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魔族の教え

 アルパンによる魔族のことについて、授業を行った。

「魔族と一括りで言っているけれど、魔族の中にも階級が存在するわ。最高上位幹部がその一例に部類するわ。これは、魔界が九つ世界に別れていたときに率いた軍隊が最高上位幹部よ。軍隊名はゴエティア軍隊ね」

「ゴエティア軍隊。そのゴエティアってなんだ?」

「ゴエティアというのは、魔界での七不思議の一つとされる魔界が生まれてから存在する人物の名前のことよ。姿形は誰も見ていなく、男でも女でもないとでもないという噂まであるわね」

 そう言えば七不思議によく遭遇するよな。とキオリは思った。ケルベロスにゴエティア。今のところ二人だけだなとキオリは思って少し噴き出した。

「? ちょっと大丈夫?」

「え、あ。すみません」

「そう? じゃあ続けるわよ。ゴエティア軍隊には72人いたの。それぞれを順位付けしたの。一位から七十二位まで。階級は関係なくね」

「……………………どうして順位付けを?」

 キオリは恐る恐る尋ねた。

「ゴエティア軍隊にはリーダー格となる人物はいなかったの。リーダー格がいなければ72人もいる軍隊を引率できるはずがない。だから順位付けをすることになったの。結果は順列第一位であるバエルがリーダー格として七十二位までを率いたの。その名残として最高上位幹部として君臨しているわ。ティアマトの父親代わりしていたバルバドスもゴエティア軍隊第八位として君臨していたの」

 キオリはノートにペンを走らせながらアルパンの話を訊いていた。

「階級は大きく分けて三つ。昔は六つ以上あったらしいけど、今は意味をなさなくなったから三つ。大将、中将、少将の三つね。キオリは少将に属しているの。さらにその三つから区分して所属があるの。香料会の際に、アフラ・マズダーが、ゾロアスター所属と言っていたのは覚えているかしら? あれにまた分けられるの。ちなみにあたしはエトルリア所属よトールは北欧所属、ティアマトはメソポタミア所属ね。ヘルモーズは北欧所属の少将というわけよ。他の魔族もそれぞれ所属と三つの階級を有しているの」

 アルパンは人差し指をくるくると回しながらそう言った。

「その所属先ってどういう風に決まるんだ?」

 キオリのその言葉にアルパンは目を輝かせながら

「いい質問ね。魔族は生まれた時から名前を授かるのだけれど、それによって所属先が決まるわ。なんでそれによって所属先が決まるのかは未だに分かっていないわ」

 またかよとキオリは思った。

「まぁ、いずれ分かるわ。最高上位幹部はそれに所属していたりしなかったりするのよ。その境目が曖昧なこともあり、最高上位幹部の地位は今でもそのままになっているのよ」

 キオリはペンを走らせる。

「逆に天族はそういう堅苦しい所属などは存在しないけど階級が存在するの大体第一から第七位までの階級があるわね。詳しいことは天族にいる人に訊けばいいわ」

 アルパンは、気難しい顔をしたのち、そう言った。

 案外、細かいことはどうでもいいと思っているかもしれない。

「次に、睡眠についてね。魔族基本的に眠るという習慣を持ち合わせていないの。それは天族も同じよ。寝るのは人間だけ」

「不眠ってことか?」

「ええそうね。休憩はとるけど睡眠はとらない。いきなりぶっ倒れて二千年以上眠ることは結構あるのよ。だからキオリが二千年寝ても、いつものかって感じになるのよ。当たり前ってやつかしら? けれど、キオリは人間の時の習慣でいつも眠っていたでしょう? だからあたしたちもそれに習って眠るという習慣を身に着けたのよ。そしたらぶっ倒れることは減っていくのは分かるでしょう?」

 アルパンの問いにキオリは微妙な顔をしつつ頷いた。

「昔までは不眠不休は当たり前で栄養も摂っていなかったけれど、意識改革で実践していったの。寝れば体力は回復するし力も存分に揮えることが出来る。まさに一石二鳥よね」

「その四字熟語はどこから覚えたんだ?」

「キオリの記憶媒体に載っていたわよ?」

「あ、そうですか」

 ツッコミはしない。決めたからな。


アルパンは資料を自ら用意したという資料を捲りながら唸っていた。キオリの手元にはそれがないので急ピッチで仕上げたのだろう。

「どうしたんだ? アルパンさん」

 いきなり唸れれば、流石に驚くし困惑するキオリは不安そうな表情をしながらアルパンに話しかければ、アルパンはキオリのその言葉に我に返った後、上着ポケットから錠剤を一粒取り出した後それを口の中に放り込んでそのまま飲み込んだ。

「え、あの……」

 この光景にキオリは戸惑いを隠せないでいた。アルパンはそのまましゃがみ込み、錠剤をのみ込んでから数分ほどで

「ごめんなさい。もう大丈夫よ」

 と立ち上がってから笑顔でキオリに向かってそう言った。

「薬を飲んでいたようだが、大丈夫なんですか?」

 思わず後半部分が敬語になってしまうほど、キオリは動揺を隠せないでいた。それほど、アルパンの不可解な行動に驚愕していたのである。

「元々、頭痛持ちで頭痛薬が手放せないのよ。一日一錠を朝方飲むのだけれど、今日は忙しかったしいろいろ疲れていたから飲むのを忘れていたってわけ。だから安心してちょうだい」

 安心できる要素がどこにもないのだが……とキオリは思いつつも、頷くことにした。

「それじゃあ、続きね」

 小休憩を挟みつつ、魔族のことを詳しく説明してくれた。

 魔界が現れてから魔族の誕生から九つの世界のでの戦争など。

「九つの世界が戦争した理由ってのは?」

 キオリが興味を示したのは九つの世界の戦争についてである。

「よくあることよ、国を広げるためよ。そのために幾度もなく戦をしては、敗れの繰り返し。それが九百九十九年続いたことから、トリプルナイン戦争と呼ばれているよ。トリプルナイン戦争で多く戦争をした国はアースカイズとヘルヘイムなの。国土的に両方とも広かったからこの二つの国が戦争を繰り返したわ。終結した理由は、魔界に転生した人間が、合併すればいい話じゃないのか? という一言が切っ掛け。まさに鶴の一声だったわ。魔族はその発想が無かったのよ」

「え。その一言で納得したのか? そのお偉いさんとか」

 キオリは終戦の理由に困惑しながらもアルパンに尋ねた。

「いいえ。兵士たちはそれで納得したのだけれど、流石にお偉い様はそう簡単に首を縦に動かさなかったよ。戦争を取りやめたのがその時期なのだけど、お偉いさんの説得にさらに九ヶ月と九日。九百九十九年九ヶ月と九日間よ。トリプルナインどころではなかったわ」

 アルパンは呆れながらも脚がつらくなったのか椅子を引っ張り出しそれに腰かけながらそう言った。

「九という数字にこだわりでもあったのかよ……」

 キオリは呆れながらそう言えばアルパンはその言葉に悩みつつ首を横に振った。

「いいえ。ただの偶然よ。偶々九という数字が揃っただけって魔王図書館にある本にはそう記載されていたわ。あたしも実際に体験したわけではないからその本を思い出して話しているようなものだし」

 アルパンのその言葉にキオリは納得した。


 扉が軽くノックする音が聞こえ、アルパンが返事をすれば、ティアマトが顔を出した。

「アルパン様。夕食の時間です……………………って、キオリじゃない! 身体の調子はどう?」

 ティアマトはキオリに気づくと綻ぶような笑顔を浮かべてキオリの両手を握りながらそう言った。

「ああ、平気だ。だが、ちょっと、不安があってだな。ベッドで横になって眠ってはいるんだが、その時にヘルモーズが出ているみたいで」

 とキオリは相談すれば

「ヘルモーズが表に? ユグドラシル大樹での出来事で優先順位が変わってきたのかしら……? 分かったわ。ヘルモーズ。キオリが寝たら、ティアマトの部屋へ来てちょうだい。これでよし。会話の内容はヘルモーズも聞こえているでしょうけれど、キオリは覚えていないのよね?」

「あ、ああ」

「なら、あたしから直接話すわね。さ、夕食にしましょう。今夜はローストビーフよ」


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