キオリの信者
前回のあらすじ
外族に関することをいろいろと調べたよ
以前までは、魔界を救うものを“救える者”としてキオリを聖人のような期待の眼差しと羨望の視線も相まって魔界に住む誰かが設立した魔族の内の1人が勝手に宗教を開いてそれに信者が募って、一時期にはアイドル並の信者もいたのぐらいキオリの人気はうなぎ登りだったのだが、ここ最近になってからは、それも落ち着きそれでも信者が魔王城にいる魔族だけでも約半数で落ち着きアイドルのような扱いもされなくはなった。
キオリはキオリを宗教者のように扱っている信者の魔族に外族に詳しい魔族はいないかと尋ねまわっていた。
というのも、外族に関する本を読みふけっていたキオリは気になる文面を見つけていたからだ。
『外族には、ある特定の信者が存在する。それは魔族でも天族と可能』
と書いてあった。その本が事実かどうかは不明だが、キオリはそれらがいるという何処からか出たのか分からない確信を証拠として、翌日からキオリは、こうして聞き込みしていたのである
「収穫がないな…………」
食堂の端に座り込みながら俺は項垂れていた。
聞き込みしてからおよそ1時間30分ぐらい経ったのだが、これといって有益な情報はなかった。外族に関することは、ある程度知っている者もいたのだが、信者となると数が限られている。元々、外族は魔族と天族など他の種族を含めた人物に忌み嫌われている対象だ。もし、自分が外族の信者だった場合、相手に悟られぬよう隠し通すはずだ。
などと思考を巡らせていると
「あの、キオリ様」
頭上からそう言って声を掛けられたので顔を上げればグラマーな魔族がいた。その……胸が大きすぎて顔が見えなかった。俺は立ち上がってからその人物を見ると、その人物は俺をアイドル的な目で見てくる信者の1人であった。通りかかった時に手を振ったら顔を赤く染める子だったので印象には残っていた。その時は胸に目が行くほど忙しかったからな…………。
「どうしたんだ?」
俺がそう言えば彼女は、うつむきながら両手人差し指で、ツンツンと遊びながら
「その、キオリ様が外族の信者を探していると訊きまして…………それで、その1人を知っています。ですけど、ここでは難しいので…………わたしの部屋に今から来てくれませんか?」
その彼女の瞳からは嘘が感じられなかったので、俺は頷いた。
その目には嘘はないというのは確かにそうだった。だが、一つ言わせてほしい。
「信者全員が外族の信者ってマジかよ…………」
俺を信者と崇める魔族全員が外族の信者であったのだ。俺は思わず苦笑いをする。
「すみません。キオリ様。外では口外するのは禁止行為となっていまして」
グラマーな彼女はそう言ってお辞儀をした。
「あ、いやいいんだ。全員入れるぐらいこの部屋は広いのか?」
そう言えば彼女は首を横に振った。
「いえ、私たちが小さくなっているんです。この部屋に入ってから一歩前へ進めば小さくなるのです」
グラマーな彼女の固有能力は縮小である。物体を小さくすることが出来る固有能力だ。ちなみにだが、固有能力は5歳ごろになってから魔族側が好きな能力を選ぶことが可能だそうだ。ただし変更不可。
「キオリ様。キオリ様も遂に、外族の美しさに見惚れてしまいましたのね! いいわ! いいわ! 素晴らしいわ! 外族の何について知りたいの!?」
俺の信者の中でも圧倒的に入れ込むタイプであるシャプシュは、瞳をキラキラと輝かせながら俺に近づきながら興奮冷めやらぬ状況でそう言った。
「外族に関する資料を読み漁ったんだが、その中で明確な種類については明記されていなかったんだが、それについて知っている奴はいるか?」
高級そうな椅子に座るようにシャプシュによって促された俺は、それに座ってから尋ねれば男性は挙手をしてから
「それでしたら。僕が発言します。キオリ様」
彼はそう言ってお辞儀をした。
「外族には上下関係がはっきりしております。その中でもニャルラトホテプ様、ヨグ=ソトース様は上の上位幹部のようなものでとてつもない力を有しています。記憶改変や時間を操ることはお二方にとっては容易いことなのです」
「それが固有能力だったりするのか?」
俺の言葉に彼は首を横に振った。
「いいえ、固有能力というより生まれ持った力そのものです。キオリ様のいる世界で言うと超能力がそれに分類します。固有能力は第六感とほぼ同一なのです」
マジかよ…………と俺は思った。固有能力は超能力に近い何かだと思っていたが、それがただの第六感とほぼ同一と語られた。逆に外族が持つ能力は生まれ持った力そのものでそれが超能力だというのなら、それには納得が出来る。
俺は納得しながら、紙とペンを借りてそれに書き記していく。
「外族は基本的、あまり外に出ません。というのも、僕たちがこの場にいるように外族は信者以外からは全体的に驚異的な畏怖であるからです。僕たちはその畏怖そのものが素晴らしいと思っているのですが」
彼はそう言って悲しそうな表情で項垂れた。
「天族にも外族の信者がいると書物に書いてあったが…………」
と言えば、シャプシュ達は驚愕した。
「どういう書物なんですか!? キオリ様」
と言われて一旦俺の自室に戻った後、再びグラマーな魔族の部屋に戻りそれを渡せば、シャプシュ達は興味津々のように外族に関する書物を読み始めた。
これは時間が掛かるぞ…………と俺は苦笑いを零した。
シャプシュ達が読み終えたのはそれから30分経ってからだった。
「キオリ様。希少な本を貸していただきありがとうございます」
「あ、いや。それで何か分かったのか?」
俺がそう言えば、子供の魔族は
「ぼくが思うに、天族もぼくたちのように隠している可能性はあるよ……あります」
母親に軽く小突かれたのか、その子はそう言った。
「ですが、キオリ様。ティル・ナ・ノーグは特に外族に関する刺激は非常に敏感です。内密な会話として許されますが、それ以外では罰則も考えられるかと」
その子供の母親は、申し訳なさそうにそう言った。
「それもありますが、魔族との交流も調査する以外で行くことはないですから…………。あ! でも、キオリ様なら気軽に行けるのではないでしょうか?」
グラマーな彼女は明暗だと言わんばかりに嬉しそうな顔をしてから、
「ティル・ナ・ノーグでもキオリ様の信者はいらっしゃいます。その方々に手紙を送られてはどうでしょうか? 手紙なら罰則には引っ掛かりませんし」
とドヤ顔でそう言った。
「なるほど。寝る前に試してはみるが、俺は天族にも俺の信者がいるってことに驚きを隠せないんだが…………」
俺は目を見開いてから少し呆れるようにそう言えばシャプシュは
「それなら、わたしが、ティル・ナ・ノーグのキオリ様の信者に手紙を出すように言っておきますわ。ちょうど明後日ぐらいに信仰会があるので…………待ってください。信仰会にキオリ様が参加すればいいのですよ!!」
「!? 信仰会!?」
シャプシュの大きな声に驚愕しながらも俺は尋ねれば
「キオリ様がいかにして素晴らしい方なのかを言い合う会です。これまでに30回ほど開きましたけど、キオリ様のご参加を募っていなかったのが今更ながら気づいてしまいました! ああぁ、キオリ様の信者にして設立した責任者であるのにも関わらず、この発想が無かったとは、残念で仕方がありません!」
シャプシュは、激しく後悔するようにな演技でハンカチを取り出し涙ぐむ。
というか、お前が俺の宗教を設立したのかよ…………。
【キオリ教】
救世主キオリを崇める宗教的存在。設立者はシャプシュ。魔王城に住む約半数がキオリ教の信者である
【外族教】
畏怖の対象である外族を崇める宗教的存在。創立者はシャプシュ。偶然にもキオリ教にいる全員が信者であった。
ちなみに、外部には畏怖対象であるため知られないように過ごしている。
【信仰会】
キオリ教を普及するためにはじめられた講演会のようなもので、これにより信者を増やした。キオリはその存在を知らなかった。