第1彼女候補
「な、なん、いや、今なんて…」
「ん?だからあきくんの彼女第1候補を紹介してあげるって言ってるのよ。」
何を言っているんだこの人!?今日何回目ともわからながまた脳がショートした。
俺の彼女?昨日作り始めようとしたばっかりだぞ?
「明!そんな人がいるんだったら何故それを言わなかった!裏切り者め!」
「いや待て!俺は知らない!ほんとだ!頼むからその拳を俺にむけるな!」
「ちょっと!2人とも落ち着いてよ!落ち着いて杏先輩の話を聞こうよ!」
橘さんが雲雀の拳を押さえてこの場を鎮めるように言う。
やべぇ。橘さんがいなかったら1発重たいのが俺のみぞおちに飛び込んでくるところだった…サンキュー橘さん。
「ふふふ、面白いわ〜やっぱり。ここに来て正解だったわ。んふふ」
真鳥先輩は心底楽しそうに言った。いや、あなたのせいで俺のみぞおちが悲しみの縁に行くところだったんだぞ。ふざけんな。
しかし待て。ほんとにどういうことだ?もう直接聞くしかないのか、この人に対しては。何言ってるかもう分からんよ。理解不能。
「あの、もう単刀直入に聞きますけど真鳥先輩。誰ですかその彼女候補って。それともまたからかってるってことですか?」
もうそのまま聞いた。
「いやいや、流石にからかってないよ?実際にいるよ、彼女候補。んでね、その人の名前は〜さっきも話に出てた図書委員のりんなちゃん。2年先の綿橋 凜菜。確かクラスはAだったけかな?」
綿橋 凜菜。A組。俺のクラスだ、確かにいる。図書委員だった気もする。しかしあんまり印象がない…
「綿橋ちゃんが!?ウッソだろお前!あの砂漠に咲いている一輪の花と言われ、密かに男子に人気がある綿橋ちゃんが明のことを!?」
「うそ…あの、ふわふわしてて可愛い綿橋ちゃんが?明くんを?失礼ですけど間違えじゃないんですか?」
男子にそんな神秘的な表現されてんのか、綿橋さん。そして橘さんが恐る恐る聞いている。
「うん。間違えじゃないよ。だって、さっき帰ってる所見たって言ったでしょ?その時にりんなちゃんもいたんだけど私が話しかけるまであきくんのことガッツリ恋する乙女の目して見てたもん。間違えない!」
そ、そうだったのか…全然気づかなかった。
「そ、そうだったのか…全然気づかなかった」
あ、声にでてた。しかしそれ本人に聞いたのか?ここを聞かなくては流石に信用出来ない、綿橋さんのためにも。
「それ、直接本人に聞きましたか?そ、その俺が好きだってこと…」
自分で言うのが恥ずかしくなってだんだん声が小さくなって行ってしまった。だ、だって恥ずかしいじゃん…自分で言うの。
「そりゃもちろん!昨日の帰り道で…」
『あのさ〜りんなちゃん』
『はい?なんですか先輩』
『今好きな人っている?』
『へっ?え、や、あ、えっ、なん、へぇあ!?!?』
((わっかりやすいな〜この子。可愛い))
『いや、だからさぁ、んふっ、今好きな人いるって聞いたんだけど?ニマニマ』
『いっ!いませっ…!』
『ん〜?』
『いや、だからっ!い、いま…い、います…』
『やっぱりね〜ふふふ。それで〜?どっちかなぁ?黒か』
『いやぁぁぁあぁぁあ!?!?!?!?!』
「ってな感じで、黒髪のさっぱりした方?って言おうとした瞬間逃げられちゃったのよ。その後、茶髪おちゃらけた方とも聞こうと思ったんだけどー、黒髪って言った時逃げちゃったから多分 あきくんだよ!私の勘も言ってるし!」
そ、そうなのか?俺は二人の方を見てみる。
「マジか…綿橋さん、明のこと…」
と、萎んでる雲雀。
「綿橋ちゃんが、そうだったのね…杏先輩の勘も反応してる…間違いないのか…」
え?何?やっぱそんな真鳥先輩の勘って凄いの?さっき彼女作り(以下略)ことほぼ当てられたけど、そんなヤバいの?百発百中なの?すごすぎんだろ。
「と、まぁこんな感じだけどいかがかな?あきくんに対してはだけど」
「はぁぁぁぁ…まぁ、良かったな明。活動開始1週間足らずで彼女作れるかもな…」
え、ため息なっが。雲雀なんで…もしかしてこいつ綿橋さんのこと気になってたのか?
「私、何もしてないのに終わっちゃうかもしれないわね」
「い、いや手伝ってもらうて約束したんだから一応は何かはしてくれ橘さん」
なんかもう終わりを見すえてるのか橘さんが言ってる。でもでも待ってくれ!話がとんとん行きすぎじゃないか?怖いぞ!?
だってラブコメじゃあるまいし!
「そっか、うんとまぁ、どうする?明くん。彼女が作れるなら作った方がいいよね」
あっでもそうだ、彼女作れるかもしれないのか…それならラブコメもなんでもドンと来いだ!
「あ、あぁ。まぁ彼女欲しいし…」
そんなことを言ってたら雲雀がなぜかカバンを持っている。なにしてんだ?
「おい雲雀。なにしてんの?」
「い、いやぁ。ちょ、ちょっと用事思い出したからちょっと帰るわ…」
「え?あ、そう。分かったわ。気をつけて帰れよ?」
「あ、あぁ…」
そう言ってとぼとぼと雲雀は帰って行った。
大丈夫かあいつ。
そこに女子二人から「あちゃ〜」「あらら」
と、声が聞こえた。え、なにそれ。
「あれは完璧に綿橋さんのこと狙ってたな〜雲雀くん」
「そう見たいね。悪いことしちゃったわね」
あ、そうだったのか。あ、なんかうーん…
「まぁ、凪くんは後で慰めておくとして、あきくん、どうする?」
「えっ、あぁ。あっでも俺、まともに話したことありませんよ?綿橋さんと」
「あら、そう?じゃあ話すところからかしら?」
「そうですね。綿橋ちゃんと話さないと明くんもなんとも思えないだろうし…」
それはそうだ。いくら可愛いかったとしても流石にいくら彼女が欲しいとはいえ、話したこともない人と付き合うのはごめんだ。
「あぁ、流石に話したことないとな…だけどそうなると話す機会がな、話したこともないのに予定を決めるは…ハードルが高すぎるわ」
「あー、それなら私にませてもらえるかな?あきくん、胡桃。確か、りんなちゃんの図書当番が火曜日と金曜日だったから…明後日だね。明後日までに話せるよう私が話を通しておくよ。」
「私に任せておきなさいな」と言わんばかりに提案してくる。
「うーん、私もクラス違うし、そこまで仲がいいわけでもないから。んー!でも…」
少し悔しそうに橘さんが言う。手伝ってくれるのはありがたいが、無理して手伝って欲しい訳では無い。ここは真鳥先輩に任せるべきだと思う。
「まぁまぁ胡桃、ここは先輩である私に任せんさいな!」
「そうですね、分かりました。お願いします杏先輩。」
「うむ。くるしゅうない、ってやばっ!今日、塾の日じゃん!塾に遅れる、マジで遅れる!忘れてた!」
あわわわと慌てふためいてる真鳥先輩。そんな日に来ないでくださいよ。
「とりあえず木曜日の放課後までに話通しておくから!木曜日の放課後も集まるのよね?だったらその時に打ち合わせしよ!やばっ、マジで遅れる!!じゃ、二人ともまた明日ねぇぇ…」
「あ、はい気をつけて、杏先輩」
嵐のように去って行く真鳥先輩に少し慣れたように橘さんは手を振った。
あ、いっつもこんな感じなのね。
「ふう。杏先輩帰っちゃったし、雲雀くんもいないしどうする?」
どうしよう、もうすることもなさそうだしな。
「俺達も帰るか。」
「そうしますか。よっと」
カバンを拾い上げながら橘さんは答えた。
校門まで行き、
「じゃ、また明日ね」
「あぁ、また明日」
と分かれるように帰った。
なんか今日は昨日よりすごい日だったわ。