プライドの衝突
細かく描写していないものの流血注意。
やっとR-15らしい作品になった。
キオリの回想はちょくちょく入れます。
10月19日修正
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砂漠地帯に入ってから、1日目。
北へ進むにつれてモンスターとの戦闘に俺とカズキとスズカは、疲れを感じていた。西の方角は難なく倒せたのだが、北の方角はモンスターと戦闘は雲泥の差ほど、違う。いや、戦闘慣れをしていないからそう感じるだけなのか、分からなくなった。
それを見かねた、ラーシュとソフィさんは、俺たち平和組に、戦闘の訓練を手伝ってくれることになった。もちろん、最初は断ったのだが、ソフィさんは
「君たちに、無理に戦闘を慣れろとは言わないよ。でも、焦ったら元も子もないと君たちの世界ではそういう言葉があるだろ? 焦らずに、休息をとることも忘れずに、進めばいいさ。それに、俺とラーシュは戦闘経験がある。大きな壁があったら一人で飛び越えるより、協力して飛び越えるほうが断然ラクだと思うぞ」
ということだ。情けない話。プライドという奴がそれを邪魔してきて、一旦、平和組とラーシュ、ソフィさんで揉めた。
その揉め事の際に、言い争っていることに夢中になっていたからなのか、背後から近づいてくるモンスターに気づくことなく、ドサリと地面に落ちる音が聞こえた。それが一体何の音なのか振り向けば、スズカの左手小指、カズキの左肘から下、俺の右腕が、地面に落ちた音だと知ったと同時に、スズカとカズキは乗り越えたものの、俺はとっさに左手で右腕の血を庇ったが、それでも、止まることを知らない赤黒い血の勢いが止まるわけでもなく、左手の指という指の間に溢れ出る赤黒い血の光景を最後に、俺は意識を失った。
白くて紫色の首輪した大型の犬と赤い色の首輪をした三毛猫、そして、父と母。それが俺の家族構成だ。
マレンマ・シープドッグという犬種で、元々従兄弟の家で飼われていた犬だったが、最近生まれた娘が犬アレルギーを発症し、やむなく手放して、中学まで買っていた柴の雌犬の柴三郎が病気で亡くなったこともあってか両親は、俺が高校に入学する際に記念として、その犬を引き入れた。名前はマロ、雌犬だ。
週に1回。従兄弟にマロの写真を送って中学卒業の時から野良猫として引き入れた雄猫のミケは最初のころはマロを警戒していたが、2週間も経てば、ミケはマロを気に入り、ミケと一緒に寝る姿もよく見かけるようになった。
元々両親は、天然ボケで名前だけ決めてから性別を確認するので、柴三郎は雌犬なのに男っぽいのがその理由だ。
「あらあら。うふふふ」
「おや? この三毛猫は雄なのか。へー」
という感じで、雄の三毛猫で野良ネコだった名前にメロンと付けた時は、流石に俺は辞めた方がいいといって、ミケだけは俺が名付けた。
ある日、親友の男と喧嘩をした。喧嘩した理由は、どうでもいい理由で弁当に入っている最後の唐揚げを食べたからというのが原因だった。
「あらあら、キオリは、せっかちね。夕飯は唐揚げにするわね」
怪我して帰ってきた理由を言えば、母親はそう返した。
「キオリは父さん似だなぁ」
と父親はそういうが絶対そうじゃないだろと心の中で悪態をついた。
結局その日の夕飯は唐揚げだったし、唐揚げ用に親友に渡しなさいと言われてタッパーを持たされて昼休みに親友にそれを渡したら、大声で笑われた後
「なんだよ、キオリ! 唐揚げを渡すって!」
「仕方がないだろ。母さんが渡せって言うから」
と俺が言えば、親友の男は涙目になりながらも
「そうだよなー。キオリは昔からそうだ。一緒に食べようぜ。昨日は悪かったな」
何に納得したのかは、今でも分かっていない。
目が覚めた時、俺はテントの中で寝ていた。
起き上がる前に、ズキリと痛んで、そして何故倒れたのかを思い出して右腕を見れば、繋がっている右腕がそこにあった。手を開いたり閉じたりしてみたけど、いつも通りなんの違和感もなく動く。じゃあ、意識を失う前に見た光景は、単なる幻か?
そう思ったが、思わず首を横に振った。いや、違う。あれは確かに身体中に衝撃的すぎる痛みだ。じゃあ、なんで右腕が繋がっているんだ?
「キオリ君。気が付いたんだね」
悶々と考えているとお盆の上に、お粥らしきものと水の入ったコップを両手で支えながら持ってきたスズカが来ていた。スズカの左手の小指は繋がっていることに妙な安堵感があった。
「キオリ君が倒れてから1日半しか経っていないけど、大丈夫? お腹空いてない?」
スズカは不安そうな顔をしながらのぞき込む。
「あ、いや。大丈夫…………。俺が倒れた後、どうなったんだ?」
その言葉に、スズカはお盆を床の上に置いてから、ゆっくりと口を開いた。
キオリが倒れる前に、ラーシュはキオリ、カズキ、スズカに傷をつけたモンスターを瞬殺し、落とした薬品の一つをキオリに無理やりに飲ませた。その落とした薬品の一つが止血剤だったのが運がよかった。残り半分をカズキとスズカに無理やりにでも飲ませた。
ラーシュは焦っていながらも臨機応変に対応していって。止血はしたのだが、切り離された腕と小指はどうしようもなかった。そこまでは、ラーシュもやり方は知らなかったし、魔術師に教わった回復の術式をラーシュは扱うことは出来ないほど、魔力は無かった。獣人は魔術が唯一出来ないのだ。
ソフィは、最初こそ、茫然としてしまったがラーシュの行動に我に返ると同時に、ラーシュにテントを取り出すように指示を出してから、キオリとスズカとカズキに目隠しをするように布を目にかぶせた。
意識があるスズカは
「あの…………。どうして、目隠しを…………?」
その言葉にソフィは
「あまり、いいものではない。止血剤の副作用で時期に眠くなる。今は眠ってるといい」
普段の声音より低い声音だったのを最後にスズカは眠りに入って目が覚めた時には、元に戻っていた。
「多分、回復魔法で治したんだと思うよ。ほら、パドラーさんもメンタルが削れるって…………。うん。きっとそうだよ」
スズカの言葉は随分と曖昧だったが、スズカ本人もよくわかっていないのだろうと俺は思った。
「後で、ソフィさんとラーシュちゃんに謝ろうね。迷惑かけたし…………」
スズカはそう言ってほほ笑んだが、テントの光が差し込んでこなかったのか薄暗く曖昧な笑みに俺はそう見えてしまった。
「あぁ…………。そうだな。…………それは、お粥か何かか?」
「あ、うん。と言ってもこの異世界は、お米を栽培していないから、お粥っていうより、パンで造ったグラタンみたいなものだよ。この異世界は病気や風邪はこれで治すんだって」
熱いから気を付けてねとスズカはそう言ってからテントから出ていった。
グラタンみたいなものを食べ終えてから、満腹感で少し眠りそうになるが、その前に残り半分になった水を一気に飲み干して、睡魔を飛ばしつつ背伸びをしていると、カズキがテントの中に入った。
「キオリ。昼食は食べたか?」
「ああ。カズキも食べたのか?」
「おう」
カズキは俺の近くに胡坐をかいて座ってから
「今日って言っても昨日か、散々だな。モンスターがいる道中で言い争いって。冷静さが欠けていたようだ。無事に戻った時に弟たちにどう話そうかと思うと笑い話になるな」
と苦笑いしながらそう答えた。
「この話をするのか? というか、覚えているようなものなのか?」
俺はそう言えば、カズキは腕を組んでからしばらく考えて肩をすくめた。
「どうだろうな? 覚えていたら夢の話にするぐらいのノリなんだったけど…………」
とさらに考え始めた。
その後、カズキとしょうもない話をしたのち
「夕方には、移動するって話がまとまっているんだ。どうやら、合間合間の休憩にはモンスターは襲ってこないんだが、長時間同じ場所に留まるとモンスターが学習して覚えてしまうんだよ。相変わらずの変化驚くしかないんだがな。アレは未だに慣れない。慣れるようなものなかどうか分からないけどな」
と教えてくれてテントから出て行った。
長時間留まるとモンスターが学習するのかと俺は四次元ポケットからメモとペンを取り出し、書き出した。
俺がテントを出るころには、日が少し傾いていた。
「キオリ! 平気!?」
俺に気づいたラーシュは耳をペタンと垂れてから尋ねてきた。
「ああ。もう平気だ。心配かけたな。ラーシュ。それとありがとう」
と言えば尻尾をブンブン振って笑顔を咲かせた。相変わらず花の咲いたようなエフェクトが見える。飼い犬のようにラーシュを撫でつつソフィさんをみてからカズキとスズカにアイコンタクトをした後、謝罪すれば、
「もう、気にしてないさ。あんたたちが元気でよかったよ。それに、キオリはいつまでラーシュを撫でているんだい?」
そう言われて、ラーシュの方を向けば尻尾をブンブン振ってから
「キオリ。撫でるの。上手ダヨ!」
その発言に俺たちは笑った。
「さ、行きますか」
ひとしきり笑ったあと、ソフィさんの言葉に俺たちとラーシュは頷き、テントを仕舞ってから、俺たちは忘れ物がないかチェックしたのち、北へと歩き始めた。
【北のモンスター】
西より難易度は高く、中の上から上の下あたり。
基本砂漠地帯な為、刃が鋭いモンスターガ非常に多いのが特徴。
【プライド】
誇りともいう。平和組にはそれぞれ誇りがあり、急いだほうがいいと焦っていた。
元々、貝のモンスターを自分たちで倒せなかったのが、効いている。
【マレンマ・シープドッグ】
実際にいる犬。
イタリアで家畜護身用に使われる犬としている。
【三毛猫】
黒、白、茶色の三種類で構成されている猫。
三毛猫の雄は3万分の1の確率で生まれ、希少価値が高く、安くても2000万越えはするが、それを知っているのはキオリだけで、キオリ夫妻は三毛猫の雄ってかっこいいとしか思ってない。