俺の名は
<1>
赤信号渡るべからず。
働かざる者食うべからず。
空気読み人知らず。
人のものは盗っちゃ駄目。人の嫌がることは自ら進んで行え。
世の中にはルールがある。法があって掟があって暗黙の了解がある。人が人として生きていくうえで大事なものだ。それらは時に人を押さえつけ、縛りつけ、檻に閉じ込めてしまうが、破ってしまえば人でいられなくなる。人ではなく獣になる。獣だ。お前はケモノになれ。獣になるのだ。だから、ルールは大事だ。人が人であるために必要なものなのだ。
「うわあああああ死んでやるうううううっううう!」
「おっ、落ち着いて! 落ち着いてください!」
「落ち着けるか!」
「とにかくほら、そこから降りてきなって。そんなとこから飛び降りたって死ねるわけないし、痛い思いするだけだと思うよ」
「あんた何冷静に言ってんの!? 元はと言えばあんたのせいじゃない!」
「え? 俺?」
「……分かってないんならもう黙ってた方がいいと思う」
「死ぬもん! 絶対死ぬもん!」
「まあ、確かに、痛い思いはもうしてるよな。だってさ、まさか大学ではあんな風にしてるのに、実は」
「うわあああああああああんん!」
「だからそれを言うのをやめろって言ってんの!」
「顔はやめて!?」
ルールは大事だ。
そう、たとえば、芳流閣ではお静かに。
<2>
俺を轢いた車が去っていく。遠く。小さくなる。街灯に照らされた赤いやつ。名前は知らないがテレビで見たことあるな。何だか高そうな車だから傷がついてないといいんだけど。後でさっきの人に見つかって怒られたりお金を請求されると困る。
立ち上がり、服についた埃を手で払う。頭が痛い。そういや結構強めに打ちつけたっけ。あ。血が出てる。どうしよう。病院に行った方がいいんだろうか。でもなあ、よく分かんねえしなあ。つーかバイトに遅れるとまずい。もう何度も遅刻してるし、次やったらクビにするねとも言われている。
俺は急いだ。通りすがりの人に妙な目で見られながらも走った。さながら、セリヌンティウスのために走るメロスのようにロンリーなウェイを。しかしセリヌン、よくもまあ諾々と従ったよな。俺だったら嫌だよ。なんで俺が代わりに処刑されなきゃならないんだよ。最後、裸で抱き合うし。友情を確かめるためとか言ってたけどキン肉マンじゃあるまいし友情で命を投げ出せるか? いや、友情じゃなくて愛情なら……もしかして二人は……。
そこまで考えたところで頭がふらついてきた。血が足りないらしい。意識が朦朧としてきて視界も不明瞭に(真っ赤な血で)なってきた頃、俺は無事、アルバイト先に辿り着いた。
「すみませんっ、俺、遅れてないですか!?」
「ええ……? 君ねえ、店に着くなりいきなりそういうことを……」
店長が訝しげに俺を見ているのが感覚で分かった。そしておヒゲが素敵なナイスミドルの店長が風体に似つかわしくない『きええええ』という素っ頓狂な悲鳴を上げた。
「血が出てるよ君ィ!? それもとてつもない量がね!」
「はい!」
「元気いいね! でもダメだ! 今日はもう帰って休んでいいから!」
そんな!?
それは困る! 家を出て一人暮らしを継続していくにはお金が必要だ。死に物狂いでアルバイトを探したが、雇ってくれたのは何故かここの店だけだった。俺にはここしかない。
「遅刻は謝りますから!」
俺は土下座した。プライドなどなかった。情けないと笑うかい(シニカルに)?
「ああっ!? 何やってんの、そんなことしたらますます悪くなっちゃうじゃないか!」
悪くなる……心証が?
しまった。土下座イズ謝罪の王様だと思っていたけど店長は俺の、俺の、そんな浅はかな意図を見破っていたのか。それでも俺にはこれしか思いつかない。
「クビはっクビだけは勘弁してください!」
「クビというか頭、頭大丈夫?」
「はい!」
俺は店の床に頭を叩きつけた。
「ですからクビだけは!」
「これはもう新手の脅迫だよ! 分かったよ! クビにしないから! だからお願い今日はもう病院に行って! 頭診てもらって!」
<3>
店長はいい人だ。遅刻を不問にするだけじゃなく病院まで紹介してくれるなんて。
しかし俺は財布や携帯電話を家に忘れていたことに気づいた。タダより高いものはない。いくら俺が血だらけの血塗れだとしても素寒貧で尋ねてしまえばお医者様が困ってしまうだろう。俺はバイト先からダッシュで家に戻ることにした。
一歩足を踏み出す度に体が軽くなる感覚。強く地面を踏みしめているはずなのに足裏から伝わるはずの感触がない。まるで空の中にいるような気分だった。視線を左右に配れば白い玉のようなものが浮かんでいる。それが俺を両側から押し潰そうとしていた。美少女に挟まれるならともかく得体のしれないプラズマっぽいやつにサンドイッチされても嬉しくもなんともない。俺を挟みたいなら連れてこい。双子の美少女を。でも双子はね、背丈も服装も髪型も同じにして欲しい。双子ってのは見分けがつくようになると駄目なんだ。いや確かにサイドポニーにした真美は可愛かったよ? 正直オゲェって吐きそうなくらい可愛くて実際俺、死んだからね。確かにね、可愛いんだけど、亜美と引き離される形で劣等感を抱くようになってるんじゃないのって設定は美味しいしやっぱりお姉ちゃんだから大人びた雰囲気出た! 出たよーこれってのもよかったけどやっぱり真美は可愛い(断言)。
何だかかっと燃えるように熱くなってきた。俺をここまで昂らせるとはやるな真美。すげえかっかしてきたぜ。アドレナリン出まくってるしドーパミンどぱどぱだしリンパはここによく集まってるんですよだしあくまで施術の一環だからだし俺の住んでいたアパートがめっちゃ燃えてた。そら熱いわけだ。
「いやああああぁあああ!? まだうちのワンちゃんがいるのおおおおお!」
「危ないっ、駄目だからっ、危ないから下がって!」
「すんません、へへ、俺の寝たばこが原因で」
「てめえ何笑ってんだオイ!」
「ぶっ殺すぞ!」
俺は、炎上するアパートに向かって歩いていた。
あそこには、今の俺を構成する何もかもがある。金も、電話も、アニメも、漫画も、ゲームも、フィギュアも、ラノベも、あと、えーと……、
「君も何やってるんだ! 戻りなさい!」
「うっ」
何者かに横合いから組みつかれた。俺は咄嗟に里見流護身術肆の型『不知火』を発動させる。ちなみに壱の型『霰』、弐の型『霞』、参の型『陽炎』は開発中である。
「オラアっ!」
肆の型『不知火』ことザ・力ずくで何者かを引き剥がし、俺は燃え盛るアパートの中に飛び込んだ。古めかしい木造のそれはアホほどよく燃えている。右も左も分からんくらい燃えている。煙と共に何か、ちょっと美味そうな匂いが漂っている。誰かが焼き肉の準備をしていたのかもしれない。
まだ燃え残っている柵やら塀を足場にして自分の部屋の前に辿り着く。何故かドアは開け放たれていた。不幸中の幸いか、ここは火元から多少離れていたのだろう。部屋の中はある程度無事だった。少なくとも今は。俺は部屋の中を見回し、急いで必要なものを回収する。まずはプレミアもののグッズだ。それを持てるだけ持つ。足元に電話と財布が転がっていた。それに手を伸ばそうとしたところで昨日買ったばかりで読みかけだった漫画の存在に気がつく。読みかけはいかん。続きが気になる。俺はあぐらをかいて漫画のページを開いた。確か、ああ、そうそう、黒い剣士めっちゃ頑張ってヒロインの記憶を取り戻すのかな、取り戻せないのかなってくだりだったっけ。ああ、いつになったら続きが読めるのかなあ。俺は漫画を拾い上げた。
めきめきという音が聞こえてくる。物音が気になって上を見ると、天井が落下してくるのが見えた。
<4>
俺は家を失った。大切なものをいくつも失った。アルバイト先にも当分は来なくていいと言われたし、必修科目の単位を落としたから留年は確定的。そして何よりも俺はひと夏という甘く爽やかなレモン水みたいな貴重な時間を失ってしまった。
病院の窓から見る景色はすっかり秋模様。ここから見える木の葉が全部落ちた時、私の命もなくなってしまうの。
「もういいから」
「え」
「いや、退院して大丈夫だから。というかいつまでいるんだね。ベッドの数が足りてないって言うのに」
ある日、普通に出て行けと宣告された。えー。ごはんの味が薄いことにさえ目を瞑れば入院生活って結構快適だったんだけどな。
俺は涙目でお医者様を見上げた。
「それは困ります。俺、家も何もかもなくなっちゃって。ここを追い出されるとすげえ困るんです」
「ふむ」と医者は俺の手を握る。おっさんに触れられて鳥肌が立ちそうになった。
「まだ君には命が残っている。いくらでもやり直せるさ」
「命が……?」
そう言われればそうだ。車に轢かれたくらいなんだ。アパートが燃えたくらいなんだ。グッズが溶鉱炉に消えていくシュワちゃんよろしく火の海に消えたくらいなんだ。俺はまだやり直せるよカヲルくん。
「連弾のシーンってセックスの隠喩だったってことですかね!」
「そうだねはい、じゃあね気をつけて出てってね」
「はい! 頑張ります!」
「……打ち所悪かったのかなやっぱり」
こうして俺は退院した。
しかし行く当てなどどこにもないことに一秒で気づいてがっくりと膝をついた。
<5>
オッスオッス。俺は里見八総。新生活に思いを馳せていた大学一回生だよ。遠慮なく親しみを込めて『やっくん』って呼んでくれよな。ただしかわいい子に限る。それ以外は殺す。
俺が生まれ育ったのはド田舎オブド田舎だ。何せ離島である。一応日本国に属しているはずだがほとんど外界から隔絶された、クッソ物寂しい場所だった。家が厳しかったのもあるし、環境が現代社会に適応していなかったのもあるが、俺の周りにはアニメや漫画、ゲームと言ったなんて素敵なジャパネスク的なものはなかった。
ともちゃんだけが俺の心の支えだった。ともちゃんは、みんなには内緒ねとこっそり漫画を読ませてくれたり、秘密基地でゲームをやらせてくれたり、一緒にプラモデルを組んだり、素晴らしい経験を俺に与えてくれた。ともちゃんは俺にとって、あのー、アレ。なんつーか、そう、ミーミルの泉のような存在だった。そらオーディンも片目を代価に払うわ。しかしそれは禁断の果実でもあった。ともちゃんはある日、島を出て行ったのだ。すると俺はどうすることもできない。アニメも、漫画も、手に入らなくなった。知らなければよかったんだ。最初から知らなければこの世にないのと同じだ。アダムとイヴが全裸でえへえへ暮らしてたら楽園を追い出されなくて済んだのにね。一度口にした甘い果実。それをもう二度と食べられない。ともちゃんは俺に禁断症状をもたらした。
どうしようもなくなって、欲しい欲しいと駄々をこねたことがある。したらお手伝いの梓さんに無茶苦茶キレられて口の中に……思い出したくない。
とにかく、俺は島での暮らしに嫌気がさした。絶対にここを抜け出てやるとデスゲームものの主人公みたいな気分で勉強して大学に合格し、家族を説き伏せて島を出たのが今年の春。新生活は死ぬほど楽しかったが、今はこの有様だ。何もかも失ったが親には頼れない。というか連絡手段とかないし、バレたら強制送還で座敷牢に閉じ込められる。俺が今どういう有り様かって? そうだな。強いて言えば駅前のベンチに座って半泣きになっているって感じかな?
「たすけて」
俺の漏らした声は風に乗り、遠く離れた場所にいる大金持ちのご令嬢の福耳まで届いてくれればいいナァー。
ぼけっと駅前を見回す。ここいらには大学のキャンパスが多い。俺の住んでいた場所とは違って開発も進んでいたんだろう。マンションが建ち並んでいる。見上げるのに苦労するくらい高い建物がたくさんあってすごいなあと思った(小学生並みの感想)。
最初、ここに降り立った時は得も言われぬ感動があった。船に乗って、電車に乗って、ここに来てさ、俺の新生活はここから始まるんだって。まあ住んでたのは小汚いアパートだけど。しかも燃えたけど。
「ん?」
ふと、妙な視線を感じた。道路を一本挟んだ向かいに建ち並ぶマンションの内の一棟。そのエントランスらしき場所に少女が立っていた。彼女は不思議な格好をしていた。淡い色合いの和服を着ている。髪の毛はここからでもよく見えるほど鮮やかな蜂蜜色だ。つけている花の髪飾りごと思わず舐めたくなる。ふわりとした髪が少女の片目を隠していた。俺が言うのもなんだが、少女は浮世離れしている。格好もこの辺りには似つかわしくないものだが、強く興味を惹かれたのは目だ。厭世的で、全てを醒めた風に見ている。そんな気がしてならなかった。
俺は少女に向けて小さく手を上げた。『よっ』て感じで。すると少女は瞬きを繰り返し、二度見どころか三度見くらいして、それからぽかんと大きく口を開けた。そのリアクションが小動物みたいで面白い。俺はベンチから立ち上がり、軽くフラメンコを踊った。
「オーレ!」
少女はぴょんぴょんと飛び跳ねて(あぁ^~)、こちらを手招きしたり、何か慌てた様子で口を開閉させている。んん? 騒音に掻き消されて何も聞こえん。しかし俺にはお手伝いの梓さんから伝授された読唇術がある。少女の口元を注視する。可愛い。
『わ・た・し・を・だ・き・し・め・て』
それもなるはやで抱き締めて? よかったらご飯もどうですか? 一晩どころかずっと私の部屋にいませんか? 好き好き大好き超愛してる。だとう?
えっ、ええー? 本土の人間こわー。見ず知らずの男をそんないとも容易く誘ってしまうの? 都会の人間はビッチなのがコモンスキルなの? しかし今の俺には有り難いことこのうえなし。偉い人は言っていた。据え膳食わねば高楊枝。ワイは武士や! ブシロードを突っ走るしかないで!
「とう!」
俺はベンチを飛び越え公園のフェンスを飛び越えゴミ箱を飛び越えたその先にある未来を手にするべく車道に躍り出た。トラックが突っ込んでくるがすいすいと回避し跳躍し向かい側の歩道にくるりと着地する。しかし先までここにいたはずの少女の姿がどこにも見えない誰もいない。
おかしい。俺の頭がおかしくなったのでなければ、さっきの子はこのマンションのエントランスにいたはず。しかし、今はいない。であれば俺の頭がおかしくなったはずなど天地がひっくり返ってもぶっちゃけありえないのでさっきの子はこのマンションの中に入っていったんだな。積極的! というわけで俺は誘いに応じる形で、
「……変な名前」
芳流閣なる名のマンションの中に足を踏み入れたのだった。
<6>
俺はマンションというやつに入るのは初めてだ。島にはこんなに高くて固くて立派な建物なんかなかった。
初体験。
初めてってすごいいい響き。
私……初めてなの、だともっといい響き。
そんなメロディラインを頭の中で奏でていると声が聞こえてきた。何だか楽しそうな話し声だ。俺はその声につられて、おしゃれなエントランスホールを通過する。しかし広いな、ここ。天井も高いし。謎のモニターやスクリーンがぶんぶん唸ってるし。日本にいるような気がしない。外国……その、アレ、ヨーロッパとかニューヨーク? みたいなところにいる気分になってくる。
「うわ」
短い廊下を進むと思わず声が出た。
またも広い。大学の食堂みたいに広い(貧弱なボキャブラリー)。しかし食堂にはないものばかりある。でけえテレビにソファに、なんだあれ? 卓球台? ビリヤード台? うわっ、お酒飲むところとご飯を作るところもある! 何ここ? お店?
そわそわわくわくしていると、そこにいた人たちが俺の存在に気がついた。L字型のソファで談笑していた男女が数人。彼らは最初、不審者を見るような目つきで俺をねめつけていたが、ふっと表情を柔らかいものに変化させた。
「あ、えーと、誰かの友達? ここで待っとけって?」
違います。待ち合わせもしてないし友達もいません。
俺は首を振る。
「つーか友達だとしても勝手に入ってこれないでしょ。オートロックなんだし」
「新しく来た人じゃないんですか? あの、いつからここに?」
「あ、俺は今さっき来たところです」
「え?」
「ん?」
俺は小首を傾げた。
皆さんはこそこそひそひそ話を始めた。俺はどうやら不審者ではないかと疑われているらしい。なるほど。どう考えても不審者だよな。今のうちに逃げよう。
「あっ、間違えた。失敗失敗。それじゃあどうも失礼しました」
くるりと背を向けると、後ろから『待たんかい』とでも言いたげなオーラが立ち上った。
「待たんかいコラ」
というか実際に言われた。
「なんですか。俺は善良な一市民。家が焼け落ちちゃったちょっとお茶目な男の子で……」
「善良な市民が不法侵入するか!」
そう言ってソファから立ち上がり、俺を指差したのは茶髪のお姉さんだった。つり上がった目。間違いなく気が強くてアナルが弱いタイプ。何となく。行き遅れたOL感があり、着馴れたジャージはもの悲しさのせいでポイント減だけど(八総ポイント。上がったら嬉しい。溜まったら何かいいものを贈りたい)普通に美人さんである。島にはいなかったタイプだ。
「お姉さん、元ヤンって感じですよね」
「殺すぞ」
ひい、やっぱり!
俺の住んでいた島にヤンキーはいなかった。ムキムキの漁師のおっちゃんはいたけど(何故かみんな映画の吹き替えみたいに声が渋い)、このお姉さんはなんかそれより恐ろしいものに見える。三十六計逃げるにしかずだ。
「とにかく誤解です」
俺は後ずさりした。その時、後ろで物音がした。そちらに目をやると、エントランスからこっちに向かってくる背の高い人の姿が見えた。その人は帽子を目深にかぶっていて、俺のことはまだ見えていないっぽいが、まずい。
「あっ! カケハシ! そいつ捕まえて! どうにかして!」
「……えっ? あの?」
カケハシ。
そう呼ばれた背の高い人は、どうやら女性のようだった。ボーイッシュな感じでベネ。
「殺してもいいから!」
よくねえよ!
元ヤンっぽいお姉さんが声を荒らげた。しかしまずった挟まれた。前門の虎肛門の狼。これではまるでサンドイッチだ。ところでこんな格言を知ってる? サンドイッチはね、パンよりも中のきゅうりが一番美味しいの。
「つまり俺が一番美味いってことだ!」
「こいつ、イカレよ! ヤバい病院から抜け出してきたんだわ!」
人をヤバいやつ扱いするな。いや、確かについさっきまで病院にはいたけどさ。
俺はカケハシという背の高い人の方目がけて走った。彼女は『あわわ』とかいう情けない軍師みたいな声を発して尻もちをついた。そして俺は反転する。
「ぎいいいやあああああ!?」
まるでゴキブリと遭遇した時のような悲鳴を上げると、元ヤンお姉さんは裏拳を放った。俺はそれを避けて広間に入り、テーブルを飛び越えてソファを乗り越えた。その際、そこに座っていた黒髪ロングの女の子が白目を剥きかけた。
「あァーっ!? やめてお願いだから犯さないで!」
人前で剥いちゃうような子はちょっと……俺にも選ぶ権利はあると思いたい基本的権利。俺が目指すのは窓だ。そこをかちゃりと開けて外に躍り出る。
「くそっ、逃がすか……! せつかちゃんを呼んで! それから、大屋さんと野郎どもも!」
「ハマーさんはどうしますか?」
「知らない」
うっ、何だかやばそうな人たちが出てきそうな予感がする。でも関係ねえ。このまま逃げてしまえばいい。
「ねえ」
空から声が降ってきて、俺は窓枠に足をかけた状態で上を見た。そこには、和服の少女がいた。彼女は上の部屋からこっちを見下ろして悪戯っぽい笑みを浮かべている。
「あっ、あーっ!」
俺は少女を指差す。彼女は平然としていた。
「ああ、やっぱりあたしが見えてるんだね」
「何を」
何を意味分からんことを! 俺は君のせいであらぬ疑いをかけられているんだ。これがアレか。美人局ってやつなのか。都会コワイ! やはりやばい!
「よくも騙しやがって!」
「騙す? 何を言ってるのか分からないけど、あんた追われてるんだろ」
「そうだよ」
「上に来なよ」
「どうやって?」
「さあね」
少女はふっと姿を消した。また隠れてしまったに違いない。くそっ小悪魔め。でもこういう風に可愛い子に振り回されるのも悪くないっていうか、憧れてたっていうか。少し迷ったが、俺は窓枠からジャンプする。指を引っかけられそうなところを探し、建物の外壁部を登っていく。このまま屋上まで行ってしまおうか。
「うわあ!? あいつ壁登ってやがる!」
「え? うわっホントだスパイダ○マンみたい!」
「アサクリじゃね?」
「いやもうトカゲか虫でしょあんなん」
虫呼ばわりされながら、俺は上へ上へと。窓から少女の姿を捜すがどこにもいない。そろそろ本当に夢か幻のような気がしてきた。もしかしたら俺の走馬灯だったのか? でも姿だけじゃない。声も聞こえたんだ。
「あいつ……もしかして八階が狙いじゃないの?」
「ありえますね、それ」
「やばくない?」
何? 八階? そこに何かあるのか?
へっへっへ、いいこと聞いたぜ。
<7>
マンションってのはすげえ建物で、たぶん、ここはその中でも特別変わり種なんだと思っていたが、目の前に広がる本の海を認めて、改めてそう感じた。ここが変なんだ。俺が変なんじゃない。
八階は、図書館になっていた。いや、マジで。至る所、所狭し、ずらりと棚があり、どの棚にも書物がぎっちりと収まっていた。空白を怖がっているのではないかと疑うくらいの量だ。
俺は適当な本を一冊手に取った。ドイツ語だ。なんか、『闇』と『魔女』? オカルトっぽいおどろおどろしいタイトルだな。それを棚に戻し、他の本も眺めてみる。多種多様というか、雑多だ。色んな国の、色んなジャンルの本が並んでいる。
本棚はその人の心を映す。本棚を見ればそいつがどんなやつかだいたい分かるって話を聞いたことがあるが、だったらここに並んでる本はなんだ? この本の持ち主ってのは……。
「欲張りなのね」
「え?」
俺のすぐ近くに、女の人が立っていた。音もなく、気配もなく、そこにいた。この人もマンションの住人なんだろうか。
黒い、鍔の広い帽子を被った人だ。こんなエレガントなもん女優くらいしか被らないだろ普通。……帽子にはレースがかかっていて顔こそよく見えないが、少なくとも顔の下半分の造作は整っている。女性は白長の手袋で覆われた指をくるくると弄んでいた。何だか人形みたいな人だ。
「本棚は人の心を映すと言うでしょう? あなた、そのことを考えていたんじゃない?」
おっしゃる通りだった。女性は続けた。
「色んなものが色んなところに隙間なくぴっちりと埋まっている。この本棚の主は欲張りよ、きっと」
女性は笑った。どこか自嘲気味に。
欲張りか。確かにそうかも。でも。
「本当に欲しいものがどこにあるか分かんないって感じですね」
「あら、そう? どうしてそう思うの?」
「だって本の並びというか、無茶苦茶ですから。掃除が下手なんですね」
俺がこんな並べ方してたら、お手伝いの梓さんに怒られてただろうな。確かあの時も『整理整頓できないのでしたら私めが管理して差し上げます。それもお嫌ですか? 片付けがお嫌いでしたら一つ一つをまとめてしまいましょう。全部丸めて一つにくっつけてしまいましょうか。ほら、坊ちゃまの好きなプラモデルもお人形さんも』って。やめてよう俺はそんなキメラ作りたくないんだようって泣いて謝ったら許してくれたっけ。あれ? 許してくれたっけ?
「あなた、皆に追われているのね」
「どうしてそれを」
「私、ここで起こることなら何でも知っているもの」
「勘違いと誤解が生んだ悲しいすれ違いなんです。実はあの、妙な子に誘われたものですから」
黒衣の女性は俺に向き直った。
「妙な?」
「和服を着た子です。つっても、俺とそこまで歳は変わらないと思いますけど。ここに来たのもその子が手招きしてたし、さっきだって上に来いって言ってて」
「その子と、本当に? 会って、話したの?」
うっ。やはりこの人も俺の頭を疑っていらっしゃる。とにかく本当だ。俺の口は真実しか述べない。
「……そう」と女性は黙り込む。何か考え始めたっぽい。恐らくだが、どこに連絡すべきか迷っているんだろう。警察か病院か、あるいは。
「見つけたっ」
は?
元気いっぱいというか、ねじの外れたアホっぽい声が響いた。振り返ると、俺が入ってきた窓枠を乗り越えて、何者かがこの八階フロアに降り立った。また女の子だった。
よく焼けた褐色の肌に、黒髪をポニテに結っている。動き易そうな服装で、少女はびしりと、どこか見覚えのある懐かしいポーズをとった。まるで特撮のヒーローのような。……というかそれやっぱ見覚えあったわ。
「V3じゃん」
「あっ、え、知ってるの?」
少女はくりくりとした目を輝かせた。
「いや、ていうか、そこ登ってきたの……?」
「ふふん、そうだよ」と少女はすごいでしょと言わんばかりに胸を張った。
「ドン引きすわ」
「自分だって同じことやっただろー!?」
いや、俺がやるのと女の子がやるのは違うだろ。
「ああもうごちゃごちゃうるさいな!」
「そんなごちゃごちゃ言ってないと思うけど」
「とにかく見つけたから。不審者。えっと……何だっけ。まあいっか。ぶちのめしちゃう」
まあいっかで人をぶちのめせるのかこの子は。山犬にでも育てられたの? とにかく恐ろしい。やらなきゃやられるのは間違いない。ただ、里見流闘争術は婦女子には使えん。梓さんにしばかれてしまう。
俺は降参した。そのつもりで両手を上げた。
「やる気だな!」
「えっ? あっ!? うっ……!」
一瞬で懐に潜り込まれてボディを強打された。なんで!? 俺はその場に崩れ落ちる。足音がどたどたと聞こえてきた。どうやら、さっきまで下にいた人たちが追いついてきたらしい。くそ、ここが年貢の納め時か。つーかおれって何してたんだっけ。
「べ、弁護士を呼べ……」
「完全に負けを認めた悪役の台詞ねそれ」
さっきの元ヤンお姉さんが俺の前で仁王立ちする。ジャージの下の脚、ちょっとむっちりしてますね。
「いや、義川さん、そっから法廷バトルに突入するパターンかも」
「弁護のしようがないでしょこんなやつ」
そこからはまあ酷かった。追撃を受けて蹲る俺の上で、俺の処遇を皆さん好き勝手にまあ喋るわ喋る。殺せだの吊るせだの晒せだの。ここは本当に現代の日本か? 俺はもしかして未開の部族んとこに迷い込んだんじゃないのか? だったらアマゾネスのところがいい。年に一度男さらってきて子作りするの。用済みの男は殺されるんだけど、でもそこは俺の真実の魅力とか愛とかでアマゾネス戦士たち改心してハーレム。でもドラゴンズクラ○ンみたいに腹筋割れまくりで田中敦子声ばっかの戦士だと胸やけしちゃうから隣村にはチャムチャムみたいな可愛い子置いといて欲しい。
「この人、笑ってません?」
「え? やだ、気持ち悪い……」
ひどい!
「じゃあ全会一致で炮烙の刑ということで」
「待てや!」
ここは殷か! 妲己ちゃんに殺されるならやむを得ないがここに彼女はいないしやっぱり死にたくなーい。アホか、どうしてそこまでされなきゃならんのだ。
「だったらタイボンの刑ということで」
「そっちのがヤだよ!」
「だったら……」
「刑を執行する以外でどうにかなりませんか!?」
殺気立ちすぎだろここの人たち。俺のことをやばいとかスパイディとか言ってたけどさ、お前らのが全然やべーじゃん。
場がまた荒れるかと思った矢先、黒衣の女性がすっと手を上げた。
「その子、そろそろ離してくれない? 私のお客様なんだけれど」
「え?」 という反応をしたのは俺だけじゃない。ほとんどみんながそうだった。
女性は肩をすくめた。さっきまで怒り爆発していた元ヤンお姉さんも借りてきた猫のように大人しくなる。オラァ、にゃんと鳴けば許してやるよォとは言えず、俺は事態の推移をさらわれ系ヒロインのように見守るしかできない。
「そ、そういうことなら」
「ええ。色々と手違いがあったようだけれど。私の顔を立てて、この場は収めてくれない? 今日はせっかくの日曜日なんだし。ね?」
「え、えへへへへ、そ、そうですよねええ。ほらほら皆さん、帰りましょう帰りましょう。あはははお騒がせしましたー」
手違いって便利な言葉。あと日曜日だとか関係なくない? そんなんどうでもいいくらい、この、黒っぽい女性に何らかの力があるのだろうか。アレかな。エロ催眠とかかな。
「ほらっ、早く行きますよ! 従わない人は家賃上げちゃいます! あと私のことは大屋さんだと紛らわしいので管理人さんと呼んでくださいって前からずっと言ってますよね!」
「サイテー」
「うるさいな大屋さんは」
「もー!」
一人、ちっこい女性が怒りながらぴゃーっと逃げるように去っていった。その後を何人かがぞろぞろとついていく。元ヤンや俺を殴った子は最後の最後まで俺を睨みつけていたようだが。
気づくと、このフロアにいるのはさっきと同じように俺と黒衣の女性だけとなった。どうやら助かったらしい。
「あの」
「ああ、いいのよ、別に」
女性はそう言った。
落ち着きを取り戻す俺。しかし、そうか。今日もいろんなことがあったな。都会って怖い。不審者に間違われるし、よくよく考えると……この女の人、やっぱ美人だよな。スタイルもいいし。
「あなた、お名前は?」
「里見八総と言います。ぴかぴかの大学一回生で、好きなものはあなたのような優しいお姉さんとリセマラしやすいアプリです」
「あら、いい名前。八はいい数字よ。末広がりで」
「俺もそう思います!」
「ところで」
命の恩人が本題に入った。
「あなたが会ったという子だけど」
「ああ、あの片目属性の」
「……本当に見えたのね」
「そりゃ、まあ見えましたけど」
「そう。じゃあ、あなたを買うわ」
「飼うって、俺をですか……?」
何が『じゃあ』なのかさっぱり分からない。今まで島を出るためにたくさん勉強してきたのに全く意味が分からなかった。そんな文法習ってないよ!
「あなた、住んでたところが火事でなくなったんでしょう?」
あれ? 俺、この人にそんなこと言ったっけ? 駄目だ。腹を殴られた時の衝撃で思い出せない。
「色々と困ってるみたいだし……このフロア、一部屋空いてるの」
「つ、つまり?」
「ここに住むっていうのはどうかしら?」
「でもお高いんでしょう……?」
「家賃も結構よ。先立つものがないなら当分は援助させてもらうわ」
援助!
なんだそのスケベな言葉は! えっ? スケベな言葉なの? 八総わかんない! わかんないよ!
「生活が苦しいんでしょう? ふふ、私が助けてあげる。その代わりに」
何を要求されるんだ? お、俺の純潔か。俺の体が目当てだったのか。やばいですよ大人の階段ホップステップジャンプやんけこんなの。いやあ堪忍して、俺、初めてはロマンチックにあげた……あれ? この人でよくね? 美人さんだし、むしろ願ったり叶ったりじゃね? その白くて長い手袋でオラのデレゲンベェルを包み込んでくれたらワクワクすっぞ!
「見つけて欲しいものがあるの」
「……それは、あの、比喩的な意味ですか」
「いいえ?」
あ、そですか。ちょっとがっかりしちゃった。苦節だいたい二〇年。やっと来たかこの時がと一同起立後に礼したのに。
しかし恩人さんの言うことには逆らえないしそのつもりもない。
「何を見つければいいんですか」
「それは、内緒」
「内緒って……見つけようがないですよ、それじゃあ」
「ええ、いいの。今は」
な、何だこの意味深な人は。あんまりもったいぶってると真実を語る前に殺されちゃいそうなんですけど。大丈夫? 最終回まで生きてる?
「それじゃあ、アレですか。俺は、特に何もしないで、あなたのお世話になるだけってことですか」
「ええ、そう。ご不満?」
「…………少し」
俺は可愛い子をぺろぺろするのは好きだが人に舐められるのは得意じゃない。というか会ったばかりの人にそこまでお世話になるつもりもない。俺にもプライドというものがある。あれ? あったっけ?
話がうま過ぎて恐ろしいってのもある。今までの一連の流れ。まるで何者かが俺をここに呼び寄せたかのような……かなり強引な流れだ。もう少しやり方があったんじゃないかと思う。
「借りたものは返します。だから、その、今だけはお言葉に甘えてもいいですか。へ、へへ、実はそのー、マジで家もないしお金もないし、実家にも頼れなくって……あっ、ところであなたのお名前は?」
「犬飼よ」
くぅーん。
ドンピシャな名前だった。俺は今日からあなたの犬です、しもべです。
<8>
俺がこのマンションに住むと分かった先住人たちは死ぬほど嫌がった。俺を殴ったポニテ褐色少女や元ヤンっぽいお姉さんは敵意を剥き出しにしていたし、他の人たちも歓迎ムードとは程遠いオーラを醸し出していた。しかし俺のご主人こと犬飼さんの鶴の一声で皆が黙った。ちょっと、あの、下っ端キャラの気分が分かったような気がした。虎の威を借るってのは気持ちがいいもんなんだな! 我ながらウンコだと思う。
『まあ、犬飼さんがそう言うなら』
『家なき子なのは可哀想です』
『お金がないのも』
『それにあの部屋だし?』
『あー。あの部屋か。だったらまあ、いいんじゃない?』
『どうせすぐにいなくなるよ』
『くわばらくわばら』
っておーい聞き捨てならねえ。あの部屋ってなんだよ! すっごいやばそうな感じじゃん! 赤いのか! 真っ赤なのか! そこに住んでたら頭おかしくなったりしない? ねえねえ大丈夫? って犬飼さんに聞いたら呆気なく無視された。もう興味なくされてる……。
というわけで宛がわれた例の部屋の前に到着する。妙な気配は特に感じない。もらった鍵も普通に回るし、ドアも普通に開くし。中をちらっと覗いたが、普通のワンルームだ。1BRってやつ。
狭くね?
いや、こう、エントランスとか、あのラウンジっぽい場所とか見てるとさ、部屋もすげえ広いんじゃねって期待しちゃってた節はある。そもそも実家より広い部屋なんかそうそうないだろうし。前に住んでたアパートと比べればかなりいい。燃えにくそうだし。
「いいじゃん」
呟き、新たなる俺城(今日が築城記念日だ)に入城する俺。手探りで明りをつけると、家具とかがほとんどない長方形の殺風景な部屋だった。……いや、いい。これからここを俺色に染め上げればいいんだ。ところでトイレとお風呂はどこですか。え? ないの。部屋についてないんだ。そっか。案外安っぽいんだね。
「しょっぺえ」
「勘違いしちゃいけないよ」
唯一この部屋に備えつけられていたであろうベッドから声が聞こえた。もらった鍵は合ってたし、部屋はここで合ってるはずだ。つまりここは俺の部屋でお前は誰だ! 俺の中の声なのか!
「なにやつ」
「時代劇みたいだね」
ひひっ。
そうやって笑い、ベッドから降りたのはあの和服の少女だった。どこに行ったのかと思えばこの、この……(悪口が出てこない)。こうして近くで見ると、悔しいがやはり可愛い。背は低いが立ち居振る舞いは子供っぽくない。和服の裾から覗く生足は小生意気にも大人だった。すべすべしてそうで光が照っている。俺が彼女に振り回されるのもやむなし。何よりホッとした。少女が現実にいるという事実に。
「大変だったみたいだね」
俺はその場に座り込む。疲れがハチャメチャ押し寄せてきて一瞬で瞼が重くなった。
「でも、ここに住めるようになったし、どうにかなりそうだから」
「ここは普通のマンションとは違うからね」
「ああ、まあ、そうみたい」
「あたしが説明してあげてもいいんだけど、今はそれどころじゃなさそうだ」
少女は『ん』と手を出した。俺はその手を反射的に握る。起き上がらされて、ベッドに誘導されて寝転がらされた。やっぱ積極的だなこの子。
「あ、あの、いきなりそういうのって、俺、初めては」
「明日になったらここを案内したげるから、ほら、お休み」
「あっ、はい」
弄ばれた感がある。
でも心地いい。ベッドはちょっと固いけど、さっきまでこの子がいたから温い。俺は少女が尻を乗せていた辺りに顔を埋めた。そうしていると、俺の頭に柔らかい何かが触れた。ふっと顔を上げると、少女が慈母の如き笑みを浮かべていた。
「気にしないでいいよ」
眠気が。
「明日からもっと大変なことになるかもしれないからね。何せ、飛びきりやばいのに呪われているんだから」
「ん?」
「さ、お休み。今はもう何もかも忘れなよ」
今、呪いとか言わなかったこの子? でも確認するのもめんどいくらいに眠い。
「それじゃあまた明日ね、旦那さま」
少女は笑っていた。慈母ではなく、小悪魔のように。