146/177
神社の秘密
後ろから流れてくる風は冷たく、温度調整が得意と言われている高天原に住む魔族でも鳥肌が立つぐらいに廃れた神社は寒かった。
「ダメだな………………。何度来たって慣れないな」
眉間に皺を寄せながら火照命さんは、両手で両腕を擦りながらつぶやくようにそう言った。
「何度か来たことがあるんですか?」
俺も身体を温めようと足踏みをしながら尋ねれば
「そうだね。現地調査の為に十回以上は足を運んだよ。ただ……予測出来ないのは、同じ時間帯にいつも訪れるのだが、その度にこの神社の温度は暑かったり寒かったりするんだ。試しに時間をずらして訪れた時もあるが、結果は同じ。法則性が見えない以上予想しようがない。君が来るまでの間は暑い方が多かったから防寒具は持ってきてないんだ。すまない」
火照命さんは、ぴったり九十度、頭を下げてからそう言った。
「え。あ、いや! あの! 気にしてないんで! ええ!!」
頭を下げられたことに困惑してしまった俺は、慌てて火照命さんに顔を上げるように焦りながら懇願すれば、火照命さんは納得のいかない不機嫌そうな表情をしていた。