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迷子族による手助け

手紙の内容は『』で統一します。


10月03日 修正

誤字の修正

 この異世界の北の方角には危険地帯が幾つか存在していた。

 砂嵐、蜃気楼、寒暖差など。命に関わるようなことじゃないが、この異世界はこれらを危険であると判断したのだ。

 何故危険だと判断されたのか、理由は不明だが、北の方角に用がある人物以外は、北の街に住むこの異世界本来の勇者でさえためらうほど、危険地域だと判断されていた。



 砂漠地帯に入って3日が過ぎたが、目的地でもある中間地点の休憩所に辿り着けないでいた。

 というのも、昨日の夜辺りから、強い風が吹き始めて朝方には止むだろうと思っていたら、止む処か激しくなっており、ソフィさんが加わってから、先頭を率先して歩いているソフィさんが見えるのだが、それが砂が舞っているせいなのかどうかは不明だが、ソフィさんの姿処か、近くにいるはずのカズキたちとも見えなくしていた。それだけ、視界が悪いというこを物語っている。

 で、メンカリナンさんの話で北の方面へ進むなら気を付けた方がいいと散々、念を押すかのように、言われたのを思い出した。

 そう迷子である。


 砂嵐が止んだ頃には、靴やら服のポケットやらに砂が入り込んでいたし、視界がハッキリしてきて周りを確認すれば、俺は見事に逸れていた。

「嘘だろ…………。いつ逸れた?」

 俺は思わず頭を抱えた。

 場所は不明。北の方角なのは分かっているが、どこで逸れたのか全く分からない。ソフィさんが逸れないように、何かをしてくれたような、していないような…………。

「はぁー…………。北のモンスターは、まだ手も足も出ないし、かと言って留まるとモンスターが覚えて攻撃してくるし…………」

 地図などの貴重品が入った麻袋を持っているのは、ラーシュ。飛ばされないようにと自分たちの荷物を預かったのはソフィさん。ので、今持っている所持品は、サーベルと杖のみ。

 最悪な状況に俺は両手で頭を抱えていると、背中をツンツンされて、振り返ると、俺より一頭身ほど小さく全身が木製で造られた種族がそこにいた。


「ケガ?」

「え? あ、いや。怪我じゃなくて、仲間と離れ離れになったんだ」

「イツ?」

「砂嵐が吹き荒れていた時だ。北の街に進む時に、その途中にある中間地点に向かうところだったんだが、その時にだな」

「コチ」

「こち? あ、おい、ちょっと」

 その謎の木製で造られた種族は俺の服の裾を引っ張りながら歩き始めて俺は引っ張られながら着いていくことになった。



 で、連れていかれた場所は、砂漠に唯一残っていた大きな大樹の中だ。

 大樹の中は、外見と比べてば意外と広く、人工で造られたと思われる太陽や、木製で造られた家などが、幾つかあり、大樹の中なのに、風が吹き通っていた。

「ココ」

「此処?」

 で、ようやく立ち止まって座るように指示されたのが、噴水と遊具がある公園のような場所で、そこにある木製で造られたベンチだった。

「マテ」

 と言って木製で造られたそいつらはその場から離れた。

 待てと言われて、おとなしく座って待っているが、何もすることがない。というかここはどこだ? 地図上にも載っていない場所だったはずだ。多分。自信がない。

 なんとなく周りをキョロキョロ見回すと、この公園のような場所は人気がないのか、木で造られた謎の種族はいなかった。

 しばらく待っていると、どこからか音楽が流れ始めた。遠くから聴こえる音楽に耳を澄ましていると、眠気が起きてそのまま重力に従って瞼を閉じて、そして、いつの間にか眠っていた。



 次に、目を覚まし時には場所は移動しており、あの公園ではなく、小屋の中で、布団の中に入っていた。

 顔だけを動かして全体を見るが、木製で造られた新しい小屋としか分からない為、上半身を起こしてから周りを見ると、台所と氷が入った樽に入った食材の数々と8人用の布団があってそれだけだ。広さは前に泊まった小屋と同じだ。小屋ってこのぐらいの広さが普通なのか? と疑問に思ってしまう。

「あ、キオリくん目が覚めたんだね」

 と言われて振り返ると、反対側の入り口にジャスさんがいた。

「え!? ジャスさん!?」

「うん? そうだよ?」

 何を当たり前なことを訊くんだいというような顔で首を傾げられた。

「あの、俺、大樹の中にいたと思うんですけど…………」

 と、尋ねれば

「君がソフィ達と砂嵐の中歩いていて、砂嵐が消えた後に、君だけがいないことに気づいたスズカが念話で連絡してきたんだよ。同じように西に向かっていたあたしたちが、先に中間地点である、小屋に着きそうだったから、小屋に着いてから荷物を置いて合流してから探そうって事になって、いざ小屋の中に入って荷物を置こうとしたら、君がそこで寝ていたわけだよ。一昨日あたりに酷い怪我をして重傷していてその副作用で寝ぼけてこっちに来たのではないかというのが、僕たちの話だったんだが…………。大樹の中って言うのは?」

 とジャスさんは首を傾げるので、俺は、ソフィさん達と離れ離れになってからの経緯を詳しく、尚且つ分かりやすいように説明したら。

「それって迷子族のことかな?」

「迷子族?」

「北の街では、伝承にもなっている。伝説の種族で、魔王の在りかついでに、教えてもらったよ。迷子になったら、どこからともなく現れて、どこかに案内されて眠ったら部屋に戻っていたなんて、話さ。特に子供たちで迷子経験のある子は、大樹に案内されて気づいたら寝てたなんて話もあったけど。ほとんどが信じていない話さ。なるほど。それにキオリくんが運がいい。彼らは滅多に見かけない稀な種族だ、迷子でも土地勘があったり、ワザとだったりしたら彼らは来ないからね」

 と感心するように言われた。

 迷子族か…………できれば、お礼を言いたかったな。


 その後、ソフィさん達とイリルさん達がやってきて、嬉しそうに俺を抱きしめてくれた。ジャスさんは、ソフィさん達に、俺が迷子族に出会ったことを話せば、カズキとスズカは羨ましがられたのは、少し驚いた。なんでも、滅多に会えない種族に会ったということが羨ましがられる対象のようだ。俺としては、迷子になることが恥なのだが、言わない方がいいな。と思い、苦笑いでその場を乗り切った。

 そのまま昼食の後は、ソフィさん、イリルさん達、ハーフエルフとジャスさん達、妖精と一緒に戦闘訓練を教わりつつ、日が暮れて小屋に戻ってから夕食を取り、ピクシーのララさんと挨拶を交わしてから、西の街はこうだったとか、北の街は、ああだったとかの情報交換してから寝て、翌日には小屋を出発することとなった。

 イリルさん達とジャスさん達プラスララさんは、先に小屋から出発して行き、俺たちは小屋を奇麗にしてから出発する前に

「あ、そうだ。忘れてた」

 俺はみんなが寝ている間に書いた手紙をテーブルの上に置いてから、ソフィさん達と一緒に北へ道のりを歩き出したのだった。



 平和組とラーシュ、ソフィが離れた小屋の反対側から迷子族が顔を覗かせて、仲間たちと談笑しているキオリをみてから微笑んでから小屋の中へと入って行った。

 小屋の中央にある丸テーブルに手紙があった。

 それは、キオリの出身でもある言語で


『迷子族様へ

 先日は、俺を助けてくれてありがとうございました。直接お礼を言いたかったのですが、滅多に会えない種族だとお聞きしたので、手紙に残すことにしました。

 俺たちは、魔王討伐によってこことは違う異世界から召喚されたものです。いずれ、魔王討伐が終わりましたら、その時に改めてお礼を言わせてください。

 キオリ』


 と書かれてあった。

 迷子族はその手紙を見て嬉しそうな顔をした。

「ヤサシイ」

「オテガミ」

「カンシャ」

 それだけ言って迷子族はその手紙を持ってその場から消滅するかのように消えた。



【危険地帯】

砂嵐とか、蜃気楼などの砂漠に必ず起きる現象。危険地域だと言われているのは、砂嵐とか蜃気楼などが魔王が来る前は、2万年に一度の割合でしか起きなかったのに対して、魔王襲来後は、半日に1回あるかないかの頻度が急上昇し、危険地帯と化している。

つまり、慣れていないだけ。人為的な被害はない。


【迷子族】

北の街で伝わる伝説の種族。名前の由来は迷子になったら現れる為。正式名称は不明。

6頭身前後の種族で、大きい大樹の中で暮らしているとされており、土地勘がよかったりワザと迷子になったりしていると現れない。

滅多に会えない種族で、子供のころにはよく見かける種族とされているが、全く信じてもらえない。

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