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互いには隠したい秘密がある。

平和組以外には、ある秘密があり、平和組だけが知っている秘密がある。

秘密を隠すというのは、そういうことだろう?

 ソフィさんによる説教は、長く続いた。主に俺は、寝るまで正座の系だったわけがだ、仕方がない。迷惑をかけたし、心配もかけた。これくらいの罰ぐらい甘んじて受け入れるほかない。

 隣の部屋で寝泊まりしているラーシュにも謝罪すれば、

「キオリは、優しいネ」

 と言われて花のエフェクト付きの笑顔を貰ったので、思わず撫でてしまった。


 翌日

 朝食を食べていると、北の街の警察官らしき人がやってきた。民宿兼料理屋を兼任しているせいか、どうかは知らないが、元々宿泊していた客以外にも、外から地元住民がざわついていて群がっていた。元々、この民宿は、テラス席と店内の開放的な料理屋として有名のようで、それに関連した絵が所々に飾ってある。

 だからなのか、俺たちが座っていた席は店内のほうだったが、テラス席で食事をしていた地元住民も顔を覗かせてくるぐらいだ。


 騒ぎを引き起こす原因となった警察官らしき人は巻物らしきものを取り出して、それらを俺とカズキとスズカに渡した。

 その巻物は、横書きで何か書かれているが、さっぱり分からない。異世界文字だろう。

 警察官らしき人でも、偉い人だと思わしき人は、俺とカズキとスズカに敬礼をしたのち、ジャラジャラと音を立てた小銭入れの麻袋を3つを俺に渡したのち、何かを喋ると、俺とカズキ、スズカ、ソフィさんとラーシュ以外の全員に歓声が起きた。

 え? どういうことだ?

 と俺たちの混乱を他所に、警察官らしき人達は俺たちに向かって敬礼したのち、民宿から出て行った。

「? …………一体なんだったんだ?」

 俺の呟きに、スズカもカズキも首を傾げて、そして北の街は俺たちの言語を知る人物が全くではないが、少ないのが分かってしまうぐらい、歓声に満ちていた。

 いわば、名シーンを逃がした観客のような気分だ。分かるだろう?



 昨日、庇った男性と女性は、俺たちにお礼をしたいという事で、彼らの案内の元、北の街の商店街を歩いていた。その時に、俺たちの言語が話せる男の人にはなしを訊いてみると

「ああ、今朝の号外は君たちのことだったんだ」

 と納得の表情を浮かべたのち

「ここの街は週に1回だけ、この街で多大なる功績を上げた人物に、警頭兵から謝礼金と礼状が貰えるんだ。ちなみに返品は出来ないぞ」

 と説明してくれた。ちなみに警頭兵というのは、日本でいう警察官のことだ。

 なるほどと納得しつつ、あの1袋に金貨300枚入っていたんだが、返品が出来ないことに少しだけ遠くを眺めてしまった。渇いた笑いしか浮かばないぞ。

 また、号外に載っていたことにプラスされさらに、魔王討伐の本物の勇者一行だと分かると、祀りたてられた。

 果物店に来たら、無料で果物を大量に渡されたりなんたりと、いろいろあって困惑しつつも受け取った。貰わない手もあったのだが、そうしようとしたときに、悲しい目をされて、思わず引き入れた。

「君たちには感謝しているんだよ。ありがたく受け取っておくといいよ」

 と男の人はそう言ったし、隣に歩いていた女性も頷いた。

「ちなみに、僕は東の街からこっちに移住してきたけど、北の街は返品という概念がないからあきらめた方がいい」

 返品出来ないのではなく概念すらなかった。

「返品したら、え? いらないの? 好意で渡しているのにっていう顔になるんだよ。それで拒める人がいたらぜひ紹介して欲しいね」

 と男の人が言うぐらいの概念のなさだ。

 納得せざるおえないのは何故だろうか。妙に説得があるなと思っていたら、どうやら彼は、この街に移住して初めて多大なる功績を上げたらしく祀り上げられたらしい。何が多大なる功績になるかは一切不明なので、本人も諦めかけているのだとか。そりゃあ、諦めるしかないよな。


 午後には、二人がお勧めだというサンドイッチに似た何かの専門店へと訪れた。

 普通の店だと銀貨3枚とるらしいのだが、このお店は、銅貨2枚で販売しているので、手ごろでの安さ有名で王様もこのお店に訪れるほど、人気が高いのだという。

 この、サンドイッチに似た何かはとても美味しい。特に、肉を挟んだ肉サンドが美味しい。あふれ出る肉汁に絶妙な焼き加減。口に広がる香ばしさが何とも言えない。正式な名前はあるらしいが、何せ翻訳が難しいとされているので、俺は肉サンドと心の中で呼んでいる。

 

 昼食を食べた後、北の街でしか自生していない植物園を見に行ったり、何故か動物園まで会った。

「アレは何だ?」

「あれは、熊だよ」

「熊!? あれが!?」

「君たちのいる熊はどういう風なのかは分からないが二足歩行で、歩かないのかい?」

「少なくとも熊は四足歩行だぜ…………」

 この異世界の動物たちは、どうやら二足歩行らしい。四足歩行なのは、猫、狼、犬の3種類のみ。悲しい。どういう進化を遂げたんだ。と疑問が残るが、地元住民でも詳しいことは分かっていない。元々、二足歩行でしょ? と疑問には持たないのだ。

 

 キオリ達が動物園を見学している一方、ソフィとラーシュは、一緒に行動していた。

 そう。ここで、キオリ達は知らないことが一つだけある。

「どうも」

「おー! お前さん、あの時のドラゴンさんじゃないかい。彼らは一緒じゃないのかい?」

「ええ。まぁ…………。獣人も一緒ですがいいですか?」

「もちろんもちろん。さぁさぁ。こちらへどうぞ」

 キオリ、カズキ、スズカは知らないが、異世界アトランダム召喚術式によって呼ばれた召喚者は、平和組を除いて、既に、この世界の言語を習得済みなのである。

 初めて異世界アトランダム召喚術式によって召喚された平和組だけ、この異世界の言語が分からないだけで、他は全員分かっていたのだ。だが、自分たちだけという負い目を無くすためにワザと知らない言語で翻訳出来ないと言っているのだ。

 もちろんそれは、この異世界の住民も知っている。だから、平和な世界から来た住人が異世界から来たというのは、すぐに広まったのだ。

 ただ、知らないのは、この異世界の仕組みというだけだ。


「さぁさぁ。飲みなさいよ。酒には強いかい? この酒はよくできている!」

「いやいや、ドラゴンさんは、この酒が行けるだろう!?」

「獣人さんは、どれが行けるんだい?」

 酒の勧めがすごい。

「あー…………あたしは、いいよ。まだ大人の儀を迎えていないからね」

 ラーシュは困ったように笑みをこぼす。

「お堅いねぇー。妖精さんもハーフエルフさんもお堅いけど、君はさらにお堅い」

1人の男性が、ラーシュの肩を組むようにしてから呆れたような顔をして右手に持っていた酒をラッパ飲みした。



「……………………なるほどな」

「? 何が?」

キオリの独り言にカズキは首を傾げる。

「いや、何でもないさ。変な噂を耳にしてな」

「変な噂? ここの言語も分からないのに、そう言うのは、分かるのか? キオリは、最初に会った時から耳がいいからね」

 平和組は、宿屋に戻っていた。

 いろいろ見学したのち、楽しそうな会話もそこそこにして、男女2人組と宿屋まで送り届けて別れたのだ。

「でも、いいの? キオリくん。ソフィさん達に伝えなくて」

 スズカの言葉にキオリは頷いた。

「ああ。ソフィさん達だって隠し事の1つや2つあるだろう。俺は、カズキとスズカにだけなら何故か、話していいかなって思えたんだ。不思議なことにな」

 とキオリが言えば、スズカもカズキも頷いた。

「あ、それには、同意するよ。僕もキオリとスズカになら話していいって思えるし」

「あたしもだよ」

 お互い顔を見合わせて笑った後、

「戦闘の自主訓練しようぜ。明日は確か、戦闘訓練をするんだったよな?」

 キオリの言葉にカズキもスズカも頷いたのだった。

【警頭兵】

日本でいう警察官のこと。~兵は、戦闘が一般市民で唯一許されるという称号のようなもの。

けいとうへいと読むが、警頭は造語である。調べても出ない。ここのオリジナル造語だぞ


【巻物のようなもの】

感謝状だが、文字が読めないので巻物ようなものとキオリ達は思っている。


【サンドイッチに似た何か】

見た目はサンドイッチだけど、そうじゃないという曖昧さがある。

味はパンのようでごはんのような曖昧なものに食材を挟んでいるのでキオリ達はサンドイッチに似た何かと呼んでいる。


【動物】

全員、二足歩行している。最初から。四足歩行なのは、猫、オオカミ、犬だけ。


【大人の儀】

獣人界による大人になるための儀式。いろいろ戦闘を積んで、1人前に

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