オート
先代の王様であるロイが魔王に関する言語、行動、仕草などに関する資料などに二千年以上禁止令を発動したのは、ロイが死去してから三日後の事だった。
魔王が悪いというロイ派と魔王が悪いやつとは限らないクローズ派の派閥が二つ出来ていたのだが、派閥に関する争いが起きたことは現在に起きても一切なかった。
北北東に位置する観光客が滅多に来訪することがない山地に暮らしている研究者である男性オートという人物は、そんな派閥など意を介さずに、ある資料だけを調べていた。
「ああ、なんという素晴らしいことなんだ! 既に人間と魔王が共存して生きて生還していたとはっ…………! これは、なんとしてでも解明しなければ!」
初代平和組と初代魔王に関する資料が、オートの研究所の隅に偶然にも発見した『この世界史』に記載されている初代平和組と初代魔王の馴れ初めを目を輝かせながら興奮気味にペンと紙をもって使用して机にかじりつくぐらいに夢中になっていた。
初代平和組である人物の名前は、『リツノ』『カワノ』『マエムラ』である。三人の共通点はお互いを苗字で読んでいたことぐらいで、性別は女性二人、男性一人の構図だったらしい。特にリツノは、魔法、魔術や戦闘技術などを得意としてカワノとマエムラを常に先導していたと書かれてあった。