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逃走劇
「すみません。私がいるせいで、こんなことになってしまって…………」
「いや、ヘルモーズのせいじゃない。スズカやカズキ、ソフィさんにドロシーはヘルモーズの事を信じていたじゃないか」
落胆した表情を浮かべるヘルモーズを慰めるべくキオリは先ほど交わした会話を思い出しながらそう言えば、ヘルモーズは首を横に振った。
「いいえ、それは私を信じたのではなく、キオリさんの言葉だから信じたのです。キオリさんの証言がなければ、私の証言に信憑性はなくただの妄言として片づけられ殺されたことでしょう」
暗い表情のままそう言うヘルモーズに、キオリは目を見開きながら口を閉じたり開いたりして、数分ぐらい考えて出てきた言葉の全てがヘルモーズにとっての信用の無さを自覚するだけだと思い至りやがて黙ることしか出来なかった。