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理由その1

前回までのあらすじ

初代平和組の正体は平和組の両親だった。

 元の世界に戻った時に時間差を気にしていたのだが、先ほどのゴエティアの言葉に、俺は少なからず安堵をした。高校最後の卒業式に出られないのは嫌なことと両親が心配していないだろうかという不安が先に来ていたからだ。

「当時のこの世界と魔界は平和同盟を結ぶほど関係は良好だった。けれど、そこで齟齬(そご)が起きたんだ。魔界は魔王が戻ったことに事細かく説明されて今現在、君が呼ばれている救える者となっている訳だけど、この世界は魔王はこの世界を侵略するモンスターのボスとして認識されているのを何故不思議に思ったことはないかい?」

「そう言われればとは思うが、先代の王様が、モンスターを毛嫌いするほどの人だったと訊いていたから、さほど気にしていなかったんだが…………」

 ゴエティアの言葉に、俺は微妙な顔をしつつ明後日の方向を見ながらそういえば、ゴエティアは、若干だが、呆れたような顔をしつつ大きく溜息をついた。

「そこは、嘘でも知りませんでした。というべきだよ。…………でも、それは強引すぎるか。うん。君の素直で率直な感想は好感を持てるというもの。素晴らしいよ」

 ゴエティアは、途中から関心するように言い直してから咳払いを1回してから話を続けた。

「その、先代王と同じ思考を持った人物が13代目から38代目まで続いたんだ。初代から12代目まで、魔界と同じく王様が代々受け継いで来たけれど13代目に入ってからは、伝言用に残していた手紙やら手帳を残していたけど、それらを全部燃やしてしまって、【この世界史】という本が、この世界にあるのだが、それにしか記載されていない」

 初めて訊く単語に俺は首を傾げた。

「【この世界史】という本は、この世界の特殊名と呼ばれている人物のところしか現れないと言われているから、キオリが知らないのも無理はないね。アルデバランという人物が持っているはずだから、この世界に戻った際に見せてもらうといいよ」

「…………まるで、戻れる前提みたいな言い方だな…………」

 俺は、誤魔化すように怪訝そうにそう言えば、ゴエティアは頷いた。

「1200万年後に君は、異世界アトランダム強制送還術式によってこの世界に移動することが決定されているんだ。それは、君が予測していたことだしケルベロスにも言われただろう?」

 誤魔化すのは無駄だぞと遠回しにゴディバに言われて、ぐうの音出ないのだが、俺は一旦咳払いをしてから喉を潤すために近くにあったカップに紅茶を注いでそれを口づけて喉を潤した。

「それで? 12000年後にその、異世界アトランダム強制送還術式を使用して戻ったとして、アルデバランさん達と合流するのはいつになるんだ?」

「君の精神が魔界に移動したと同時に合流すればいいのさ。君の身体は契約者であるドーラがどうにか保つだろう。そしてドーラも役目を終えれば消滅することが決定されている吸血鬼だ。自動的に元の身体に戻ってこの世界と魔界の記憶を消去された上で1時間しか経っていない、平和組がいる世界に戻れるというわけさ」

 ゴエティアは、当たり前だろうと言わんばかりにあっけらかんにそう言った。

 確かにそうなのだろうが、どこか納得出来ない部分があった。

「吸血鬼が消滅することは決定事項なのか?」

 俺がそう少し不満げな顔をしつつそう言えば、それを見たゴエティアは驚愕の顔を俺に見せたから

「知らなかったのかい? 契約を結んでいるはずだろう?」

「一応話したとは思うが…………メリットデメリットだけしか訊いていないような気もするような……」

 大分前の話だ。記憶も曖昧になってきているのが嫌でも分かった。俺は心の中で軽い舌打ちをした。

 ゴエティアは、俺の曖昧すぎる答えに納得した表情を浮かべてから一旦咳払いをして

「では、説明しよう。君の質問の答えは決定事項だ。契約期間が終われば消えるしその契約期間を取り消すことは不可能に近い。これは救える者でも救世主だろうとも無理なものは無理。絶対的な支配力が吸血鬼の中ではある。契約者が死亡するまでがもはや契約の一つだと考えていいだろうね。これは人間全員、魔界でもこの世と同じで人間には吸血鬼が必ずついている」


 吸血鬼。

 彼らはそう名乗っているが、血を吸う行為を行うことがない。それなのに吸血鬼と名乗っているのは、魔界側でも疑問の声が上がっていた。

 その理由に対して、吸血鬼は大して疑問に思っていなかった。二度と戻ることは許されない住処や人間の願いを叶える好条件にデメリットは戦闘能力が皆無であるぐらいしか分からない。それは誰かに教わったという訳ではなく、自然に脳内にインプットされていただけである。

 ここまでのゴエティアの説明にキオリは、ドーラと話した霞がかっていた吸血鬼の記憶が鮮明に思い出せた。

「ゴエティアは、最初の吸血鬼が誰だか知っているのか?」

 俺のその問いにゴエティアは残念そうに肩を竦めてから首を横に振った。

「残念ながら僕の記録上にも載っていないし『この世界史』に載ってはいないだろう。それだけ、吸血鬼は人知れないんだ。契約書にも書いただろう? “契約者以外の人物に話してはならない”とね」

 ゴエティアはそう言って左目でウインクをした。

 たしかにしたけどさ……。


 他にも疑問を呈したいところでは、あったが別の本題に入ることにした。

「ゴエティアが覚えている中で見えるのは初代平和組だったよな?」

「そうだね。その中でも1人だけだったけどね。いやぁ……久々過ぎて涙でそう」

 ゴエティアはそう言いつつ既に涙が出てしまっているぞ……。俺はそれを指摘すれば、ゴエティアは慌てて涙を拭ってから

「その人物は、君の母上だけどね」

「嘘だろ!?」

 俺のいた世界に戻れば、この世界とか魔界の事は忘れて過ごすことになるということは、ゴエティアから訊いたばかりだが、こうなってしまっては、この会話すら忘れて母親に問いただすということも出来なくなる。あー……ッ。イライラしてきた。

 そんな俺の思考を呼んだのかどうか不明だが、ゴエティアは苦笑いしながら

「君の母君に関しては、僕も申し訳ないと思うよ。ああ、でも最初に行っておくよ。どんな会話をしたのかは、僕からも君の母君も会話出来ないようにしているんだ。僕の存在そのものが秘匿するべき内容だからね」

 秘匿するべき内容なのか? と疑問に思ったが訊けないとなれば残念で仕方がない。キオリはゴエティアが見ても分かりやすい落胆の表情と行動を示していた。キオリが無自覚でやっている行動である。

「初代平和組と二代目平和組の違いを訊きます?」

 しかし、ゴエティアはキオリの無自覚でやっている行動に指摘をしなかった。指摘したら恥じらいながら怒って拗ねてしまうだろうなと思った。あの時の少女のように。

 話題を変えるべくゴエティアは、キオリに尋ねた。

「相違でもあるのか?」

 別の方向へ考え始めた俺にゴエティアは頷いた。

「男女の性別が逆な所とか、他にも沢山ありますよ」

「魔界のことしか知らないんじゃなかったのか?」

 ゴエティアの言葉に俺がそう返せばゴエティアは目を丸くさせた後

「そうでしたね。ええ。そうでした。忘れていましたよ。言い忘れです。魔界とこの世界の全てを把握しているだけです」

「一番重要な部分を忘れるなよ!!」

 俺は、ツッコミに回るつもりはこれっぽちもないぞ。とその時俺は、心の中で決意しながらゴエティアにそう言った。

「いやぁ。ごめんごめん。僕は肝心なことを忘れるタイプなんだよ」

 ハハハと笑うゴエティアに俺は呆れながらも

「で、母さんたちと俺たちの違いはなんだよ」

 と尋ねれば。

「大きく分けて2つ。1つは日記をつけていたどうか。ああ、日記というより個人の日記ではなく、活動日記というこの世界に転移されてから帰還するまでの日記をそれぞれ当番制のように決めていたことなんだ。まぁ、その日記は、魔族嫌いのこの世界の王様の手によって燃やされて存在しないんだけど。2つはそれぞれ遠近両用の武器が使えたこと。それだけだよ」

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