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初代魔王の記録

前回のあらすじ

いろいろ話した。


 胡蝶蘭の長の名前をどこかで書いたはずなんだけど、それを何処か忘れたことに失念するしかない。



敗れた日記が乱雑に置いてあった。そこに見覚えのない本があった。

 長い話は苦手だ。

 特に長編小説は、どこをどう区切ればいいのか分からずプロローグだったり第一章だったり途中で用事が出来て栞を挟んでいても、後日に何処を読んでいたのかを思い出せなくて最初から読むってことは毎回繰り返せば長編小説には手を出すなんてことは、それ以来しなくなった。

 逆に短編小説は、気軽に読めるのはいいが、満足感が得られなくてストレスが溜まってしまう一方であった。


 魔界が誕生して以来、初となる魔王として、フレースヴェルグが選ばれた。

 魔界に転生したらしい異世界の転生者が、魔王城があるなら魔王がいてもおかしくはなくね? という一言により、ヘルヘイムにとどまらずティル・ナ・ノーグ。つまり、魔界全体にその話が広まった。魔王城というのは魔界を統べる城として、主に監視塔を目的として建てられたのだが、異世界の転生者から見れば、生前見ていた“げーむ”とやらの遊戯事の一つである舞台とほぼ似ている構図をしているという。

 魔界は、人間とは友好的に接したい相手でもある。それは、ヘルヘイムも例外ではない。異世界の転生者である人間がそういうならと監視塔の名前を魔王城として、魔王が誕生したのが、異世界の転生者が呟いた一言から約半年経過した時だった。


 フレースヴェルグが魔王として就任して三週間ぐらいが経過した。

 三週間ぐらいで、すっかり前の呼び名である監視塔の名前は忘れ去られ魔王城という名前はヘルヘイムだけではなくティル・ナ・ノーグに住む天族にまで知られるようになった。フレースヴェルグは、その真実に複雑な心境になったのは言うまでもない。

 フレースヴェルグが魔王に選ばれたのは、ただ単に年齢が他の魔族より上だったからという単純な理由である。それ以降も年功序列順に魔王が決まることなど、今のフレースヴェルグが知る理由もない。

 魔王になってすぐにやった事と言えば、大量の書類仕事であった。

 もともと、魔界には、誰かが魔界を統括するということはなく、フレースヴェルグが魔王になるまで、かなり野放しにしていた。人間がモンスターに襲われようが見て見ぬふりということが多かったのである。だから、フレースヴェルグが魔王になったことで、魔界を統括する存在として全員が認識したので、天井にまで届くのではないかと疑うぐらいの大量の書類を裁かなければいけなかった。

 街の防衛、冒険者と誕生などは、この時から始まった。おかげで魔界の死者率は大幅に減少していったのは、書類を裁きながらも、最後まできっちり読み上げてサインをしたフレースヴェルグの苦労のお陰だろう。魔王フレースヴェルグの名はその時から瞬く間に魔界全土へと広がったのは言うまでもない。

 そんなフレースヴェルグは、減ることを知らない書類を裁いている最中に、小休憩を挟んで近くの高級ソファーで、横になって眠った時、この世界に移動したのであった。


 それは、あまりにも突然すぎる出来事だった。フレースヴェルグが目を覚ませば見慣れた天井ではなく、雲一つない青空であるからだ。

 この時点では、魔界はこの世界があることを知らなければ、この世界も魔界があるとは知らない状態である為、フレースヴェルグが最初に考えたのは、魔界に帰還する方法と、この未知なる世界を知ることからだった。

 考えてから即座に行動するのがフレースヴェルグ自身の流儀であった。

 というのも、魔王城がまだ監視塔だった際に、身体に傷痕がある父親が刷り込みで教えるかのように亡くなる前日まで、口癖のように教え込まれたからだ。何故、父親がそのような言葉を発するようになったのかは、分かっていない。だが、父親の経験上そういうことが多かったのだろうという感想を抱いた。

 偶然なのか、フレースヴェルグがいる場所に通りかかった一人の小人が、フレースヴェルグに話しかけた。

「やあ、こんにちは。君はどの種族かな?」

 小人に気づくことが出来なかったフレースヴェルグは、身体を跳ねらせてから振り返るが、そこに人はいなく首を傾げた。

「首を下げてくれ。僕は下のほうにいるよ」

 下の方から再び声が聞こえて首を下に下げると二頭身前後の人間がいた。魔界には小人族がいないので、不思議な子供だなとフレースヴェルグは、最初にそう思った。

 フレースヴェルグは、小人族に視線を合わせるようにしゃがんでから

「こんにちは。ところで、ここはどこだか分かるか? 君はここの現地の人であろう?」

 言葉が通じるかどうかは不明であったが、二頭身前後の人間は、フレースヴェルグが知っている言語で喋ったので通じているはずだと思って尋ねた。

「? この世界と呼ばれる世界だよ。君は知らないのかい?」

 小人族が尋ねれば、フレースヴェルグは首を横に振った。

(この世界? なんだそれは?)

 頭上にクエスチョンマークが大量に浮かんでいるのが目に浮かぶぐらい、別世界についての知識などが全く無いに等しい。

「いや、知らないな。私は魔界という世界から来たんだ」

「魔界?」

 今度は小人族が首を傾げる番だ。それだけ魔界はこの世界を知らないし、この世界は魔界を知らないのだ。

「私は、魔界から突然この世界に来てしまったんだ。今すぐにでも魔界に帰って書類仕事をしなければならないんだ」

 フレースヴェルグは、分かりやすく事情を説明すると小人族は、納得した。

「なるほど。それで、見たこともない恰好だと。それなら僕を見るのも初めましてだね。僕は小人族と呼ばれる種族の一種で、この世界では確認されている種族だけでも両手では足りないほど発見されていることがあるんだ。その姿だと人間に殺される可能性が十分に高いから、ここから北西にある胡蝶蘭という村に訪れるといいよ。人間と友好的な魔物というモンスターとは別の種族が住んでいてね。しばらくの間は匿って貰えると思うよ。僕は王様にこのことを説明するから」

 そう言って小人は、フレースヴェルグに手を振った後その場から去っていった。

 フレースヴェルグは言われた通り、今いる場所から北西に向かうと新緑に囲まれた胡蝶蘭と木製の看板に書かれた村を発見出来た。

 胡蝶蘭の出入口付近にいる門番は、謎の不審人物に怪訝そうな顔で入り口を槍でバツ印のようにして封鎖していた。

 フレースヴェルグは、事情を説明すれば門番の一匹は、村の中に入って言った。

 それから数十分して門番は戻ってきて、フレースヴェルグを中に入れるようにという言葉にフレースヴェルグは心から安堵した。

 もし胡蝶蘭に入れなければ、それからどうするかなんて考えていなかったからだ。フレースヴェルグが知らない異世界だ。安易に動けばモンスターに間違われて殺されて終わりだ。それだけは避けなければならない


 胡蝶蘭に入って最初に出迎えたのは、人間のような姿をした人物がいた。いや、人間に似た魔物の一種だとフレースヴェルグはその女性を観察した。

「フレースヴェルグというのは君か?」

 高圧的で威圧感のある少し低い女性の声音にフレースヴェルグは、気圧されながらも頷けば

「なら、案内をしよう。ここでは話にくいであろう?」

 と彼女に言われて案内されたのは、監視塔と似た形状をしている木製で造られた城であり、フレースヴェルグは、はその奥にある部屋へ案内されて、高級そうなソファーに座るように促され、フレースヴェルグは、豪華な内装に関心しつつもそのソファーを傷つけないように丁寧に腰を下ろした。

「自己紹介をしよう。私は胡蝶蘭の長を務めているベラトリックスという。ドラゴンと人間のハーフだ」


 先を読もうと次のページを捲った。だが、次のページは白紙でそこで、何があったのかは書かれていなかった。


【フレースヴェルグ】

初代魔王の人物。年功序列順により最初の魔王に選ばれた。


【ベラトリックス】

 胡蝶蘭の長。女性。

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