたモンスターをカズキのモーニングスターで倒し、同じくモーニングスター使いのラーシュも上手くモンスターを的確に狙っていく。
かぎ爪らしき武器で戦うソフィさんに続いて、取りこぼしのモンスターを次々と倒していく。
「それッ!」
「やぁッ!!」
断末魔を叫びながら消えていくモンスターを眺めつつ、俺たちは武器を構え直して、またモンスターと交戦した。
「まだまだッ!!」
終盤戦に入っていく、次々と休むことなく襲ってくるモンスターの攻撃。
息を整える暇さえ与えないモンスターにイライラしつつも、左腕で汗を拭いながらモンスターを倒していく。
「次ィッ!」
ソフィさんも戦闘で昂[すこぶ]ったのか、横目でチラリと見た時、猫目みたいに瞳孔[どうこう]が細長くなっていて、顔が笑っていた。一瞬で目を逸らし、唾を呑んだ。俺も瞳孔が小さくなっているのだろうか…………?
ビーッ!!
という音と同時に、場所は訓練所へと戻る。
そして、カウンターの回数は13回でストップしていた。
「あー! 悔しいな! できれば、0回目指してたんだけど」
スズカの言葉にラーシュも頷いた。
「でも、5人での戦闘、スゴカッタ!」
少しドヤ顔でそう言うラーシュにカズキは噴出しながらも
「確かにな。5人での挑戦で13回はすごいな」
と言ってついには笑い出した。
「みんなお疲れ。今日は、早めに帰ろうか」
ソフィさんの言葉に全員は頷いた。
ああ、本当に今日はいい経験をさせてもらった。
【模擬戦闘訓練場】
ジャンジャン族が作ったとされる機械と魔法という概念が融合した結果、VR空間使用になっている。
ただし、痛覚の感覚が直接来るという謎の技術もある。
使用が鬼畜すぎるのが玉に傷。
【瞳孔】
目の部分の黒いところ。ネコ科の動物は明るいと目を細め、暗いところだと瞳孔が大きかったりする。
瞳孔を知らない人がいる為に説明しておきます。