ゆらゆら
夕食を食べ終えた俺は背を伸ばしながら、部屋へと戻っていた。
「つ、疲れた……」
魔族の話を訊くだけで半日を費やして、座ってノートにペンを走らせただけの単純すぎる仕事だったはずなのに酷く疲れていた。
ただでさえ寝ていないような感覚があるというのにと俺は心の中でぶつくさと文句を垂れ流した。だが、今日は確かヘルモーズが、ティアマトさんの部屋に行くんだったよな? と思い出し、疲れた身体に鞭を打ちつつ浴槽に肩まで浸かり、三十分ほどで上がってから机の前に座ってからノートを広げて書いた後、それを机に仕舞ったのは一時間ぐらいは経過していたので、ベッドに横になり眠った。おやすみなさい。
「おやすみなさい。お兄さん」
キオリがスヤスヤと規則的な寝息を経てていたのだが、その規則的な寝息も止まり、目を覚ました。
「………………ティアマト様のところへ行かないと」
そう呟いてベッドから降りたキオリはそのままティアマトのいる部屋へ歩き出した。
数分で着くぐらいには、ティアマトの部屋は近い。キオリはノックすればティアマトは扉を開けた。
「来たわね。ヘルモーズ。さあどうぞ」
「お邪魔します。ティアマト様」
キオリ……基ヘルモーズはティアマトに向かって深々とお辞儀してからティアマトの部屋へと入った。
シングルソファーに腰かけるようにティアマトは促しながらティアマトは、長年愛用しているロッキングチェアに腰を下ろした。
「キオリは寝ているのよね?」
「はい。お兄さんは間違いなく寝ています。でないと、私は行動を起こせません」
「お兄さん? ヘルモーズはキオリを兄だと思っているの?」
ヘルモーズはキオリを“お兄さん”と称したことにティアマトは首を傾げならそう言えば、ヘルモーズは頷いた。
「はい。元々、私は破棄される存在の人形でした。それをお兄さんの精神によって身体を保て、失っていた魔力の補給もお兄さんと交わることと、ティアマト様の人格生成により私という人格が確定しました。なので、お兄さんと呼ばせていただいています」
真面目な顔つきでヘルモーズは答えてから
「ですが、それはあくまで器が完成しただけであり、私の人格そのものに影響したかといえばそうではありません。大きく動いたのはユグドラシル大樹での出来事です。あれによりお兄さんの精神は一度壊れてしまいました。それも無自覚で」
ヘルモーズの壊れたと言う言葉にティアマトは反応した。
「壊れた? キオリが?」
信じられないと呟きが漏れた。ヘルモーズにはその言葉が届くことはなかった。
「お兄さんの神経はすり減っていましたが、お兄さんを確実に殺そうとした人物がいたことにより、それが揺らぎました。波のようにゆらゆらと揺らいで、ユグドラシル大樹での出来事で壊れました。何度も言いますがお兄さんは無自覚です。なので、壊れたものを直さなけれならなくなり、私という人格を生み出しました。