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無飲食状態だったキオリ

前回のあらすじ

初代魔王のフレースヴェルグの回想


無飲食について調べました。実際には不明ですが、絶対に真似はしないでください。

 ゴエティアと長く喋っていたらしく遮断魔術を解除すると同時に扉が勢いよく開いて

「キオリくん。無事!?」

 とティアマトさんを始めとした他の魔族たちが心配そうな表情を浮かべながら額に冷や汗を流しつつそう言って来た。

 どうやら、香料会が会ったその日の夕食の時間が来ても食堂に中々来なかった俺を心配して扉の前で夕食が出来ているがどうするのかという返事をしていたらしいのだが、返答は返ってこず、その時は寝ているのだろうと思ってそのまま引き下がったらしい。それが、翌日になっても、3日経っても夕食はおろか、朝食、昼食まで食べに来ない上に未だに部屋から出てこないことも相まって、流石に不安に覚えたティアマトさんたちが押し切って入ってきたらしい。それが今である。

 つまり、香料会から5日もゴエティアと喋っていたのである。

「あー…………すみません。魔力を底上げしよかと思って遮断魔術を使用してました」

 ゴエティアを視える人物はいないというのが彼の話だったので、俺は目を逸らしながら若干話を濁してそう言えば、ティアマトさんは呆れた表情を浮かべた。

「遮断魔術……だとしたら結構な高位魔術ね。普通の遮断魔術は、扉の叩く音は遮断出来ないはずだけど、高位魔術だと指定した場所以外の全ての音を遮断することが可能になるわ。元々、キオリの魔力はトールの魔力半数にプラスしてヘルモーズの魔力も追加されているから、相当な魔力量ね。魔力を測定できる機械があるから後でそれをしましょうか。そ・の・前に!」

 とティアマトさんは、俺の腕をいきなり触ってから

「ああ! やっぱり! 5日も食べてないから身体が細くなっているじゃない!? キオリくん。5週間ほど安静にすること。いいわね!?」

 鬼のような阿修羅のような顔つきになってから俺の両肩を両手でがっしりと掴んだ後、無理矢理にベッドへと運んで強制的に横になり上布団を掛けながらティアマトさんはそう言った。

「あ、はい」

 逆らったら何をされるか分からない為、一連の流れに驚愕しながらも俺は頷いた。目を思いっきり瞬きしながら。


 俺が、5日間の飲み食いを行っていないことは、魔王城全体に広がったということをトールから訊いた。広まるの早くないか? と疑問に思ってトールに訊いてみたら

「救える者が籠城ならぬ籠部屋しているって噂になったのは3日前。それが本当だということは、それから1時間後。そこから急加速に伸びているから、安心しろ」

「どこに、安心する要素があるんだよ……」

 トールのいる所に顔だけ向けながら俺は呆れたようにそう言えば、トールは肩を竦めてから立ち上がり、そのまま洗面所のある方へ歩いて行って扉を閉めた。

「…………はぁ」

 左上を頭上に持っていて大きなため息をつく。

 5日間も食べていないと言われた直後に体力が一気に抜け落ちたような感覚に陥った。ティアマトさんに言われて直ぐに頭痛と眠気と脱力感が一気に押し寄せてきてベッドに押し込まれたと同時に俺は死んだように眠っていたらしい。それから2日と半日が今日というわけだ。

 起きて直ぐにしたことと言えば水分補給だったりする。

 それでも、どうにかして身体を動かしているが、倦怠感がひどくてそのまま寝てしまいそうになる。それでも何とか目を開けようと努力するが、結局トールが洗面所から戻ってくる前に俺は倦怠感で再び眠ることになった。

 それ以降は、同じことなので言うことはしない。元の体重に戻るまでに2ヶ月以上は掛かったということだけ報告しておこう。


 ゴエティアは、あれ以来姿を見せていない。またどこかでふらっとしているのだろうと俺は思いつつ、2ヶ月ほどで体力は、俺が想像していた以上に落ちていたので、現在はリハビリがてら魔王城内を散歩している。

「キオリの身体を洗う時に思ったんだが、やっぱり男だなって思ったな」

 付き添い付きという条件の散歩でティアマトさんから許可をされたのだが、その付き添いは、俺の看病までしてくれたトールである。

 そのトールは俺の顔を見ながら

「いや、だってさ、君の顔は女っぽいというかだな。声は確かに男性なんだが顔だけで判断するのは良くないな」

 と勝手に納得していた。

「勝手に納得するな。というか、この身体はヘルモーズだろ。ヘルモーズは元女性っていう設定だってティアマトさんから聞いたぞ。その名残が出ているんじゃないのか?」

 俺が呆れた顔をしながらそう言えば、トールは驚愕していた。

「そうなのか? 僕はヘルモーズの設定なんて初めて聞いたけど……。ふーん、なるほどねぇ?」

 トールはそう言って立ち止まってからジロジロと眺める為、俺も自然に足が止まる。

「ところで、鏡は見たことはあるのかい?」

 何かを思い出したのか、トールは、俺の顔を見ながらそう言った。

「鏡か? ああ。この服装を着るのに見ているからな。それがどうしたんだ?」

「顔つきはどうなんだい? キオリ自身はヘルモーズの顔が自分の顔だと違うと認識しているのだろう?」

 トールのその言葉に、俺は

「それが、不思議なことに顔の輪郭や目や鼻といったパーツ部分はそっくりなんだが、眉毛や首から下は完全に違うな」

 と右手人差し指を縦ながらそれをクルクル回転させながら、苦笑いを浮かべながらそう言えば、トールは俺の右手人差し指を目で追いつつ

「なるほどね。納得はしたよ。さ、足止めして悪かった。今日の目標は一周まわることだ。頑張ろう」

 と言って、トールは左手で俺の右手人差し指を包むようにしてから、それを地面に降ろして笑顔でそう言った。

 トールは若干スパルタのようだと俺は思ったと同時にトールにバレないようにほほ笑んだ。

 若干強引過ぎるのはトールからだったのか。トウヤの前世と言うやつだが、こうやって知りえるのは、親友としては嬉しいな。トウヤからしてみれば恥ずかしい出来事なんだろうがな…………と思いながら苦笑いをした。


 魔王城内には診療所が出入口付近の丁度右隣にあるのだが、その主治医がティアマトさんの知人でもあるミネルウァという女性である。ヘルモーズの部屋は五階の住居スペースと呼ばれている所から一階にある診療所までの距離を歩いて来るようにといわれた。

「五日間も飲まず食わずで体力も衰えているから、いい運動だと思って頑張ってここまで来てちょうだい。そこまでは面倒は見ないつもりだから」

 と最初の問診の時にそう言われて以来、階段の上り下りを含めた診療所までの道のりを付き添いで通院している。

「……最初の頃より、握力がついてきたわね。体力が落ちる前の元の握力は解る? そこまで回復出来れば、食事制限を解除できるわ」

 現在、俺の食事制限は、腹に優しいものだ。パンをお湯で蒸したものだったり、柔らかいものが多かったのである。

「でも、びっくりしてしまわないように、固形物から段々と慣れて行きましょうね」

 とミネルウァさんに言われて俺は頷いた。


 そこからは、自室から診療所までの道のりのリハビリに適度な運動をこなしていき二ヶ月近くには基本体重に戻ったところでミネルウァさんの指示により食事制限を段々固形物に変えて行ってそこから約三週間後には、普通の食事をしても問題ないというお墨付きをもらった。

 ただし、体力方面で握力が衰えていたことから、握力を鍛えるために、戦闘訓練から握力を鍛えるトレーニング器具を借りて元の握力に戻すために普通に運動もしてもいいという許可も得たので、荷物運びなどを手伝いながら次の体力づくりに励んだ。

【診療所】

 魔王城の玄関のすぐ右隣にある。ベッドが15床ある。大抵は魔術で治すのだが、魔力量が極端に少ない時などに利用されることが多い。

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