マルティニエル
「待て待て待て!? いきなり強引すぎやしないか!?」
「そうかしら? ただ挨拶に口と口で交わしただけよ。あなたのいる世界ではそれが普通でしょ?」
「違うぞ!? 違うからな!!」
ツッコミをしない宣言をしてから約二ヶ月半後の今日、ティル・タルンギレに初っ端から俺に接吻……つまり、触れるだけのキスを交わしたのは、ティル・タルンギレにてリツノを崇拝している天族のマルティニエルは、俺のツッコミに不思議そうな顔をしてから
「でも、リツノはそうしていたわ」
「母さん…………ッ!!」
過去の母親を殴りたいと思ったのはこれが初めてだ。
「マルティニエルさん…………言いにくいんだが、それは嘘だ」
数十分ぐらい、話そうか話さないかをマルティニエルさんに片手で待ったの仕草をした後、正直に話した方が、マルティニエルさんの為だと思い至り、気難しい表情してからそう言えば、マルティニエルさんは、きょとん顔をしたまま動かなくなった。
「? おーい、マルティニエルさーん?」
目の前で手を振ったり、走る真似をしてみたり、遠くへ行ってみたりとしてみたが反応が全くないので、すみせんと小声でいった後にマルティニエルさんの頬を軽くニ、三回ほど叩くと叩かれた衝撃により正気に戻ったようで
「……………………っは!? え」
と状況を上手く飲み込めないのか周りをキョロキョロと見まわった後、俺の方向を見て数十分後、ようやく思い出したようで
「! あっ! キオリの存在を忘れかけていたわ。え、嘘? リツノは、キスは文化だと教えてくれたわ」
本題に戻ってくれて俺は何故か安堵してしまった。
「海外方面の話だな。それ。しかも口じゃなくて頬だ。えーっと、こんな感じの」