ゴヴニュの饗応
ヘルモーズはティアマトの自室から出て行ったあと、直ぐに自分の自室に戻って時計を見れば、キオリが起きる二時間前であった。随分と長く話し込んでしまったとヘルモーズは時計を見ながらそう思い、机の引き出しから白紙の紙を一枚取り出し、何かを書いた後、そのままベッドに潜り込んでそのまま寝息を立てて眠った。
目を覚ましても倦怠感が抜けることはなく、軽く背伸びをしてからまずしたことと言えば、シャワーを浴びることだった。朝からさっぱりしたいのもあるが目覚めた後に軽く運動をするためでもあった。
シャワーから出ると、机の上に一枚の紙が置いてあることに気づいた。
その字には見覚えが無かった。俺の字ではない。丸みを帯びた文字が並んだ文章を呼んで俺は驚愕した。
『お兄さんへ
お兄さんが寝ている間に、私、ヘルモーズが動いています。今回、あたしが表に出てきた理由をティアマト様にお話ししてきました。ティアマト様は、私が話した内容をご理解していただけたかと思います。ですが、話の内容は私とティアマト様のご内密とさせて頂きます。お兄さんがショックを受けてしまうのが目に見えて分かるからです。そのことについてご了承のほどお願いいたします
ヘルモーズ』
うん。まずは一つ言わせてくれ。兄って俺の事か?
夜中に出てくるヘルモーズの為に手紙の下が数十行ほど空白だったので、返事を書いてからクローゼットから女装していた時でも頑なに抵抗して着なかった部類の服しか残っていないことに気づいた。他の服は洗濯されている。
「まじかよ……」
俺は項垂れながらも、その服を一着手に取って着替え始めた。
「今回の任務はティル・タルンギレにあるゴヴニュの饗応を調べて欲しいという依頼です」
朝食会場に行くまでの間、物珍しにジロジロとみられたり、ティアマトさんには、満面の笑みで
「凄く似合っているわよ」
と言われたりしたのだが、嬉しくないのは何故だろうか。
赤の生地に黒のバラの刺繍で縫われた。チャイナメイド服である。しかもミニスカという。
で、朝食を食べ終えた後にアルパンさんに呼ばれた理由がそれである。
「ゴヴニュの饗応?」
「食べるだけで不老になる果実の事よ。ティル・タルンギレにはそういう果実があるのよ。どんな味かは不明だけれど